一本の麺には のし面と切断面がありそれらが太さを構成します。
そして最も重要なのが次の「長さ」です。

この話をするためにはいささか長めの前振りを要します。

音を立てずに細長い麺を黙々とフォークで口に運ぶ欧米人は知らず
日本人は盛大にずるずると音をたててすすりこみます。

麺だけではありません。
味噌汁も音をたてます。

欧米人は絶対!音を出してスープを飲みません。

この違いはスープと味噌汁の温度の違いです。
スプーンですくってぱくりと口中に入れることの出来る温かさがスープの適温なのに対して
味噌汁はただでさえ味噌の保温性が高いのに熱々を良しとしますからとてもそのままグビリとは飲めない高温なのです。

直接唇を触れただけでヤケドをするくらい熱いのですからそのままではとても飲めません。
そこで空気と一緒に吸い込む事で急激に温度を下げているというわけです。
今ここで何度から何度に下がりますとは明記できませんが何かの文献では驚くほどの温度差でした。

よくスープの冷めない距離で暮す  などという言葉が誤解されていますが
そこの所を考慮するとまた違う微妙なニュアンスが見えてきたりしますね。

さて、この高温か微妙なぬるさか というのはお茶でも当てはまります。
高温で淹れるほうじ茶なら音を立ててでもすすらないととても飲めません。
ですから落語家の演じているお茶のすする擬音はほうじ茶なのかな? と
推測できたりします。

ぬるめのお湯で淹れる煎茶や玉露ではすすらなくともそのままグビリと飲めるからです。

コーヒー、紅茶も日本人は概して熱すぎの湯で淹れる傾向があるようです。
そうして考えればいつかアメリカのファストフード店で
『コーヒーが熱すぎてヤケドをしたのはそのコーヒーが熱すぎたからだ』
との訴訟に対してこれを認める判決が出たことがあり、
それを多くの日本人がやはり訴訟大国アメリカはどこか変だぞ  と感じた事も
その点を考慮すれば微妙なニュアンスの違いがあることを解るはずです。

ことほど左様に温度というのは決定的に生活に根付いていて、
そこから習慣の違いや食生活の違いまで起こしています。

さて、長い前振りですみませんでした。
熱いラーメンやうどんはすすらないと食べれたものではありません。
逆な言い方をすればすすれないラーメンは美味しくないとも言えます。

美味しく感じる麺には太さと同時に適度な長さが求められているのです。

以前、製麺所さんから仕入れた最初の頃

-普通は一玉何グラムと注文しますから-
-切り歯の総幅が決まっているので自然に長さも決まってくるのですが、-

厚さを取って太くした分長さが10数センチしかなかった頃がありました。
これは美味しくありませんでした。
すする喜びが半分だったのです。
長さは味に響きます。

すぐに改良しましたがやはり機械打ちの麺は不自由なものだと感じた次第です。

今はどれだけでも長く出来ますがやはり過ぎたるはなんとやら おのずと適度なサイズは決まってきます。
長すぎれば今度は重くなり、すすりづらくなります。
快適にすすれないと美味しくは感じられないのです。

さて、TVなどでラーメンを食べている場面を見ると無性に食欲をそそられませんか?
その原因もこのすする音に主原因があります。
もちろん撮るのも編集するのも放映するのもプロの技があってこそです。
ですがこの音!
すする習慣のない外国人はいざ知らず日本人にはたまらない音です。
名人の落語家はこれだけで生唾を出させます。

gsさんは先日
>官能的快感
と麺を評してくださいました。
いい得て妙とはこの事ですね。
確かな味覚と言葉の的確さにはいつもながら驚かされます。

一説にはこのすする行為は幼児期の記憶に由来する快感だと言います。

唇をこする、通過する刺激が母乳を吸っていた頃の記憶にだぶるのではないか というものです。
おしゃぶりや指を吸う行為とも関連します。
擦過感と言うそうです。

ですから麺にはすすって心地よい不ぞろい感を持たすため
手もみにします。
擦過感をより刺激するように。

いわゆる機械製造による「ちぢれ」には無い太さの違いが生まれるのです。
機械によるちぢれにはこれはできません。
ウエーブはかかりますが太さは変わらないのです。

一本の道路に例えてみると良く解ります。
ウエーブ麺はカ-ブの連続する道路。
ちぢれ麺は路幅の激しく変化している道路と言えます。

麺の太さが適度に変化していることによって茹で具合が微妙に違ってきます。
その事が食感の変化をもたらしいつまでも食べ続けていたい欲求を刺激するのです。
食べ飽きないのですね。

適度な太さに続いて
すすって美味しい、心地よいラーメンにするためには
適度な長さと、太さの違うちぢれの入った麺が必要だったのです。

とはいえ、例え9千9百9十9里までできたとしても100点の無い世界です。
評価を下すのはあくまでもお客様。

私はただひたすら自問自答を繰り返すのみです。
つるつるとすすれば一息で口中に入ってしまう一本の麺 
たかがラーメンです。

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ですがその一本の中には折りたたまれた生地の他にも色んなものを一緒に込めて
打っています。

さあ!もうすぐ新年が来ます。
新しい年にはさらに美味しくなりますよう精魂こめて麺を作ります。
前回お出でになった時とは更に美味しさがアップしているはずです。
麺には果てしない仕事があるからです。

年末の正月迎えの用意をしながら決心を新たにして今年の終りとさせていただきます。

今年も沢山ご来訪いただき誠にありがとうございました。
来年もよろしくお願い申し上げます。

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P.S.
今年の年賀状は投函が遅れましたので遅く届きます
先にお詫びしておきます。














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