山菜の世界にはプロ並の方々は沢山おられます。
それこそ私なぞ足元にも及ばない剛の者がわんさか。
でも本物のプロにはただ一人しかめぐり合っていません。

達人「Oさん」
あらゆる山菜の名前、それの採れる場所。
一年を通した適期とその販売ルート。
何がどこの市場でどのくらいの価格で取引されているか
食べ方などが頭にぎっしり詰まった生き字引のような人です。

例えば富山の市場では値がつかないどころか
市場関係者ですら見たことが無いという山菜があります。
そんな物を市場に持ち込んでも誰も買いません。

すると二束三文のお金にしかならないのです。
需要と供給という言葉はなんてむなしいものか!と
嘆息せざるを得ません。

それを欲しい人は巷に少なからずいるのに、
セリに参加する人が無知なばかりにこういう
レアな価値のあるモノが流通しなくなるのです。

いっぽう、お隣の金沢ではきっちり値が付きます。
正当な価格です。

どういうことかと言いますと。
市場関係者がその価値を正しく判定できるということは無論
仲買人、問屋、料理屋、料理人、そして客。
その全てが知っていて、なおかつその価値を認めている
からこそ”市場”が成り立っているのです。

えてして
お金を惜しみ、ひたすら安価なものばかり手に取り
さも消費者の特権のような顔ばかりしていると
良いものはその手をすりぬけてより高額な値を付ける人の所にばかり集まってしまうのです。
その結果安価なだけの粗悪なものばかりしか無いという状況に陥ります。

「水は低きに流れ、モノは高きに流る」


高価な山菜といえば
普通は半日山を歩き回ってやっと数本見つけられるかといったオオナルコユリという物があります。

達人
あるとき有名な料亭のご主人からこれの注文を受けました。
ーーその時の話もなかなか愉快なのですが、
それは他の機会にしましょうーー

さて、達人は二つ返事で引き受けるや翌日には30数本の
束を持ってきます。
その他にも普段どおりの太いススタケの詰まったリュックを持ちながらです。

実はこれだけで相当凄いことなのですが、
さすがは達人です。
その翌日も、またその翌日もなのです。

私たちが一日に採って来れる細いススタケの量というのは
それのみで採取しているのです。
それプラス、ナルコユリひと束、しかも太いものだけ。
というのがいかに常人離れした事か!

いったいどれだけの距離を歩くのか!?
いったいどれだけの場所がその頭にインプットされているのか!?
まさに驚異です!

それでいて偉ぶらず人懐っこい笑顔で優しく、
教えを乞うとなんでも応えてくれます。
私はこの方を師匠と崇め、押しかけ弟子にしてくださいと
一方的に宣言しておりますが、
はなはだ残念な事になかなかお目にかかる機会がないのです。

あるとき
「ススタケの二番子を知ってるか?」
と尋ねられました。
「節の途中から出てくる枝のようなヤツですか?」

達人苦笑いして
「そんなんじゃないよ」
といって出したのがこんなようなものです。
tob 007


普通のススタケが終った頃に出てくる、
先端が丸みを帯び、節が曲がりくねったモノだというのです。
普通より
柔らかく、旨味がある美味しい物なのだといいます。
ただし、普通よりも数は少ない。

これの瓶詰めを作るのです。
これを聞きつけた鉄人「道場 六三郎氏」が
自宅まで頼みに来て毎年送ってやっているのだそうです。

「もう足が痛いから本当はやりたくないんだよ」
と苦笑します。

ようやく最近判るようになりました。
本当に情けない不肖の「自称弟子」です。

二番といえば植物にはそういう性質があるそうでして
生存の為に余力を用意しておく とでもいいますか

例えば盆栽では
小鉢に広葉樹を植えたものから本来の大きさの葉が出ると
バランスが良くないので葉を摘むんだそうです。

そうすると二番の葉が出てきます。
これはぐっと小さくて見栄えが良い  となる訳です。
もちろんやりすぎると体力を消耗させすぎるから経験が必要とされるそうです。

山菜でもタラの芽が有名ですね。
一番芽は頂上に出る大きくて立派なものです。
このまま育つとそのまま葉を大きく展開し、
樹形は真っ直ぐになります。

ところがこの一番芽を摘むとしばらく後、
脇から二番芽が出てきます。

これは少しだけ小ぶりです。
これが育つと少しだけ樹形はくねります。
この二番芽を摘むと次に三番芽が出ますが、これも摘むと
もうこの木は枯れて死んでしまいます。
二番芽までにしておかなくてはいけません。

ゼンマイもコゴミゼンマイも二番芽が出ますが
全部を摘まないようにしなくてはいけません。

ススタケの場合はそういう意味では二番子という意味合いが多少違うのでしょう。
晩生(おくて)とでも言った方がより正確なような気がします。

でも師匠の言われることは絶対ですから、私は二番子と
言い続けなくてはなりませんが・。

ナルコユリや山野草なども手折った後から二番芽がでるモノもあります。
でも明らかに細くなります。
いわゆる「株が弱る」のですね。

鉢植えならばかえって好都合な場合もありますが、
達人のように翌年も「またお願いします」と言われた場合
「今年からは細くなりました」とは言えません。

ですからプロはそれこそ無尽蔵なポイントを押さえている必要があるわけです。
そうして数年置きに巡るのです。
気が遠くなりそうな話でしょ?

ただ考えると山に行って摘んできて売るだけなんて
誰でも出来そうに思えるのですが
プロとなるとやはり凄いものですね。
知力、体力、全て桁違いです。

最後に達人の素晴らしい知恵をひとつだけご紹介しておきましょう。

「イケマを畑の傍に植えておくと虫が寄ってこない」

のだそうです。
お解かりになりますか?
ちなみにイケマは地上部は可食ですが
地下茎は有毒です。












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