2012.08.01
「駒形どぜう」と聞けば『あぁあの有名な』と
聞き覚えのある方は多いでしょう。
この「どぜう」という表記を旧かな使いと勘違い
されている方が多いそうです。

旧かな使いならば
「どじやう」とか「どぢやふ」などとなるそうですが
「どぜう」の方は意図的に変えたという話です。

当たり前に書いたんでは訴求力に足りないから
とか
当時は暖簾が3枚だったから3文字にしたかった
とか
いや和の世界では奇数表記がゲンがいいから
などと諸説ありますが、これは当たりました。
その証拠に聞いた事があると言う人はどんな片田舎にでも
沢山いるからです。

このように料理店の世界ではネーミングはとても重要です。
太宰治は小説の書き出しに頭を絞ったと言われますが
映画や文学に勝るとも劣らないセンスが問われる所以ですね。

「どじょう」 と 「どぜう」

こう並べただけでも
『えぇ~そんなの食べなくたって』
となるか
『お!小粋なものを食べさせてくれそうな予感?』
となるか誰でも判ります。

いえ、
もちろん永く繁盛しているのにはネーミングの妙だけ
ではない理由がきちんとあります。
高度な技術と丁寧なお仕事です。

普通はどじょう鍋といっても丸のままのどじょうと牛蒡を
煮ますが、駒形どぜうさんでは大ぶりのものを開いて鍋に
入れてきます。

どじょうの蒲焼といえばアチコチに郷土料理として
ありますが、こちらでは開いて骨の無い形で供されます。

一般にウナギに比べると一段下に見られることの多い
どじょうですがこちらではきっぱりとどじょうに
こだわってしかもそれ相応の扱いを与えて高級料理の
域にまで高めておられます。

古来、
「どじょう一匹とうなぎ一匹」といわれるほど
どじょうの栄養はあなどれないのです。
あとはそれにふさわしい手当が求められていたという訳です。

このように置き換え表記のメニューといえば「このわた」が
あります。
ナマコの腸(わた)→このわた

「なま」という語感を嫌ったのでしょうか?
このわたには古い永い歴史がありますからそれこそ
大昔の人が考案したネーミングなのでしょう。

冷蔵技術の無かった頃には今よりももっと「なま」という
語感に対して抵抗があったのではないでしょうか?
生食の代表の刺身もそれよりもずっと後から登場する
技法なのですから。

もうひとつ「なま」を削除されるメニューが今回の主役
「なまず」です。
その名もずばり
「ず」
と表記されます。
「ず柳川」「ず蒲焼」「ず丼」などといった具合です。

今では外国産が当たり前になってしまったウナギや
(でもネット上では密かにウナギ釣りが大人気です)

トキに与えるためにわざわざ養殖しなければならないほど
激減してしまったどじょうなどに代わって
夏の天然元気の素の有望株です。

なまずと聞くと匂いやクセなどを連想される方も
多いでしょうが、池や沼などの流水ではない泥中に
生息するものならいざ知らず

きれいな水の流れる清流域で釣れる物には全くクセは
ありません。
それどころか大型のものは脂が乗っているのにしつこくなく
うなぎよりもはるかに美味しいと昔から美食家には
広く知られている隠れた美味なのです。

今回、師匠が釣りあげて地下水で泥抜きまでして持って来てくれました。

普通は試食などせずにぶっつけ本番でこなしますが、
さすがにこれは最初は自分で試食します。
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蒲焼はタレと粉山椒が脂っぽさを消してくれるおかげで
あっさりとした旨味を堪能できます。
ただ、天然ものゆえ皮が旨いのですがやや硬くなります。

「蒸し」の工程を加えるなどの工夫が必要ですね。

次に天丼です。
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こういう皮の旨いものは油に入れるときに皮目の衣を
削ぎ取るようにして落とし込みます。 
そうしてゆっくり揚げると皮目が香ばしく
身は脂が乗っているのでふっくらと柔らかく揚がります。
身がとろけているのがお判りになるでしょうか?
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さて、
どこの誰がどうやって育ててくれたのか解りゃしない
うなぎより遥かに良質な蛋白源をお店で出して
果たして食べてもらえるのだろうか?

と悩みました。

永田さんは
「富山人はなまずと聞くと引くだろう」と
不吉なことを言います。

でも、あまりに旨いので思い切って先日お出ししました。

天然なまずの天丼
「ず丼」
*一度食べたら10年は語れます*


とホワイトボードに書いていざ開店!

なんと結果は大好評!
出ました!

たっぷりと乗った脂で身はふうわりととろけるような
味わいです。
それにからまるタレはカエシと出しだけの濃い目の
砂糖無しのさっぱりとした抜群の相性の良さ。
珍しくこの日はレジで感想を聞きましたが意外なほど
抵抗感の無い様子でこちらが驚くほどでした。

これも日頃のとんでもメニューで鍛えたおかげでしょうか?

永田さん 予測は外れましたよ!♪

果たして二回目はあるのか無いのか
今回食べ損なった人が
「そんなに旨いのだったら自分も」
などと言われても全く入荷予定は立ちません。
もしかしたらこれっきりの幻のメニューに終るかも知れません。

でももし、入荷できたら
次は予告してお出しすることにしましょう。

どじょう一匹の例えではありませんが、怪しいうなぎなど
この「ず」のパワーの前には一切れだけで丸ごと数匹でも
適わないでしょう。

食後はなんだか元気が出て目まで明るくなったような気がします。

猛暑の夏に元気の出る
「ず丼」200円

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脂が乗ってふんわりとしていながらあっさりとした淡白で
顔に似合わず上品な味です。

この美味しさは知る人ぞ知る味として密かに語り伝えられてきたものです。
しかし、なかなか狙って釣れるという魚ではない為に
一般に知られていないのが実情です。

まれにお店で出すところがあってもそのほとんどが
「アメリカナマズ」の養殖モノです。
味は淡白なのは同様ですが
旨味が全く異なります。

やっぱり天然モノが一番
しかも清流で釣り上げて師匠の自宅の流れっぱなしの
地下水でほぼ1週間泥を吐かせたもの。

「駒形どぜう」さんには及びもしませんが
美味しいものをご提供しようと思えばこの位の手間隙は
惜しくはありませんね。

とは言ってもほとんどが師匠頼みですが  


もし、
また入荷しましたらこちらで約1週間前に告知を致します。
万一次回の予告をご覧になったら
有休を取ってでも食べてみる価値ありです。
携帯で画像を記録されれば10年は語れます。
保障します。


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