以前の記事の続きです。

さて、前回は包丁を動かさなければきれいな切り口にならず
それは味にも関わる というような事を書きました。

では、それは麺においてどういう状況を生むのでしょうか?
例によって危険な予感をはらみつつ進めましょう。



ラーメンを食べに来店されたお子様連れの皆様は
「チュルチュルだよ~」と言い聞かせられています。

私はこの言葉に麺類好きの最大要素が表現されていると
思うのです。
ツルツルとした食感。
唇を通過するときの心地よい擦過感。

もちろんこれ以外にもコシや、もちもち感など色んな要素が
ありますが言葉に言い表しにくいのですね。
特に子供には一番訴求力のある言葉を当てますから。

子供に
「ほ~らもっちりした麺だよ」などと言っても
解りません。

冗談はさておきツルツルとした麺。
これが”食べる側”から
すれば全ての要素の美味しさを言い表すと言えます。

作り手側はもっと複雑な要素ももちろん考慮しなければ
なりませんが、食べる側からすれば関係ない話です。

(ここで少々、横道に寄らせていただきます)

ところで私達日本人はこの麺をすする時に
空気とスープという液体、麺という固形物の三者を一気に吸い込むのですが
これは欧米などの国の人は苦手なのだそうで
実は大変危険な行為なのだそうです。

専門医の方が
「神様はなんて危ない構造にしてくれたんだろうか!?」
と嘆いておられたくらいなんです。

喉の小さな突起物で上手に交通整理してくれなければ
たちまちむせかえってしまいます。
これが上手くいかないと命に関わりますから
やはり子供の頃から慣れる必要があるのですね。

私達はそうして小さな頃からすすりこむということを練習して来ているから出来ますが、
来店される欧米人の方はさりげなく観察させていただくと
やはり、すすりませんね。
あちらではマナー違反だ  という事もあるでしょうが、
根本的に”出来ない”と言ったほうが正確なようです。

その代わりスパゲッテイなどもそうですが
唇を上手に動かして麺を送り込んで食べられます。
私達にはこれは難しい食べ方ですね。
唇を突き出すように麺を迎えに行き、上手に手繰るように
ムニュムニュと召し上がられます。

あれだけ面妖な動きで鍛えていれば
難しい英語やフランス語の発声も上手なのもうなずけます。

え?
フランス人がフランス語を上手なのは当たり前だ?
これは失礼。

本題に戻りましょう。

つるり とした食感を出したいからと、手を尽くしても
切る工程が間違っていると台無しになります。
美味しく切るということはつるりとした食感にも多大な影響を及ぼします。


手打ち蕎麦の美味しさを語るときに
断面のエッジのたった小気味良い食感が語られますが、
キリリと角の立った蕎麦は確かに美味しいものです。

ですが、本来当たり前のはずだったのにほとんどの蕎麦がそうでなくなっているから
手打ちモノでことさらにそう感じてしまうとも言えます。
ではエッジの立っていない蕎麦はどうやって切られているのでしょうか?

これは製麺機の切り歯というローラー状の歯で作られたものです。
押し切りしたようになりシャープな切り口とは言えません。
例えてみれば
ペーパーカッターで切るようなとでも言いましょうか。
断面はザラリとして角は丸くなります。

誤解しないで頂きたいのは
切り歯でカットした麺がダメだといってるわけじゃない
ということです。

パスタだってツルリとしたものやザラリとした切り口を
持つものがメーカーごとに特色を出して販売されていて
それを調理人が”それに見合ったソース”で合わせます。

ですから
つるつるっ と食べてもらいたい  と願う料理人が
押し切りするような道具で切ったりしていては
目的を遂げられない  と言う事になります。

昔はあまり良い道具はありませんでしたから
しょうがない面もありました。
でも今はネギを切るだけですら人より優れたものがあるのです。

手で包丁を使わなくとも機械式の包丁切りが出来ます。

前述しましたように
ツルツルとした食感は延し面に強く出ますが
包丁を動かして切った断面もまたつるりとした食感を持ちます。

このままならばエッジの立った麺です。
しかし、ツルツルとした麺には弱点もあるのです。

ツユが絡みにくいのです。
滲み込みも少なくなります。
ですから角の立ったエッジを犠牲にして
手もみ麺とします。

つまり、
麺に味を滲み込みやすくするのか?
それを犠牲にしてでもつるりとした麺を求めるのか?
などといった様々な理想を追い、求めているのです。

その工程の重要な部分がこの「切る」という事です。

蕎麦の話ですが、
福島県に星さんという方がいらっしゃいます。
この方は「裁ち蕎麦」の名手で本にもよく紹介されています。
(ご無事でしょうか?)
裁ち蕎麦というのは包丁でぐいっと切るのではなく、
先端の鋭い包丁でスーッと引き切りをする  
というものです。

普通は定規などを当てなければ出来るものではありませんが
この達人「星さん」は何も添えずにスッスッスーッと
切るそうです。
一度見てみたい所ですが、なによりそのエッジの立ち方
想像するだけでも実に美味しそうではありませんか!

あるお店ではせっかく包丁でキレイに切っておきながら
それ以後の扱いが良くないために蕎麦がよじれてしまい
残念な食感になってしまっているのを出された事があります。

包丁で何をしたいのか
何をするために包丁を手に取るのか
もう少し考えてから持ってもらいたいものです。

包丁で切る
この単純にして奥深い仕事には終りがありません。

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