一概とか概略などの概とは枡で計量するときの
この凹凸をならす棒のことだそうです。

aax 021


イランに初めて行ったのはタンカーに
乗船した最初の航海でした。
原油というのはそれ自体は発火の危険性は少ないそうですが
そこから揮発するガスが非常に危険なので沖のカーグ島と
いう小島の桟橋に横付けします。

そこから下船して桟橋を通って本土に上陸するわけですが
上陸といったってたいした娯楽施設があるわけでもありません。
それでも入港したら大地を踏む為に上陸はします。

小さな売店で買い物を済ませたらもうすることがない。
そんなところでした。

あるとき何かの用で出かけた時、
ゲートを通過して構内を出ようとしたらちょうど昼時
だったので守衛さんが昼食を摂っている所でした。

見ると

ーー日本人は海外に行っても日本料理店に好んで行く
傾向が強いのですが私は根っからの料理好きですから
現地食が気になって仕方が無いという悪癖があります。
そのせいで何度手酷い目にあったことか!  

ーほとんどの船員は上陸するのに気が急くから誰も見向きも
しません
ーもっとも人様の食事を覗くという無作法な事をしない
というたしなみゆえでしょうが

それでも
見てしまったのは、
そう、目を奪われてしまったのです。
それがあまりに質素な昼食だったからです。

ナンのような大き目のパンとおかずは紫タマネギのみ。
その生タマネギをカットしながらパンをむしっては
交互に口に運ぶのです。

はい
お行儀の悪いのは百も承知です

見ていると視線に気づいた守衛さんが振り返りました。
30代くらいでしょうか、
中東の方々は皆ヒゲを蓄えているから見た目は老けて
みえますがややお若い印象を受けました。

そこでそのタマネギを指差して
「それは辛くないのか?」と尋ねました。
もちろん日本語です。(キッパリ)

すると彼は快く一欠けらを差し出すのです。
「食べてみろ」と言います。(勝手に意訳)

その少ない貴重なおかずを掠め取るのに多少は罪悪感を
感じつつも好奇心には勝てず
「ショコラン」
(”ありがとう”の意。これだけは知ってる)
と言って
かじりました。

辛いんですよ。
普通のタマネギと変わりません。

この記憶は長く残り折りに触れ思い出しました。
イランにとっては原油輸出は外貨獲得の国策であり
その施設で働く人は公務員のような存在であろうに
食事はあんなに質素なものだった事は少なからず衝撃でした。

中東には様々なパンがあり
シリアでは
野菜やスパイスを混ぜて焼き上げたホブスバサーリ

レバノンやヨルダンでは
具やゴマなどを包んだり貼り付けたりした
アライスやカーク、マナキッシュなど多彩です

イランにもナンのようにのしてから小さな穴を開けた
ラヴァッシュというものがあり
それぞれに美味しそうなのですが
私の見たものは本当に質素なものだったのです。

当時はパーレビ王朝で王様の一族は金を湯水のように
使っていても庶民や公務員はさほどでもないのだなと
お国の台所事情までのぞいたようなそんな気分だったから
でしょうね。
ほろ苦い記憶でした。

それから間もなくイラン革命が起こります。

先だってのアラブの春のような事が昔から頻発してるんですね。

イラン革命のニュースを聞いて
真っ先に思ったのが
『あぁこれで皆も少しは豊かになれるんだろうか』
ということでした。

それから長い時間が流れ
つい先日の事です。

TVを見ていたら
日本で活躍する外国人タレント特集というのを放映していて
筋肉隆々のイラン人タレントがあの紫タマネギを持ち
「イラン人はこれが大好きなんです」と嬉々として
語っているんです。

これは普通のタマネギと違って甘いんですよと力説
するんです。

司会の日本人タレントがどれどれと、かじってみます。
「辛いよ~」  
顔をしかめるんですな  これが  
やっぱり辛いんですよ。

でも、
質素な食事だからと思っていたのに
実は大好きだからそれだけで事足りていたんだと
判ってからはあの時の守衛さんの食事は
決して貧しいものではなかったんだと理解ができ

ほろ苦さなど余計な御世話だったと妙な反省をしました。

日本人だって白いおにぎりに梅干
おかずは沢庵一切れが最高!
だって言う人もいるわけですから。

貧しさとか豊かさなんて一概に並べて論じたり
軽々しく口にするべきではないのだなと
今更ながら痛感しました。

それでも
イランの現状はイスラム体制下で進行している
核開発の為、欧米による経済制裁が続き
医薬品や食糧不足が深刻さを増していると聞きます。

いったい何が幸せなのだろうかと疑問は尽きず
先日のアルジェ事件のことなどを想うにつけ
宗教国家との付き合いの難しさを考えざるをえません。

様々な”答えの無い難問”をえいやっと
均してくれる魔法の概がどこかに無いものでしょうか?


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