2015.07.15 ワラビの話
ワラビは昔から日本人にとってあまりに身近な存在であったために
意外に知らないことがあったりします。

それは何も山菜採り経験の無い都市居住者に限りません。
なまじ山菜に身近で係わってきた方々の誤解の方が根深い
場合だってあるのです。

”ワラビには発がん物質が含まれている!”
というショッキングなニュースが流れたのは確か高校生の頃

しかも誰もが好む柔らかい先端部に多く含まれる
というのです。
子供の頃からさんざん食べてきました。
とくに先端の柔らかな部分は大好物でしたから
衝撃でした。

でも、その頃と言うのはそういう”新事実”が発見され公表され
世間があっと驚くことの連続だったのです。
化学的な根拠をもって語られるとそれが絶対的な意味を
持つかのように流布され始めた一時期。

ともいえます。
化学的にみるとキノコには栄養なんてこれっぽっちも無い
とか
動物性油脂はだめだが植物性油脂は体に良い
だからご飯やみそ汁にまで掛けて食べるのがよろしい
などとTVなどで流れたものです。

もっともすぐに更に新しい”新事実”が発見されて上書きされて
いくのですが、
それがヒトの営み、世の常というものだと思えば笑って済ませられますね。

今ではキノコには抗癌作用があるから健康食品だ
とか
油は植物性であっても摂り過ぎは良くない
と変化をしていますね。

ワラビの発がん物質もあく抜きして水に漬けて置く間に無くなってしまう
水溶性のものなので心配は無用なのだ
と上書きされました。

だから動物には食べられない山菜なのです。

山ブドウを食べるサルが新芽を採らないのは天ぷらを
作れないからだ  と冗談を飛ばしている私ですが

野生動物にはワラビのあく抜きする手段がないのです。

ワラビの毒性 (動物にとってと言う意味であえてこう書きましょう)
が発見されたのは牛が誤食して死んだ事がきっかけだったそうです。

野生をすっかり忘れた家畜はごくまれに食べてしまう事があるそうです。

私もしっかりあく抜きをして長々と水に流して食べています。
念のため先端部は全てカットしています。
昆布締めなどで販売もしますからこれは当然の仕込みと思います。
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ところが、
お客様でロシアの方がいらっしゃいまして
自動車部品輸出業の社長さんなんですが

この方がワラビが好物なのだと聞いていましたので
その処理済みのワラビを進呈したところ大いに怪訝なお顔をされるのです。
『これ本当にワラビ?』とまで言われました。
ロシア産ワラビは日本に大量に輸入されている位ですから
そんな事ぐらいは知っているはずだと思っていたので意外でした。

「知識と知恵」
という言葉が頭に明滅しました。

山で私よりはるかに高齢のおじさんと山菜の話で盛り上がった時の事

高齢者は知恵の塊ですから積極的にお話を伺う事にしている
のですが妙な事を言うのです。
「アザミの新芽と萌え出たばかりのワラビを味噌汁にすると旨い」
「ワラビを数本だけなら他が吸収するからあく抜きは不要だ」  と

ウソだろ?
と思い実践してみたところ苦くて食べられませんでした。

よく似た話にこういうのがあります。
ワラビの天ぷらです。
「油で揚げるんだからあく抜きなんか不要だ」
というものです。

知人が試してみたところやはり苦くて食べられなかったそうです。

天ぷらは私も他のものと混ぜてかき揚げにしますが
必ずあく抜きをしたもので作ります。
水に漬けておいたものでも油はねせず香りは弱くとも
ねっとりとした食感が美味しさを加味してくれます。

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この様にあく抜きせずに食べ続けていても平気に長生きする
人たちが実際に存在しているという事は「毒性」としては
それ程強くはないとも言えるかも知れませんが

普通の人は絶対にやってはいけません。
繰り返しになりますが牛が死ぬほどの発がん物質なのです。
人間にしか出来ないあく抜きを必ず行って食べるべきです。

ワラビ山ではウサギが沢山生息していて貯めフンがそこらにあります。
盛んに萌え出るワラビも一回はかじってみるようです。
たまにウサギのかじり跡のついたのがあるから微笑ましいのですが

おそらく経験不足の若いウサギなのでしょう。
こうして 『あ、これは苦くて美味しくないんだ』
知識を積んで成長していくのですね。

人間にはこのあくを抜くという知恵があるから体に良い
という部分だけを取り込むことが出来るようになったのです。

でもこのせっかくの自然の賜りものを薬品漬けにして
”港の山菜”にしてしまったのは悪知恵としか言えませんね。


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