蕎麦にはコシはありませんと書きましたが、
数ある乾麺の中にはコシのある蕎麦もあります。

でも
よく見かけるなま蕎麦の「手打ち」には確かにありません。
加水をして一気に練り上げるものは一体構造になっているからです。

乾麺でざるそばにして美味しい物というのは意外に
数少ないのですが、コシのある乾麺蕎麦というのは
ほとんど知りません。

私の知ってる中では富山県 五箇山の利賀手延べ蕎麦が唯一それです。
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きっと他にも沢山あるでしょうが、
もし新たに出会ったらおいおいご紹介いたしましょう。

今回は利賀です。
その前に手打ちと手延べの違いをご存知でしょうか?
簡単に復習しておきましょう。

手打ちは店頭などでも見ることができます。
こね鉢と呼ばれる木鉢で蕎麦を練って麺台で伸ばし
包丁で切るものです。

うどんでもよく似た作り方をしますが、
うどんは麺体を足で踏み折り畳んでは踏むという
工程で多層構造を作り、寝かしでコシを強めるという
作業があります。

蕎麦はすぐ伸ばすから多層構造が出来ないのです。
手打ちというカテゴリーでは蕎麦もうどんも同じですが
麺体の中は全く異質な物であるとお解りいただけますでしょうか?

ところが手延べは更に次元が違います。

そうめんでご説明しましょう。

小麦粉を塩水と油で練り桶に入れて寝かします。
包丁で渦巻のように切り目を入れ油を手に付けて
ひねりながら伸ばします。
それを何度か繰り返しある程度細くなったところで桟にかけて
更に寝かしてから引っ張り伸ばして最後は干して完成となるのです。

ですからこれは店頭で行われるようなものではありません。
気候や気温で微妙に影響されます。

富山県にはこれの有名な大門そうめん(おおかど)がありますが、
気温と風を読むのが難しいと言います。

讃岐うどんの釜前でも出てきましたね
この「読む」ことが難しいのはどこでも同じです。

農業の話ですが
ある人が天候不順で作物の出来が悪かったと気候を言い訳に
したそうです。
すると名人が
「そんなことは織り込んでおかないあんたが未熟なんだ」と
斬り捨てたというのです。

もっともその名人ですらがあらゆる事を想定しているにも
かかわらず予想外の事が起る   と言います。
「だから農業は面白い」とは名人ならではの言ですが

まだ見ぬ先を読むのがいかに難しいか
という話です。

話を戻しましょう。
ビックコミックの「そばもん」にこの手延べの事が今週号に
詳しく載っていたので引用させていただきましょう。

手延べそうめんは伸ばすときに植物油を手に付けて伸ばします。
生地にも伸ばす時にも油が入るのでこれを油入り法と呼びます。
いっぽう油の入らない油不入り法では米粉を使用し、その分
そうめんほど細く伸ばせないためやや太めに出来上がる
ものが「ひやむぎ」
もっと太い仕上げにしたものを「手延べうどん」
(引用ここまで)

これらはひねりながら伸ばす時に構造的に
また適度に時間をかけて乾燥させることで寝かし効果を
与えてコシが生まれるのです。

ですから仕込み時期は主に冬です。
夏の暑い空気の中では過乾燥ぎみとなるのでしょう。

では利賀の手延べ蕎麦ではどうでしょうか?
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小麦粉がそば粉より先に書いてあります。
これはそば粉より小麦粉のほうが多いという意味です。

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実際に食べてみましょう。
不思議な食感です。
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蕎麦のザラリとした舌触りは全く無くつるりとしています。
でも、美味しい蕎麦ですhb75.jpg


正確に言うならばそうめんのように作られた蕎麦だから
そうめんに近いのも無理ありませんがこれはこれで
独特の食べ心地というしかありません。

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村の9割以上を森林が占める厳しい環境の中で古来から
受け継がれて来たことを踏まえるとこれはかつて
製粉技術がまだ日本全体で未熟だった頃

私も子供のころ食べたあの蕎麦殻の混入したザラザラで
チクチクした恐ろしく不味い蕎麦をどうにかして美味しく
食べよう、子供にも美味しく食べさせたいと
願ったであろう結果なのでしょうね。

新潟では「へぎそば」がそうでした。
滑らかな食べ心地を得るためでしょう。
「ふのり」を混ぜて作られていました。

利賀手延べ蕎麦を冷たいまま食べると
まったくそうめんと同じような食感です。
もちろんこれはこれでつるりとして美味しく食べられます。

今度は温かい「かしわ蕎麦」にしてみました。
ダシにカエシを入れ関東風の仕立てにします。
ネギと下味をつけた鶏肉を煮たてて
茹でた蕎麦に掛けます。
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これにははっきりとコシを感じます。
細いのですがムニムニとした他の乾麺蕎麦には無い
明確なコシが感じられるのです。
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これは温かい仕立てにした方がよりはっきりと
美味しさが伝わりますね。

蕎麦というよりむしろそうめんだろ?
という突っ込みも聞こえるような気もしますが
古来から蕎麦をいかに美味しく食べるかと
連綿と受け継がれてきた事を考えるとやはりこれは
美味しいお蕎麦でしたと言わざるを得ません。

コシを堪能できる珍しい蕎麦です。
さすが手延べの奥深い技
美味しくいただけました。
ご馳走様でした。






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