PCの調子がここ数日変だと思っていたらとうとうドック入りするはめになり、
おかげで麩の話の完結を書くのは画像が無い為、先送りになりました。

代わりに予備のノートを出してきて書いています。

今回は確認したいことがあり久しぶりにうどんを打ちました。
手打ちうどんはやはり楽しいです。

「そんな事言って、毎日中華麺を作っているではないか!?」
と言うなかれ、
それでもやっぱりうどんは楽しいんです。
何というか、
自家用ならではの無責任の気楽さ+手の感触の快感+仕込み(仕掛け)の期待
などです。

うどんの生地には特有の滑らかさがあり、触れていると癖になる楽しさがあります。
これは初めての方でもすぐに理解してもらえます。
出来上がりを期待して寝かしを行うのも中華麺と同じですが今回はあえて
変化球を試しますのでいっそうの期待でソワソワするほどです。

この「手中から生まれ出ずる美味の面白さ」
  という素晴らしい事をできるだけ多くの人に伝えたいものです。
  民族の遺産とも呼べるものではないでしょうか?
昔から小麦生産の盛んな地域では
「上手にうどんを打てないと嫁に行けない」 などとされたくらいだそうです。

さて、今回打ったのはこちらの2種。
栃木県佐野に伝わる耳うどん と 群馬県桐生のひもかわうどんです。
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スーパーに並んでいるパック入りが普通になってしまった今
これを見ると不味そうに見えるかも知れませんね。

耳うどんはすすり甲斐が無さそうだし、ひもかわうどんは薄すぎて口当たりが悪そうに映ることでしょう。
今回私が実証したかった事の第一はそこなんです。

1、うどんで麺の変化をどの程度加えられるのか?
  また、それによって変化を起こす水分勾配によるコシの経緯の検証。

すみません、つい持って回った言い方をしました。
要は麺の変化を舌で確かめる ってだけです。

耳うどんは薄く延ばした生地をマッチ箱程度の大きさに切り分け両手でつまみ、
ぐるりと回してくっつけるだけのものです。
茹で時間はその同じ厚みのうどんと同じ。

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もうここにいらっしゃる皆さんはお解かりでしょう。
茹で時間は厚みで決まりますから表面積は無関係です。
これは10分程度茹でて、いったん冷水で洗いぬめりを落としてから
具と一緒にダシで煮込んだものです。

郷土料理なんだそうです。
重なった部分の生地の変化がとても美味しい  
『やっぱりこれもうどんなんだな~』と食べながら思わず笑って納得してしまいます。

お次は「ひもかわうどん」です。
桐生は昔、繊維産業が盛んだったそうで食事の時間も惜しんだ女工さん達が作って食べたという経緯があるそうです。
女工哀史の話を引くまでもなくもう悲しみが伝わりそうな風情ですが、
これは想像に反して実に美味しいうどんです。

時間を惜しんだというくらいですから誠にすばやく茹で上がります。
しかし、茹で立てならではのふっくらとした食感と異様なくらいのその幅広な形体でツユの絡みが素晴らしいのです。
つまり、ダシは薄くても十分美味しく食べれたはずです。
貧しい女工さん達がそんなにおごったダシを引いていたとは思えないからです。

さて、この2種類のうどんを見て皆さんは何を思い感じますか?
実に示唆に富んでいると思うのは私だけでしょうか?

耳うどん  戦後の悪名高い「すいとん」にどこか似ていませんか?
事実それに近い「団子汁」といううどんの遠縁もいます。
しかし、これは違います。
それどころか「ハレ」の料理なんです。

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年末に作り正月三が日に食べることで魔除けにする  そうなんです。
つまり、
うどんを悪魔の耳に見立て家庭の話を悪魔に聞かれないから無病息災に過ごせる
or
悪口が聞こえないようにして近所との交際を円滑にする
などの説にもとずくものです。
ですから
正月料理につきもののかまぼこや伊達巻などの豪華な具材と一緒に煮込んで仕上げます。

はい、
ここで誰しも疑問に思う点に触れましょう。

不思議な事に  すすれない  不満は全く感じません。
煮込みという一点に主原因があるのでしょう。
熱すぎるうどんはどのみち盛大にはすすれませんからね。
でも、その短所を十分補ってくれる長所があります。

食べ飽きが来ないのです。
ふっくら、もっちり、重なった部分はしっこり、と

熱々をハフハフ などと食べていると
             これは、うどんなんです。やっぱり。
断じてすいとんではありません!
これは手打ち、多加水だからこそなんです!
コシ があるからこそ  なんだとしっかり確認できました。

さて、ひもかわうどん  
幅広といえば全国には様々なタイプがありますがこれほどの極端なものはないのでは?
それがこんなに美味しいとは素直に驚きました!


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実食に勝る想像無し

食べて見なくちゃ解りません
とかくネットでは見た、読んだ、
「らしい」「そうだ」だけで勝手に情報が独り歩きします。
ですからこれを読んで頭から信用もしないでください。
どこかで食べる機会があってもそれはまた同一とは限らないからです。

でもこれで両方を食べてみて
もうひとつの課題もクリアできました。

2、多加水麺はなぜ腹持ちがいいのか?  を検証する。
  というものです。

皆さんは「うどんは消化がいいからすぐに腹が減る」
     「うどんは腹持ちが悪い」
と、思ったり、聞いた事はありませんか?

それは間違った印象です。

茹で玉うどん(白玉うどん と呼ぶ)では確かにそういうこともあります。
しかし、しっかり多加水、手打ちで鍛え上げたうどんは実は腹持ちが大変いいのです。

なぜか?
一般に低加水と多加水の麺を比較すると低加水麺の方が延びにくい印象を持ちがちです
が実は反対なのです。
低加水麺は水分が少ないが為、すぐに水を吸いやすい傾向があります。
多加水麺はそれより幾分吸いにくい と言うわけです。

伸びる=ふやける とまず量が多くなります。
そして、以前にお話した鉄筋コンクリートのような構造が壊れやすくなります。
すると、当然分解が早くなりますよね。
ですから、白玉うどんや低加水麺は腹持ちが悪い  となります。
白玉うどんでは『沢山食べたはずなのに??』となって一層、先のような印象を強くします。
(量の問題では無い ともうお判りですね)

ところが低加水麺のラーメンでは化学調味料や脂で腹持ちがいいように錯覚をします。
腹持ちではなく大抵の場合「もたれ」です。

では、多加水手打ちではなぜ腹持ちがいいのか?

それは手打ち麺の構造にあります。
顕微鏡で見ると小さな気泡がいっぱい見えるそうです。
打って見ると良く解りますがどうしても空気の層を巻き込んでいくから
自然にそうなります。
それがツルツルとした食感を生み、
そして打ち込むほどに強靭な「コシ」=鉄筋構造を形成するのです。
空気の層と鉄筋構造で伸びや分解は遅くなります。

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そう、低加水麺には正確な意味での「コシ」はありません。
小麦粉を練って茹で上げた状態の水分勾配をコシと錯覚しているのです。

しっかりとしたコシと多加水構造が腹持ちを良くする原因です。

なぜ、では私が多加水麺にこだわったのか?
答えは「腹持ちを良くする為」だったのです。

無添加スープで体に悪いラードを排除してラーメンを作ると実に消化が良いらしく
すぐにお腹が空く というのが欠点だったからです。
今は
やたらにお腹がふくれる  と言ってもらえます。
いずれ、きっと腹持ちも良い事にも気づいてもらえることでしょう。
しかし、それは決して
不快な「もたれ」ではありません!
幸せな満腹感の持続です。
静かに無添加が分解吸収されているのです。
きっと血糖値の上昇も幾分ゆるやかなのでは? と想像しています。

寝る間も惜しんで働いた女工哀史の主人公たちが空き腹を抱えていたなんて想像もしたくありませんね。
きっと手打ちのひもかわうどんはしっかりと腹持ちよく厳しい労働に耐える彼女達を支えてくれたに違いありません。

参考文献
旭堂出版
「うどん大全」









  























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