なにかと雑事に追われて更新が出来ませんでした。
毎日沢山の方に訪問されていながら失礼な事だと反省しきりです。
改めて
皆様のご訪問に感謝を申し上げます。

仕事にまで食い込んでいた雑事もひと段落致しました。
ブログを再開します。


さて誰でも知っているフキ。
山菜としては割りと地味な印象です。

このフキに限らず
昔から山菜は救荒食として重宝されてきましたが、
その中でも丈夫なものを選び家の周りに植えたものでした。

かつて私の生家の前もさながらフキ畑のようになっていました。

家の周囲を利用して盛んに植えられた理由としては
・畑に実りが無かった時の為に、
・雑草が繁るぐらいならとグランドカバーのように、
・子孫らに幼い時から食べれるものを教えるために、

などの理由からだろうと思われますが不思議とこれらを
食べた記憶があまりありません。
でもそれは誠にありがたい事と言うべきなのでしょう。

むかし、天保八年(1837)の全国的な大飢饉の時、
富山県有峰村という孤村では高冷地ということもあり
その惨状はすさまじく5,6月には
「山野の草木を掘り尽くし」
「喰物つきて終るものおびただしきことなり」
と文献にあります。
数年続きの飢饉の最後でした。
夏の土用に綿入れを着るほどの冷夏だったそうです。

日本人の体質は欧米人に比べると脂肪を蓄えやすいと
言われますがそれはこのような度重なる飢饉に耐えて
生き延びてきた結果なのだそうです。
農耕民族としての道を選択した止むを得ない経過でしょう。

今では豊かになったおかげでそういうことも無くなり、
サバイバルなどと小じゃれた言葉で語られますが
そう遠くない、つい最近までの過去では
食べれるものを知っておくと言う事は生存の為の
必須学習事項だったのです。

例えばギボウシならば一般に見る山菜としての姿
これは芽吹きの頃なのですが、大きく葉を展開した姿
また、花を咲かせた状態、その色、形状。

これらはその時期で全く違う姿を持ちます。
だから身近に置いてその一年の状態に馴染む必要が
あるのです。
ギボウシに非常に良く似たコバイケイソウという
有毒植物がありますが馴染んでさえいれば簡単に見分けがつきます。

これの不慣れな人が毎年中毒事故を起しているのです。
お店で勝手にお客様に出して営業禁止になった所まであります。

この可食と不食、無毒・有毒を見分ける行為を「同定(どうてい)」といいます。

人気のコシアブラとウルシ
ニリンソウとトリカブト
ユキザサとホウチャクソウなど
同定が出来ないのならば手を出してはいけないという
のもあります。

永田さんは大の山菜好きですが
自宅の庭にはツルニンジンやモミジガサなどの珍しい
山菜が育てられています。
『どんな花が咲くのだろう?』
『どんな種がつくのだろう?』と
惚れる程にまで入れ込んだ山菜の姿の変遷を見つくしてみたいという気持ちには深く共感します。

ところがうわ手がいるもので
松浦さんは行者ニンニクやオオナルコユリの畑まで持っています。
種を採り繁殖までしているのです。
一般に栽培繁殖に時間を要すると言われているナルコユリも
試験場の専門家より詳しく追求されていて、
その言は専門家より的確にして裏づけが為されています。

私はウドの種まきぐらいまでしか経験がありません。
でも、山菜愛好家の考えることや行動パターンが似てくるのは
面白いものです。

こういう
良く判らないものを見極めたい。
「知らない」と言って看過できないという意識は料理人に通じるものだからです。

見慣れているつもりの御馴染みの山菜でも大きく育つと
まるで違うモノのような様子になります。
また、ウドやワラビなどは前年の枯葉が倒れているのを
見て場所を特定できます。
”その場所”を好むものがどんな枯葉になり、
また雪に押し潰されてどういう形に倒伏しているか
など知るべき事は無限にあり、興味も尽きません。

山菜だけに限りませんが自然と付き合うということは
否が応でも自然をよく観察するということに尽きるのです。


フキの話に戻しましょう。
ワラビと同じようにこれも根が本体のような逞しさを持っています。
(ワラビは地下茎ですが)

どのくらい逞しいかと言いますと、
雪解け時に山に行くと斜面から雪と共にずり落ちた
柔らかい土が道端にたまってますが、
そこにフキノトウが顔を出しているのです。

よく見かける風景ですから何気なく見過ごしてしまいます。
でも、去年まではそこには無かった土です。
当然そこには根も無いただの空間だった所なんです。

雪解けと共に上からずり落ちてきた柔らかな表土。
その30cmほどの深さを完全に雪が融けて表土が
露出する頃にはもう芽を出す準備を整えているわけです。

そろそろ春が来る  とはいえまだ寒い雪の下で
一生懸命に根を伸ばしているんです。

それでも、
この柔らかな表土の中から顔を出すのはまだ解ります
ブルドーザーが除雪した時に一緒に道端に寄せられる
砕石混じりの硬い泥塊から顔を出すフキノトウには全く
感心させられます。
驚異的な活動力ですね。

土手からずり落ちた表土から同じように顔を出す
トリアシショウマでもさすがに砂利の中からまでは無理です。
そこまでは見たことがありません。
そういう意味では最強でしょうね。

これほどの生命力を持っているのですから薬効もあります。

咳止め、去たん、解熱、健胃、
魚の中毒には茎葉の絞り汁を飲用
虫さされに葉をもみつける
などです。

フキノトウは天ぷら、おひたし、酢の物。
フキの葉柄は煮物などが一般的ですが、
葉も食べられます。

出てきたばかりのまだ柔らかい産毛の残るようなものを
茹でてよく水にさらします。
細かく刻んで佃煮にするとほろ苦くて風味の良い大人味に仕上がります。
カツオ節や実山椒などを加えるとバリエーションが広がります。

葉柄はゆでて皮をむき煮物や汁の実のほか漬物にもなります。
塩とヌカを交互に振って浅漬けにしますとご飯のお供に最適です。
細めのものはキャラブキ。
太目のものは斜めにスライスしてキンピラにと多用途に。

また、
このフキというのは雌雄異株で雄花は黄白色の花を、
雌花は白色の花をつけます。
そして雌花は花後高さ4~50cmにまで伸びます。
これが旨いのです!

適当なところから鎌で切り取り採取したら花を取り去ります。
茹でて皮を剥きます。
普通のフキ葉柄だったら老眼鏡をかけないとムキ始めが
解りませんがこれは小さな葉がありますから
これを引っ張るだけで簡単にむけますから早いです。
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小口に切って味噌和えにするだけで即、一品になります。
汁の実、佃煮、漬物、キンピラなどに使えます。
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ただこの伸びたフキノトウ。
難点がひとつだけあるとすれば、採取しているときに
笑われることでしょうか。
「何採ってんだぁ?」
と呆れ顔をされるのが少々傷つきます。


フキを積極的に取り入れて中風の予防にしている老人ホームもあるそうで、
そこでは何年も脳卒中や中風に誰もなっていないそうです。
他には血圧を下げて安定させる効果があります。
また解熱効果を得るにはフキの根を刻んでよく乾燥させたものを煎じて飲むとよいそうです。


フキを採っているとーーー

私の兄は横浜に住んでいますが、まだ母が生きている頃
兄が帰省し、フキの漬物を喜んで食べる姿を見て
「お前は田舎向きなんだからこっちへ帰って来い」と
言っていた姿を想い出します。

ですからフキの漬物はいつ兄が訪ねて来てもいいように
毎年作ります。
来た時には黙って出します、送ってなんかやりません。
あの時の母の言葉を覚えているか?  
とは聞いた事はありませんが無心に食べる姿は少しも変わっていません。

地味な山菜ですが思い出と薬効の詰まった大好きなひとつです。

(参考文献)
桂書房     有峰の記憶    前田 秀雄 編

北日本新聞社  とやまの薬草   森田 直賢 著

自然食通信社  草と野菜の常備薬
                 一条 ふみ 著

 






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