夜明けから降り始めた雪がみるみる積もり寒い一日となりました。
そこで急遽昼の予定を変更して「麻婆丼」の出番です。
しかし、ここ最近はあまり人気がありません。
その理由は判っています。
あまりに家庭的に、つまり日常的になり過ぎたせいです。

こうして名品と言われるメニューもどんどん月並みに
落ちていくんですね。
加工既製品の功罪です。

私は餃子事件が起きた時に「チャイナフリー」を宣言して
中国料理店の頃から持ち越してきた食材、調味料なども
含めて全て封印し、全て国産で行こうと決めました。

でも実はその封印した中にピーシェン豆板醤という
物があるんです。

黒の豆板醤と呼ばれる世界中の本格四川料理店で使われる
高価で希少な醤です。
赤は御馴染みの辛いものですが、黒く熟成したこれは
口当たりは甘味すら感じ次にじわりとした辛味がやってきます。
この両方を併用します。

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これは15年前に仕入れたものですから製造は20年以上前
つまり中国人が金儲けの為なら何をやってもいいと
目の色を変える以前の品物です。

ただし、これは希少なので世界中でしばしば品切れを
起すのだそうです。

そうすると四川料理店ではパニックです。
これが無いと作れないというメニューは多く、
作れない品書きが貼り出されるという事になります。
「麻婆豆腐」「回鍋肉」「家常豆腐」「魚香茄子」数え上げればキリがありません。

今回だけ封印を解きこれを使う事にします。
陳家と冠をつけた本格四川料理の出番です。
料理の奥は限りなく深くできます。
たまには本格でお出ししてみましょうか。

じゃ、ところで一方の家庭料理的なものとは何でしょうか?
プロは”家庭料理のような専門料理”を忌み嫌います。
絹豆腐で色の薄い、甘いものは屈辱的ですらあります。
どこかのタレントが
「マーボは飲み物です」と言って受けましたが
冗談じゃない  というのがプロの本音です。

一般の方々からすれば奇異に映るかも知れませんが
家庭でも出来るような仕事で代価を得ると言うことに
罪悪感を感じるべきと言えば少しは解るでしょうか?

美味しく作るには木綿豆腐でしっかりと煮込みます。

一方、絹豆腐では煮込みません。
さらりと温めて片栗粉で固めて仕上げます。
ということは短時間、しかも汁気=あん が多い仕上がり
となります。

八宝菜でも中華丼でもアンが多いほど原価は安くなり
レベルの低い仕事と言われます。
因みに汁気の多い八宝菜は「全家福」(ゼンジャーフー)
と呼ばれる家庭料理となります。
家庭風煮込み料理というわけです。

本来の炒め物として認められないんですね。

本格的四川と言えばもう一つ欠かせないアイテム。
こちらの豆鼓(ドーチー)これも随分前に仕入れたものです。
久しぶりの出番となりました。
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いずれも細かく刻んで使用します。
ひねた風味と八丁味噌のような豆の香りが
味を引き立ててくれます。


たっぷりのひき肉を
生姜とニンニクで炒めます。
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ここで超初歩的な話をしましょう。
ひき肉を炒める時に「におい消し」とよく言われますよね。
私はそんなものは不要といつも言います。
生姜やニンニクは美味しくする為に加えるのであって
臭い肉なんかじゃお話になりません。

でも、たまに肉臭いひき肉というものに遭遇することってありませんか?
肉そのものが良くない場合もあるでしょうが、
炒め方が不適な場合も臭くなるんです。

画像で見てください。
最初は生ですが火が通り始めると固まります。
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このほぐし方が問題なのです。
ばらけたこの小さな塊を潰してひと粒づつにしてやらなければ塊の中が肉臭くなるのです。
おたまを立てて上から押さえるだけで潰せます。
ひき肉が臭い時はたいてい潰し方が不十分な小さな塊です。

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これはチャーハンの時にも応用される基本のテクです。

最後に豆板醤を加えて炒めは終ります。

ここからはスープで煮込みます
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あと数点の調味料を加えますが忘れてならないのがネギ。
たっぷりの刻みネギを加えて自然な甘味を引き出します。

ふわりと柔らかいのに絹豆腐のような頼りない食感でなく
中までしっかりと味が染み込み
といって煮過ぎでスが入ったのじゃなく
少ないひき肉ばかりでそれこそ飲み物のようなベースじゃない
正しい四川の麻婆豆腐の完成です。

一回ごとの味見はほんの一滴のスープなのに
次第に体が芯から温まって上の一枚を脱ぐ程になりました。
薄手のTシャツ一枚だけなんて真夏と同じ服装で仕事です。

やはりピーシェン豆板醤の底力ですね。
そして仕上げのスパイス。
中国料理では山椒を黒い種ごとひき潰します。
この種がひりひり、スーハーする元です。
この味を「麻」と呼びます。

でもそこまでやると流石にウチのラーメンとは同調できません。
味の総和を図る為にはいつもどおり種の皮だけを引いた粉で
ガマンします。
それでも多くかけられません。
ほんのちょっぴり香りの片鱗だけ。
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それでも充分本格四川らしくなりました。
陳家麻婆豆腐
家庭料理とは一線を画す仕上がりで思ったよりも
沢山出ました。

きちんと作ればどれだけでも美味しくなるのが正しい料理です。
されど麻婆豆腐と言っておきましょう。

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平日昼限定  ミニ丼 200円





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