2011.07.20 梅仕事2011
今年も梅の季節がきました。
寒い暑いと日々こぼしながらもこうして季節は巡り
いつも通りにこなれていく事のありがたさを今年ほど痛切に
感じる年はありません。

一朝事あれば
『アノ頃の平和な生活に戻りたい』と切望するに違いない
その日々連なる平和な日常の一こま。
昔の人たちがしてきたように今も同じ作業を行なえる
幸せを毎年噛み締めてきましたが今年はひとしおです。

しかし、そうは言っても梅仕事は手の掛かる作業ばかり。
苦にはならなくても時間のかかる事にはちがいありません。
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今回はそんな手作業のひとつだけを記しましょう。
赤紫蘇の仕事です
紫蘇は梅1Kに対して2束が適量だと言われています。
が、地方によっては全く赤紫蘇を加えない所もあります。
そういう地方では梅干しは赤くないのが当たり前で
赤いのは着色料で染めたように見られるそうです。

私は昔から馴染んできたやり方ですから加えます。
今年は梅を70Kg仕込みましたから紫蘇140束とまではいきませんでしたが、
100束ほどを仕込みました。
まず、葉を一枚づつむしり取ります。
この時に葉柄を取ることが重要です。
葉柄はこの後、もんでも、漬けても、干しても硬すぎて
食味を損なうからです。

10束をむしるのにほぼ一時間要します。
今年は梅雨明けが早かったおかげでとても暑い作業でした。
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次に洗います。
これも大仕事です。
大きなシンクに入れてジャブジャブと水洗いして、
隣のシンクに移します。
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そうすると残った水には畑にまかれていた籾殻やほこりや
泥がたまって黒っぽく濁っています。
この移した後の水がきれいになるまで何度でも洗い替えます。
普通は三回と言われていますがウチでは5~6回替えて行ないます。

最近では水の少ない中国からの輸入量が増えてウソみたいに
安い梅干が流通していますがこの紫蘇洗いひとつとっても
水の乏しい国での食の製造がいかに危なげなものかが知れます。

一度、この水洗いの不十分な紫蘇を食べた事があります。
ジャリッとしました。

次にこれをボウルに入れて塩を振りよくもみます。
すると黒っぽい汁が出ます。
これをしっかりと絞り捨て、もう一度塩でもむと
やや赤っぽい汁が出ます。
ここに塩漬けで柔らかくなった梅と梅酢を加えると
パッと化学反応のように赤く発色するのです。
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梅仕事の楽しい瞬間です。

これをしっかりと混ぜ合わせて全体に梅酢を回らせたら
梅干用のタルに移して最後の工程の土用干しを待つだけとなるのです。
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いつも書くことですが今年もしつこく繰り返す事にします。
とてもありがたい事に富山は梅の巨大産地ではありません。

つまり、今年の梅の収量に一喜一憂する人はほとんどいない
ということです。
梅の木は家の周りに植えて、放置されています。
収量が少なければ自家用に回して終わり。
多ければ余った分を市場に出すのです。

そういう梅は年によっては少なくても大きかったり
また、多くても小さかったりします。
黒っぽいシミが出たり、硬かったりもします。
私はそんな梅が何よりも得がたい宝のように思えます。

今ではヒエやアワがコシヒカリよりも高価な時代です。
梅の巨大産地品が全国を席巻して梅カレンダーすら塗り変えようとするほどになり
梅の木がある家ですらそんなものを有難がっています。

「えぇ~っ?地物で作るの~っ?」などと妙な顔をされると
天邪鬼な私はこう答えることにしています。

貴方は梅干を食べる時に皮をむくんですか?

富山では米や梨やリンゴなど巨大産地となっているものも
多数あります。
そんな現場ではやむなく農薬も撒かれています。
でも、籾殻ごとご飯にする人はいません。
リンゴや梨は皮をむいて食べればいいだけの話です。

考えても見てください。
所有する農地に梅の木を沢山植えて一年かけて世話をする。
それだけでもとてつもない費用が掛かるのです。
それが
「今年の収穫は少なかったから自家用だけで終わりだな」
などと言って笑っていられるでしょうか?
とんでもありません!

営農農家は少しでも収量を増やし、品質を良くし、等級を
あげて利益を出さなければ生活が成り立たないのです。
それはそれで仕方がない事でもあります。
別にどこかのお国のような毒をふりまく事とは違うのですから。

でも、あえて食味の良くないヒエやアワを食べる人がいるように
私は地物の梅だけ、地物の紫蘇だけで作りたいと思っています。

何のための梅干なのか?という原点を忘れたくないのです。

センチメンタルな懐古思想でもなんでもありません。
かえってドライに割り切っているくらいで合理主義者かと
思えるほどです。

最近は減塩志向の高まりで私の作る塩分20%のような
昔ながらの塩っぱいモノは敬遠されがちです。
新聞などでも
蜂蜜入りなどの産地品が大きなCMを出しています。
カツオ入りなどというものもありますね。

今年は大震災の影響で節電も言われています。
停電などもあるかも知れません。

専売公社の塩のようなものは化学塩と呼ばれています。
不純物をとことん取り除いた化学物質に近い
ナトリウムそのものと言えるほどだからです。
これで作った20%梅干は確かに体に悪いでしょう。

しかし、ミネラルを程好く含んだ天然塩ならば
20%梅干でいいのだ と思っています。
冷蔵庫に入れる必要の無い
10年でもそのまま常温で保管できる
安心、安全な常備食となってくれるからです。

そんな有難いものになぜ甘味などを足す必要があるのでしょうか?

甘い梅干が二日酔いの時に役立ってくれるのでしょうか?
カツオ風味の梅干が風邪引きの体を助けてくれるのでしょうか?
アミノ酸を加えた梅干が衰えた体力を救ってくれるのでしょうか?
得体の知れない外国の梅干が滋養を養ってくれるでしょうか?

時代は確かに日進月歩であらゆるものが目まぐるしく変わり
進化をとげています。
しかし、変えてはいけないもの
守るべきものもあるのです。

ついこの間までCO2削減のために原発を推進すると言ってた人が手の平を返して
火力でいいんだと言ったり
スローフードと言ってたことも忘れるような愚かな人々に
惑わされないで貪欲に「わが身」の事
自分の大切な人たちの真の幸せを考える時
見た目の良さや大きさ、甘味のある無しなどアホらしいほど
瑣末なことのように思えてきませんでしょうか?

でもお陰様で
天邪鬼なお客様も多いとみえて(失礼 
そんな昔かたぎの塩っぱい私の梅干も売れ行き好調です。

売り上げ収益から東関東大震災被災地への義捐金に回させていただきます。

ご協力に深く感謝を捧げつつ
また梅仕事は続きます。



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