小麦粉を水で練り、固まりにしてそれを水中でもみもみすると
表面が溶けて流れ落ちていきます。
それをずっと続けると最後に残るのがグルテンです。

溶けて流れ落ちたものを再び乾燥して粉として取り出すと「浮粉」(うきこ)
海老ギョウザなどでご覧になった事もおありでしょう?
薄く伸ばしてきれいなヒダをつけて蒸すと中身が透けて見える あの粉です。
グルテンを含まない軽い味わいが身上です。

この、加熱で透き通る性質と聞いてピンと来た人は料理通です。
この正体がでんぷん質です。

では残ったグルテンは? というとたんぱく質なのです。
麺にはこの両方の力が形成するコシ、粘り、弾力が必要なのです。

たんぱく質はグルテンの網目構造を作りコシや麺の硬さを形成し、
でんぷんは粘り強さや滑らかさを出します。

さて、私たちが普段耳にする麺作りにはどんな手法があるでしょうか?

手延べ--生地をたらいに詰め込み包丁でらせん状に切り出し細く伸ばし
     木枠にかけてひっぱり伸ばして乾燥させる手法(大門そうめん、氷見うどんなど)
手打ちうどん
   --中力粉を塩水で練り、足踏みで伸ばして包丁で切る(讃岐うどん など)

あとは中国料理の刀削麺や手で引っ張り伸ばして打ち付ける手法などもありますが
麺のコシや粘りなどの相違からここでは記しません。

その他一般的には製麺所さんが採用している機械製造の麺となります。

今回私が採ったのは正確には「手打ち式」と呼ばれるものです。
あまりに強力な生地の為に手では伸ばせないのです。
打つまでは人力で行い、後の工程は機械を導入しています。
讃岐うどんなどが純手打ちと称されるのに比し「手打ち式」となります。

純手打ちで中華麺を作る地域もありますが、麺の硬さなどの点で
富山ではなじみ難いかと思われます。


さて、先日書きましたように多加水です。
それで手打ち式で作るには訳があります。

その前に小麦粉をこねあげて麺の固まりがここにあるとイメージしてみてください。
その中はどうなっているのでしょうか?
よく例えられるのが鉄筋コンクリートです。
白いコンクリートがでんぷん。
中のしっかりとした骨組み構造がグルテン というわけです。

でもこれだけで終りではありません、ここからが仕事の始まりです。
これを伸ばします。
すでにかなり強情になっていますから素直には伸びてはくれません。

そこで佐野式の出番です。
今は衛生面を考慮して鉄パイプを採用していますが、強度も考えるとやはり竹に行き着きそうです。
栃木県佐野市ではこれを「青竹打ち」と呼びます。
テコの原理を応用して強力な力を得る手法です。

qbg 001 qbg 003 qbg 008


これで体重をかけると手ではびくともしなかった麺体がいとも簡単にのせます。
こうして圧延をしたら畳み、角度を変えてまた繰り返します。

先ほどの鉄筋コンクリートを思い返してみてください。
丸い固まりを平らに押し伸ばして金網状態にしたものをもう一度折りたたみ、
また伸ばす。
そうすると中の構造はどうなっていくでしょうか?

つまり、これが手打ちの理由。
グルテン=コシの多層構造の構築です。
パンで言えばクロワッサン。
菓子で言えばパイ。

ここから更に数度折り畳み鍛えます

しまいには全体重を掛けてもパイプは下には降りてくれないほどの硬さにまで鍛えられます。
そうして伸ばし、カットします。

すると一本の麺の中にこの多重構築された層が全て収まっているのです。
それが口の中で噛み切られるときに独特の歯応え、食感をもたらします。

何本もの繊維を断ち切るようでいて
柔らかな つき立ての餅を噛む様な
優しいようでいて、しかしとても強情な麺です。

これを作り上げるのに多加水、手打ち式が最適だったのです。
美味しい麺に仕上がりました。

噛み始めはふうわりと歯が入ります
噛むとやんわりと押し返すような弾力があり
それはどんどん強くなり
やがてぷっつりと切れます。

その時の感触がブルンと口中ではねかえるような未経験の食感なのです。
もっちりとして
つるつるとして
ふわふわ
しこしこ
そしてぷるぷるの麺になりました。
手打ちでこれだけの太麺はちょっと他には見れません。

その極太麺と絡むのが強烈な黒いスープです。
いかがでしょうか?

はやくも病み付きになった方が沢山いらっしゃいます。

ありがとうございます。
苦労も報われると言うものです。

こうして書くと
『なんだ 良いことばかり言ってるじゃないか』と思われるかも知れません。
実は欠点もあります。
大量生産に向いてないのです。
多加水手打ち式の手もみ仕上げは だから製麺所ではあまりやりたがりません。

製麺所などの機械製造麺は現在低加水麺が大流行中です。
これは短時間で大量に製造できるからです。
しかし、今述べたような鍛えたコシを形成しにくいという欠点があります。
そこでグルテンや各種添加剤を加えます。

私はできるだけ余計なものを加えない原点回帰を指向していますから
手打ちに行き着くのもごく自然な結果だったと言えます。


次回は太さについて書きましょう。
太さには明確な意味があるのです。







スポンサーサイト
Secret

TrackBackURL
→http://oisiitoyama.blog96.fc2.com/tb.php/581-b28d8803