abh 060

樽の下に残っていた最後の糠漬け沢庵が一番美味しかったので
おにぎりを作りました。

日本人にとっての白ご飯の価値とか意義など
様々なことがしみじみとした美味しさとなって
飲み込まれていきました。

こうした白ご飯だけのおにぎりは久しぶりに食べましたが
これを食べるといつもタイムスリップするように
思い出す景色があります。

人それぞれに食べ物にまつわる思い出深い景色は色々ある
でしょうが、私にとっての景色とは郷里の夏祭りです。



昼夜を重いキリコを担いで二日目の深夜、
神輿を宮納めする間に長い休憩があり
その時に各町内でおにぎりの炊き出しがあるのです。

それが塩おにぎりと沢庵です。

もちろん沢山の(40強)町内の財政事情は全て異なり
食べ盛りの私達は裕福な町内なども回って海苔おにぎりや
ふりかけおにぎり、昆布おにぎり
その他のおかずの添えてあるものなども食べますが、

不思議なことに最後はやはりこの塩おにぎりが一番美味しいのですね。

激しく体力を消耗した時に純粋なたんぱく質を体が欲するのでしょうか?
その時に本来 米が持っていた米ぬかを移した糠漬けが一番マッチ
したのだろうと思われます。

糠漬けを食べる→米を求める→糠漬けを求める→
と繰り返し普通なら到底食べきれないほどのおにぎりを
食べつくすのです。

祭りならずとも
昔は重いものは何でも数を頼んで皆で担ぎました。
家の立ち上げ、農業、漁業、土木作業は言うに及ばず
家庭でも・・・

北島三郎さんの「祭り」の歌詞では

”男は祭りをかついで生きてきた”
とありますが

皆でまつろう時には重いものを共に分かち合うという
ムラの生活がその根底にあります。

良い事も良くないことも皆でまつろい、分かち合うムラでは
まつろわぬ者は仲間はずれになるのも当然です。

子供の頃の私ですらそのご褒美として
この握り飯がもらえたのです。

白ご飯と糠漬け
これを食べると日本人は米と共に生きてきたんだなと
改めて思い知らされます。

そうそう
この糠漬けは着色料を入れないのにこんな薄黄色をしています。
それは大根に理由があります。
練馬系の大根なんです。

流行の青首大根はずんぐりとしていて太く短いのですが
練馬大根系は細長いのが見た目の特徴。
そのかわり引き抜くのが苦労するといって生産者に嫌われたそうです。

練馬系は糠漬けに最適品種でその薄黄色が美味しさの目印に
なったため糠漬け沢庵の素には以来着色料が入るようになりました。

今ではなかなかお目にかかれなくなってしまった練馬系ですが
中村さんというこだわりの人がいまして、
これが沢庵には一番美味しいからと言って作り続けてらっしゃいます。

ですから収穫後までそのこだわりは続いていて、
その村で一番風の通る場所をわざわざ借り上げます。

そうしてハザ木を斜めに組んで大根を乾すのです。
普通は稲などでも垂直にハザ木を組みますが
秋のその時期は雨が多いので
日光や風は万遍なく当たるが雨は当たりにくいという
理想的な環境をあつらえてやる。

というわけです。

でも知らない人はやたら細長い干し大根を貧弱だと言って
買いません。

本物が解ってもらえない嫌な時代です。

せめて当店に来店されるお客様にだけはお出ししたいと
毎年少しづつでも漬けています。
美味しいご飯はそれだけで甘いのです。
無添加の糠漬けはたったそれだけでご飯のお供として
完結しています。

本物の美味しさと、それを作り続けてくれる方々に感謝です。
 





スポンサーサイト
Secret

TrackBackURL
→http://oisiitoyama.blog96.fc2.com/tb.php/1021-6e379694