2010.03.21 天丼
ミニ丼で天丼を作りました。

そこで今回は天麩羅の話をしましょう。

油で揚げるということは
(他の調理法のほとんどがそうであるように)
素材の水分を抜く工程 ということです。

そして
粉と卵と水で作る衣には幾通りも変化をつける事ができます。

一品料理には適度な衣がついていますが、カウンターで食べる天婦羅には意外と少ない衣しかついていません。
(もちろんネタ次第ですが、概論としてお読みください。)
揚げたてをすぐに食べるといくらでも入りますが、衣が厚いと飽きるからです。
対して一品料理の場合は衣が薄すぎると貧弱に見えますし、第一食べた気がしません。

丼に入れる場合も2通りあります。
1、天婦羅をご飯の上に置き、天ツユをかけて仕上げるタイプと
2、天婦羅を揚げて熱いツユにくぐらせたものをご飯に乗せるタイプです。
1、は薄衣向きで 2、はややしっかりした衣でないとツユの中で崩れてしまいます。

蕎麦やうどんの種にする場合は難しい判断が迫られます。
「衣食い、油食い、」の両方の客の要望を叶えなければいけないと言われるゆえんです。

衣が厚すぎても、薄すぎてもいけないと言うわけですね。
これは別盛りで供される場合も同じです。

ここまでは衣の話だけですが、
衣の違いだけでなく全て揚げ加減が違うのをお解かりでしょうか?

一種づつ最適な状態で揚げてすぐさま供されるカウンターでの揚げ加減と
一品料理の盛り合わせでは幾分違いがあります。
揚げるのも、食べるのにもそれだけ時間が少し余計にかかるから盛り合わせの場合は強めに揚げられます。

丼ではツユにくぐらせるものと
ツユを上からかけるものでは やはり揚げ具合が違います。
くぐらせる方はより衣も温度も強く揚げなければいけません。

蕎麦うどんの種ではやや揚げすぎぐらいが美味しいとされます。
中は8分くらいの火の通りでもいいから衣のカリカリッとした要素を重要視するからです。
揚げ出しぐらいで美味しいんだと言われます。
一品料理よりも高めの温度設定ですね。

昔、蕎麦屋さんが奥の手だとばかりに天麩羅屋さんから腕利きの職人を引き抜いたことがあったそうです。
これで商売敵を一気に蹴落とす算段だったわけです。
ところが、結果はこちらのほうが負けて潰れてしまいました。
今に語り伝えられる
蕎麦屋の天麩羅と一品料理の天麩羅は別物なんだ  という話です。
若干ステレオタイプの「作り」の入っている気もしますが
判り易いいので良しとしましょうか。

ツユや塩をちょいと付けて食べるのとどっぷりと汁に浸してくる蕎麦うどんの天麩羅が違うのは
当たり前ですね。
油の選定からはじまり、衣の配合、溶き具合、温度の加減全て違ってくるわけです。

天ザルなどの別盛りではどうでしょう?
そのまま食べる人もツユに付ける人もいます。
一品料理の盛り込みよりも更に食事時間もかかります

やや、ほんの少しだけ強めに揚げてあるのが普通ですが
相当な難しい判断の仕事だと見ることができますね。
このように
私たちが何気なく見過ごしている中にも仕事人のたゆまざる精進が込められているのです。

お惣菜やお弁当もまるで違います。
なにしろ揚げてから食べるまで数時間を見込まなければなりません。
どれだけ時間が経ってもカリッとした食感を求められています。
もちろん油、衣の成分、そのつけ方、
揚げ油の温度も先の場合とはまるで違います。
ここでも、普通の料理人が普通のやり方でやると失敗すると言われています。

その道なりの工夫、ノウハウがあるのです。


さて今回は天丼です。
今がハシリのムギイカは身肉が薄いので柔らかな天麩羅になります。
鹿児島からソラマメが届きましたので早速使います。
鹿児島では11月からこの出荷が忙しかったそうです。
さすが、南国は早いですね!

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こうして材料を合わせてかき揚にします。
この位の強めに揚げます。

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このタイミングで温めておいた丼を上げてご飯を盛ります。
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ツユを回しかけて、
ただの天麩羅よりは幾分カリカリ気味にして上げる

その時に一気に油から抜き上げるのではなく、
こうして名残を惜しむようにしてから上げます。
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すると接点から油がスーッと抜けていくのです。

これを温めているツユに通します。

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ツユは例によってカエシ仕立ての甘くないツユです。

丼に盛り、ツユを上から少しだけ追加してやり、完成です。
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この時間にラーメンが丁度茹で上がるように合わせてやります。

本日のミニ丼
「ムギイカとソラマメのかき揚天丼」 200円 (平日昼のみ日替わりサービス)

これは別の日の天丼
「地物ホッケの天丼」        200円
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ところで天麩羅と言えば、
いったん冷凍したものをレンジで解凍加熱して美味しく食べるように出来ないか?

と少し前に思案した事があります。
各専門家に聞いて回りましたところ皆口をそろえて「不可能だ」と言いました。
こうなると天邪鬼な私は意地になります。

通販でなんとか他所と違う製品作りをしたいと研究していた頃の話です。
結果的には
完成させました。
衣の配合、油の選定、揚げ方、包装紙、加熱解凍の方法 全て特殊です。
当時は製麺所から麺を仕入れていましたので天麩羅つきのザルうどんとして
シロエビなどの天麩羅を冷凍で発送していました。

なかなか好評でしたが忙しくなるにつれ思うように手がかけられなくなり、
それに最近の自家製麺化により、麺の通販は保健所の許可の問題もあり
いよいよ断念せざるを得なくなりました。

これなどは天麩羅の話ですが
脱線して続けると通販には陽の目を観なかったものの
不可能を実現した幻の名品(?)がいくつかあります。
レンジで出来立てのカツ丼  とか
ヤキソバ専用乾麺  等など
面白いのでいつかご紹介できればと思っています。

本題に戻ります。

天麩羅はただ食べていると美味しかったね  で終わりますが
見た目では気づかない「仕事」がたっぷり入った面白い調理なのです。
ぜひ、そんな所に着目してお召し上がりください。

また板前氏にもそんな事を尋ねてみてあげてください。
皆、解ってもらいたいので喜んで話してくれるはずです。
そうするとまた一層美味しくなります。

板前氏も『気が抜けないぞ』となり
もっと美味しい仕事を心がけてくれるようになり
日本中がそんな「美味しいスパイラル」 に入ってくれれば
いいんだけどな~ とひそかに願っています。




















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