前回からの続きです

師匠の世代というのは大まかに言うと中国料理第一世代です。
中国華僑から直接仕事を習った初めの日本人世代群ということです。
いわば出稼ぎに来た相手から仕事を盗むわけです。

いずれ必ず自分達の仕事を奪う事が分かりきってる奴に仕事を優しく
教えてくれる華僑なんかいるわけがありません。
その時代がどこでもそうだったとも言えますが、厳しい仕事でした。

ですから当時そこを勝ち抜いてきた職人達は皆
粘り強く、ガマン強く、根性があり
勘が鋭く、目が早く、飲み込みが良かったのです。

今のような会社組織の飲食店などほんの一部で
包丁一本で渡るのが当たり前。
もちろん、退職金も年金も無かった時代です。
おのずとアウト・ロウのような性格になっていくのも
無理ないところだったのです。

だからその世代の人達は職人として魅力一杯に光っていたのです。

調理場でも皆、師匠を尊敬していました。
大好きでした。


ある日のこと、
A子ちゃんのお弁当のエビフライ用にタルタルソースを作ると言い出しました。
もちろん厨房全員がアシストします。
滅多に無いことですし、師匠の子煩悩ぶりは皆知っていましたから。

マヨネーズ作りそのものはとても簡単に出来ます。
でも、やっちまった事のある人は知っている落とし穴。
そうです!
なめてかかるととんでもない事になる時があるんです。

卵黄に塩コショウ、酢を入れて
攪拌しつつ油を加える。

たったそれだけなのに、うっかりすると分離してしまう事があるんです。
その不気味な落とし穴にはまると取り返しの付かない無限ループに
はまり込んでしまいます。

この時がまさにそれでした。

一言でいうと”意味不明”
いつもなら目をつむってても出来る位の見習いのボウヤでもという
仕事です。
でも師匠みずから作りたいと言ってる事を代わる訳にもいきません。

最初は皆タカをくくってました。
「あれ?おっかしいな」と新しいボウルを出し
新たに卵黄をつぶし油を入れる代わりに先ほどの分離したものを加えます。
ちゃんと出来ます。

ほら 大丈夫
分離するわけなんかないんだよな

ところが! また いつのまにか分離が始まっているのです!
「ちょっと待て」 とボウルを持つ人、ホイッパーとが代わり
油を落とす人が代わりします。
その度に新しいボウルと卵が用意されます。

こういう事が起こるから単純極まりないマヨネーズ作りなのに
逆向きに回してはいけないなどのおまじないの様な口伝があるのです。
こんな単純な事で失敗すると心底がっくりときます。

でもこうなってくると皆、意地になります。
師匠も「止~めた」とは言えません、
いえ、この人が一番ムキになってます。
なにしろそういう世代なんです。
そうやって愛娘に愛情を注いできたのです。

ようやく厨房に平穏が戻ってきた時
そこには一番大きなボウル一杯のマヨネーズ。
実に50cm径の中に20リットル以上が並々と鎮座していました。

お弁当につけると言ったってせいぜい20ccもあれば充分です。
約1,000倍の量を作ってしまったのです。

マヨネーズの主成分は油です。
この時に使ったサラダオイルは18リットル入りの一缶丸ごと以上を注ぎ込んだのでした。
味については語らないことにしましょう。
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マヨネーズを自作した事のある方はご存知ですよね。
油さえ加えればどれだけでも増えるということを。

一個の卵黄から20リットルのマヨネーズを作ることでも可能です。
でもそんな事をすると真っ白のものになり油の味しかしません。
たまに、昔ながらの洋食店でそんな物を出す所があります。

美味しいマヨネーズを真面目に作ろうとするなら
良質の材料を揃えるのはもちろんですが、
重要なのはどれだけ油を少なく仕上げるかという点です。

そしてついうっかり分離して前述のような悲劇に落ちないために
私が取る方法をご紹介しておきましょう。

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いつも松田のマヨネーズを愛用してはいますが、
大量のポテトサラダに入れるときなどあまりに高くつきます。
300mlで480円では思い切り使えません。

そこでボウルに卵黄を入れ、松田のマヨネーズをほんの少々出します。
そこから普通にマヨネーズを作り始めるのです。
これだと失敗知らずです。
松田のマヨネーズの”素”となってくれるからです。

おまけに元々の色を参考にしながら油を入れて行けば
油の入れすぎによる味の劣化も予想がつきます。
塩加減も元々のものと比べると安定がしやすくなります。
こうして機会を捉えて多目に作り置きして広口ビンに移しておけば
次回は美味しい自家製マヨがふんだんに使えるという寸法になるのです。

いちから始めるのよりぐんとお手軽です。

そしてとっておきのウラ技。
仕上げにかんきつ類の果汁を入れます。
風味が良くて油っこさが和らぎとても上品になります。
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ブラックペッパーを多目に入れて仕上げたり
ケイパーのみじん切りを混ぜたり
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マスタードを粒マスタードに変えたりしても面白くなります。
ワサビをたっぷりまぜるとイカなどの和え物にぴったりです。

こうして美味しいものには更に手をかけたくなります。
元々昔からマヨネーズはこうやって活用されてきたのです。
手軽に作れて、幅広く使い回しが出来るからこそ
誰でも取り入れてきたのです。

それを21世紀にもなってこれとあれを入れたもの”だけ”が
マヨネーズと表示をしても良い  などと
寝ぼけたことを言ってもらっては困りますよね。

と話をぐるぐるとかきまわし、元のところへ戻った所でおしまいとさせて頂きます。
マヨネーズの話でした。








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