私は能登育ちで、能登には大河が無く
それで川魚というものに全く無縁で過ごして来ました。

鮎やイワナはもちろん川に遡上した鮭の味に触れる事もなかったのです。

富山に来てそれらを少しづつ知り始めてはきましたが
川獲りの鮭は脂が落ちて美味しくないという風説を疑うことも無く
しかし、新潟県の村上の鮭の美味しさを聞くとなにやら
腑に落ちないような気持ちで過ごしておりました。

村上の川獲り鮭には数え切れないほどの調理法がありますが、
酒好きの私が一番気になるのが「酒びたし」というものです。
三枚におろした鮭に塩を当て干しただけのものです。

それを薄くそぎ切りにしたものを酒に漬けて柔らかく戻して
食べるというものです。

ところで
この話を続けるに当たって要点を先に挙げておきましょうか。
魚の脂です。

脂の乗った魚は確かに美味しいですよね。
魚の脂には体喜ぶ栄養やビタミンがいっぱい含まれています。

でも現代では舌が喜ぶ脂が、やや過剰気味なのが現実で
寿司の盛り合わせなどでは養殖の「とろサーモン」を
必ず混ぜないと客が納得してくれないとまで言われます。

ノルウェー産の塩サバや輸入の大判アジの開きなどを
食べ慣れてしまった世代にはもはや国産の塩干モノが
売れなくなってしまったそうです。

ノルウェー産サバは「大西洋サバ」という品種で日本近海で
獲れるサバとは別物です。
近海サバは「真サバ」と「ゴマサバ」の二種類

普通に食べているとどちらもサバだと思いますが
両方を同時に食べ比べると明らかな違いがあります。

真サバは肉の味がしっかりとしているのに比べ
ゴマサバは脂の味しかしないと言ってもいいくらいの差異が
あります。
ゴマサバは脂たっぷりだからです。

人間の味覚というのはそれ程に視覚に影響を受けていて
見た目が同じようなサバなら無条件に味も同じだと錯覚してしまうんですね。

ノルウェーサバがこのゴマサバに近い味なのです。
最近では日本近海でも真サバの漁獲量が少なくなり
サバの開きでもゴマサバが使われるようになってきました。

問屋さんが申し訳なさそうに「ゴマなんだけど・・」
と言うのに答えて
「いやいや、脂がある分若い人にも受けるんじゃないの?」
と妙なエールを送る始末です。

大人気のノルウェー産サバの悪口を言うつもりは毛頭ありません。
たまには私も食べますから。

昔、母が弁当のおかずにサバの開きを新聞紙で包んで
持たせてくれました。
それを思い出したら無性に食べたくなり、
どこかに無いかと探しても無かったのです。

結局、その頃はどこに売ってなくて自作しました。
なに、ノルウェーサバを乾しただけなんですけどね。

どうなったと思います?
見事に真っ黄色になりました。   

そう、脂が酸化しているんですね。

サバやマグロなどの脂の乗ったものはマイナス60度まで
冷える冷凍庫で無いとどんどん劣化してしまうそうです。

これは干したから酸化していることが判ったのですが
普通に焼いて食べていたら恐らく解らなかったんじゃないかと
思われます。

鮎の先生のYさんが川獲りの鮭を荒巻に加工してプレゼント
してくれます。

これが何とも言えない枯淡の味わいといったしみじみ旨い
鮭なのです。

川獲りは美味しくないと聞いていた と正直に申し上げたところ
本来荒巻はこうした脂の落ちたもので作った物なんだ  と
それが最近は誰しも「脂  脂  脂」とばかり言うものだから
荒巻も脂の乗った物に代わりつつある。

脂が落ちているからこそ保存性も上がるんだ  との事。

目から鱗  とはこの事です。
料理の世界の言葉で置き換えるのならつまり「引き算」
という事なんですね。

脂を落として旨みを凝縮させる
日本人が昔から苦労して編み出した本当の美味しさの
代表が本枯れかつお節。

あれもいかに効率よく素早く脂を分解させるかという事で
カビ付けという手法が摂られています。

田舎の母が毎年作っていた宗田ガツオの亀節は
出来上がったばかりの頃はダシに脂が浮きますが
長い間乾したものには浮かなくなります。

カビ付け工程はその期間を短縮させて確実に脂を抜く
効果があったのでしょう。

脂の乗った食材は確かに美味しいのですが
とかく本質の味を見失いがちになります。

ハンバーグをカットして脂がどっと流れ出すと
「ワーッ美味しそう♪」と歓声挙げて一口頬張り
「とってもジューシー」とやってるのを見ると

単に脂を喜んでいるようにしか見えません。

素材から脂を抜き、味を凝縮させることで
奥に秘めている本当の力強い味を引き出す。
そんな先人の知恵に敬意を表し精進し続けたいものです。

寒ざらし(仮名)は梅雨を越して熟成すると言われます。
晴れの日には包丁も立たないくらいに硬くカチカチになり
雨の日にはしんなりと戻りと冬から夏を迎え

雨の日に下ろしてきました。
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この日は鮭の寒ざらしを細かくカットして炊き込みご飯に。
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漬けて置いた酒と塩、それに昆布と醤油を少々。
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たったそれだけでビックリするほど美味しいご飯になってくれました。
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村上では鮭をもはや鮭とも呼ばずイヨと呼ぶそうです。
魚の中の魚と言うほどの意味でしょうか。
確かに鮭にはその称号に値する純粋な旨みがありました。

川や川魚と無縁で育ってきた私ですが
渓流釣りを手ほどきしてくれたMさんや
豊富な知識で川魚のイロハをご教示してくれるTさんG氏
鮎や鮭の事を教えてくれるYさん
得難い友人や先生との有り難い交友を通じて勉強の日々

感謝とともに川巡りの旅はまだまだ続くのです。








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