前回からの続き

では、麩の力を拝借して丼を作るとどういうことが起こるのかを解析していきましょう。

でも、その前に
丼が何故美味しいのか? を考えてみてください。
主にタレとご飯の関係にだけ絞ってみましょう。

うなぎには甘いタレが少量かかります。
天丼には濃くて甘くないタレが少量かかります。
このタレとその量がとても重要なんです。

今回は親子丼とその応用でいきます。
私の作る親子丼は砂糖を使いません。
割り下で仕立てます。

ずばり、ご飯に美味しいタレがかかるから丼は美味しくなるのです。

当然 ?
いえ失望するのはもう少し待ってください。

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タレがかかる事で美味しさを増すご飯(隠し技も同時に入っています)

ではタレが美味しさの決め手として、多すぎるのはどうでしょう?
少ないとどうでしょう?
各人の好みと言えばそれまでですが、量を決定するのはなかなか難しい判断が必要なのです。

多すぎるタレを嫌う人はジャバジャバした食感もさることながら
何が嫌だといってその後のご飯の「ふやけた感じ」を忌み嫌うのです。

ではご飯にかけたタレが時間によってどう変化するのでしょうか?
ここに実験してみました。

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  かけた直後、

  qby 015  qby 018  qby 021
      ↓          ↓          ↓
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    一分経過、     二分経過、   三分経過

やはり、一番美味しいのはかけた直後ですね。
一分ではさほどの変化は出ませんがやや粘りが出始めます。
二分で飯粒への浸透がみられやや「ふやけ」が出始め、
三分で「ふやけ」感は多くなり、下のほうにもタレのサラサラした感じは見受けられなくなります。

さて、こういった特徴は何も親子丼などにして見るまでもなくもっと端的に表れる代表選手がいますから
汁かけご飯界のスーパースターである
「お茶漬け」でご説明しましょう。

お茶漬けと正統派雑炊はそのサラサラとした喉越しを得ることを主目的にしている
と言い切りましょう。
これが小さな茶碗でご飯を多目に盛ったお茶漬けだったら
たちまちふやけご飯と成り果てます。
また、正統派雑炊は「サラサラ」を出す為に熱いご飯を水で洗います。

米食民族の中でも珍しいほど粘りの強いご飯を好んでいながら
いえ、それだからこそなおふやけたご飯は嫌いなのです。
粘りの鎖がばらばらに千切れてしまっている
伸びた麺類にも似た不味さだからです。

おっと磁石の針がぐるぐると回りすぎてしまいました。
元に戻しましょう。

タレが丼を美味しくも不味くもする というところからもう一度始めます。

さて、そんな難しい微妙な按配を気にしなくても良い魔法があるのです。
そうです、やっと話が繋がりました。
「麩」です。
麩を薄くスライスして加えます。
2ミリ厚だと麩の食感を感じてしまいます。
1ミリ厚だとほとんど気になりません。

それを加えると言う事はどういうことなのかを検証しました。
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この棒麩を半分にカットして、一ミリ厚にスライスしたもの二枚だけで
小匙一杯のダシをほぼ吸い取ってくれます。

ということは5~6枚も入れればもうそれだけで大匙一杯分の水分を「保水」してくれると言う事なのです。
前回の画像を思い起こしてみてください。
麩は圧力を加えるとその溜めていた水分を放出してくれましたよね?

では具体的に何が起こるのかを見るために試作してみました。

こちらです。
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(左)これはタラのフライのとじ丼です。
タラがあっさりとしていながら冬ならではの脂が乗っているため、ふうわりとした食感を楽しませてくれます。

これをはぐってみましょう。
(中)いかがでしょうか?
ほとんどタレがご飯に乗ってませんよね?
このままでは汁気の少ない不味い丼です。
こんなのをお客様にお出ししようものなら「裏切りの丼だ!」と糾弾されちゃいますね。

ところが!
食べようと箸で上から軽く押さえただけで(加圧)
(右)このように汁気が出てくるのです。

これは口中でも程よく起こります。(加圧効果)
食べ始めは丼の下どころか上にすら全く汁気が無かったにもかかわらず
食べ終りにはなんと底の方にわずかな汁気すら確認できました。

しかもその汁気には粘りがほとんど無いのです。
今、まさにタレをかけたばかりのような状態なのです。

いかがでしょうか
これが今回の種です。

でも、
本当はここまでややこしくしなくても丼はそれだけで美味しいんです。
美味しいからいったん手に取ったら普通は一度も卓に置かないで
一気に食べきって欲しいくらいなのが作る側の気持ちなんです。

せっかちな江戸っ子の「深川丼」なんかまさにその代表のようなものですね。
しかも、きちんと作れば素晴らしいご馳走にもなります。
B級だなんて言わせません!

なぜ、私が3分という時間に拘泥したのか?
それは一杯のラーメンを食べる平均的な時間だから  です。
昼のミニ丼はラーメンと組み合わせてご注文いただく以上
ラーメンをゆっくり食べてもその間ふやけないご飯の丼にしたかったからなんです。
一応の完成を見ました。
料理人が仕事を支配するにはそれぞれの味と味の総和をコントロールするのはもちろん
時間と折り合いをつける事も必要なのです。


でも、麩の力は形を変え、さらに応用が広がります。
しつこく、しぶとく追求を続けます。

丼がB級で終わるか、or 料亭に負けないくらいの意地を見せることができるのかは
すべて料理人次第だからです。


本日のタラフライの丼です。
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最後に
ここまで、これでもかとばかりご飯の画像ばかりが続きましたので
お口直しに漬物を添えて置きましょう。
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