自家製の手打ち麺では多加水で仕込む為3日がかりと前回までご紹介しました。
つまり、日曜日に使う麺は金曜日に仕込み始めなければならないのです。
これをずっと続けるのはちょっとしんどい話なんですが、
実は手打ちの本場のひとつ讃岐ではもっと大変な事態なのだそうです。

先に手打ちうどんの辛苦という話で取り上げましたが、
うどんを茹で上げるのにほぼ10分以上かかります。
この時間がうどん屋さんの泣き所なんだと書きました。

ところが讃岐では様相が違います。

その前に
普通、調理場では誰が一番偉いのかというと断然!調理長です。
調理場の天皇と言っていいほどの絶対権力者です。

場合によっては経営者より権力を持ってたりします。

和食では調理長
場合によっては板長、花板など色々な呼ばれ方をされ、
大体次に来るのが二番板だったりします。
煮炊きする人は煮方です。

中国料理ではチーフ=調理長
主に一番鍋、次に一番板か二番鍋とそれぞれその店で序列がきっちりと決まっているのです。

特殊な例ですが、
鮎専門店があり、ここでは鮎を炭火で焼き上げる職人が一番です。

トップには権力とともに高給が保障されなければ示しがつきません。
私が初任給3万円だった当時、東京の巨大有名店のチーフは60万円という話でした。
その頃の外国航路の船長より高給でした。
お金ばかりじゃありませんが、だからこそ見習いにも夢があるとも言えますね。

鮎専門店ではライバル店から高給で引き抜きがあるほどです。

さて、讃岐うどんの本場では誰がその地位を占めるのかというと
「釜前」と呼ばれる人です。
うどんの茹で加減を見る仕事をします。
ちょっと意外な感じがしませんか?

ダシの味を決める人でもなければ、打つ人でもないのです。
もちろん、どうかすると経営者より偉い場合もあるやも知れません。
もしかすると他店からもっと高給で引き抜きがあるかも知れない そんな
トップがうどんを茹でるだけ??

奥が深いんですね、実は。
ただ、茹でているわけじゃなかったんです。

その日の様々な条件をみて、先に茹でるのです。
以前にも書きましたが、讃岐では繁盛すると「茹で」は正しく出来ても
ついその後の「蒸らし」がおろそかになり客足が遠のいてしまうほど客の舌が肥えているのです。
が、もうひとつ重要なポイントがあるんですね。
つまり、長々と待たす店もダメなんだそうです。

待たさず、ちゃんと正しく茹で、蒸らした美味しいうどんを出す。
一見当たり前のように思えるかも知れませんがこれは至難の業です。
しかし、昼の繁忙期に沢山のお客様をすばやく捌き、しかもちゃんとした物を出せれば
確かに繁盛店になりますよね。

不慣れな人なら必ず茹で置きしすぎてふやけたうどんを出しそうではありませんか?
そんな店は論外なほど、ことうどんに関しては厳しい土地柄なのですね。
ここ富山では普通に皆おとなしく10分以上黙って待っています。

その釜前の達人が行っているのが「読み」なんです。
気候、温度、お客の入りの動向、その日の客層などなどです。
先の鮎の炭火焼きの達人もそうです。
何しろ仕上げるのに時間がかかりますから
顔を見てから始めていたのでは遅い仕事になって「腕が悪い」と言われます。

本場で手打ちを学んでくる人は多いんですが、
ただ手打ちの技術だけを学んでくるだけでなく
この、待たさないで美味しい出来立てを常に供する  という秘術を学んで来て欲しいものですね。

さいわい、私は手打ちではあってもラーメンなのでお客様のご注文を聞いてから茹で始めても苦情は来ません。
有難きかな
といったところです。


ram 028
味噌魚貝のひもかわうどん





スポンサーサイト
Secret

TrackBackURL
→http://oisiitoyama.blog96.fc2.com/tb.php/635-1734f6b8