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蕎麦の種物、「花巻」に着想を得た
当店の人気メニュー「土佐丸」は
ラーメン、チヤーシューメンでのトッピングです。
それぞれ完成した丼の上にかつお節と海苔が乗ります。
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でも
それをありきたりの物で行っても面白くもなんともありません。
どちらも国内最高レベルの物を乗せるから深い香り、コク深い旨み
とが陶然とさせてくれるのです。

かつお節は本枯れ節。

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カビ付けを何度も繰り返し余計な脂を飛ばした節を薄く削った
本花はそれだけで純然たる旨みの塊です。
生臭みなど皆無。

でもやはり主役は海苔です。

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”ほどける海苔”になってもらいたいのでそのような海苔を
選択するのは当然ですが、ではどうしてそうなるのか?
と言うと。

海苔養殖の方法は手早く出来るのが潮の干満差を利用した
やり方で、これはほどけない硬めの仕上がり。

もうひとつは常時海中に浸かる方法。
これは昔ながらの方法で時間はかかるものの柔らかな
仕上がり。

あと、山菜でも野菜でも同じですが出始めの柔らかな
小さな原藻を採取して海苔に仕上げたもの。
つまりそんな初摘み一番海苔だからなのです。

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ですから
かつてはこの新海苔の出る一時期しかお出しできませんでした。
今はこの時期に一年j分を確保してようやく年中出せるように
なりました。

でもかつお節や海苔の一級品をこれだけ入れると
普通のラーメンじゃこれに負けてしまいます。
ほら
昔ながらのあっさりしたラーメンではほんの小さな一枚でも
十分香るじゃないですか。

つまり
強いダシ、濃いタレ、旨みの強い肉、それらを中和させる
十分な量のネギ、そしてがっしりとまとめてくれる手打ち太麺
があるからこそのこのトッピングが活きてくるんです。

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トータルバランスの取れた一杯と海苔とかつお節。
これが花巻を超えた土佐丸です。

ちなみに由緒正しき花巻が現在何故すたれたのかと考察しました。
花巻が産まれた江戸時代はとても火事が多く、屋内で火を使う
飲食店には厳しかったと言います。

それで一般的には屋台で商ったそうです。
夜啼き蕎麦というものですね。

客の眼前で海苔をパラリ、「はいどうぞ」というものです。
そりゃ海苔の香りもしますよね。

でも現在ではほとんどが店舗です。
加えて海苔もかつてほど珍しくもありません。
丼にパラリとやって、客前に着くころにはもう香りなんてゼロ。

実は私もそんなモノをお店で食べたことがあります。

ですから私はお寿司屋さんでも仕入れるのを躊躇するほどの
高級海苔を一枚丸ごと乗せて
しかも香りのカプセルを一個たりとも無駄にしないように
お客様のもとへお運びするんです。

中央の切込みから箸を入れ、麺を引っ張り出すときに
海苔にスープが掛かります。
海苔は乾燥している時には香りません。

湿りが与えられたその瞬間バァーッと立ち上り
丼の上にある顔を直撃するのです。

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誕生してから10年以上経って今なお人気メニューです。
まだこの味をご存じない方に是非ご賞味いただきたい
自信作です。




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先日「福籠」さんへ蕎麦を食べに行った時、専門誌に
「花巻」のことが出ていたので引用しつつ書いてみます。

蕎麦にはざるそばなどの他に天ぷらそばなどの種蕎麦のジャンル
がありますがその中で一番古いのが長崎の「しっぽく」で
これは中国料理の影響を受けたもの。

しっぽくに次いで古いのが花巻なのだそうです。

暖かい蕎麦にアサクサノリをパリッと焼いてもみ散らしただけの
見た目は変哲の無いものですが、これが
蕎麦を単なる食べ物から粋な町人文化へと昇華させた
と書かれています。
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当時貴重だった海苔を湿気らせずに大切に食べたのを
こともあろうに汁そばの中に投入する
それだけで驚きだったであろう事が想像できますが
たちまち立ち上る磯の香が粋な江戸っ子を夢中にさせたのでしょう。
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「花巻」という名称は
海苔を磯の花、波の花に見たてた  というのが現代の通説ですが
江戸の粋は当世の綺麗ごとじゃすみません。

こんな狂歌が残っているそうです
「夜桜をみにくる人に売らんとて花巻そばのにほふゆふぐれ」

これはどこにでもある桜ではなく吉原の廓内
目抜き通りの仲の町の桜だというのです。

そこへ出没する屋台の蕎麦が花巻の香りを漂わせて
人を引き付けていたという風景なのです。
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当時の花魁は客を選び(値踏みして)嫌な客は平気で断ったと
言います。
現在広く言われているような
”苦界に沈めて奴隷のような待遇”というものじゃなかったそうです。

野暮で無粋な人が嫌われるのは何時でも同じ
粋を競う江戸っ子が花巻蕎麦を得意がって食べたのでしょうね。
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ちなみに「花巻」は花魁の名前からとったという説まであります。
なかなか江戸の町人文化も奥深いですね。

そうそう
この花巻にネギは合わないとあります。
せっかくの海苔の香りを損なうからだそうで
ワサビなのだそうです。
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当店の「土佐丸」ではスープがとても強いのでネギが必須です。
丼の中のすべてのアイテムが混ざり合って
総和(トータルバランス)を奏でます。

次回は土佐丸の話になります。





秋にはサンマをモチーフにしたラーメンがよく
見受けられます。
私もサンマは大好物なので参加させていただきましょう。

サンマは三枚におろして出来るだけ小骨を取ります。
下味をつけスパイスを混ぜた衣をつけて揚げます。
これが今回のネタの排骨となります。

これに合わせるスープは清湯ベース。
ポモドーロソースを作り、裏ごし器で漉し、トマトスープに
仕立てます。

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ここに細麺を入れて

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鶏肉のひき肉の具を敷き

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その上にさんまの排骨を乗せ
ギンナン、ムカゴ、パンダ豆などをあしらって完成。
晩秋の排骨麺と致します。

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トマトソースとさんまの脂はとても相性が良く
さっぱりとした味ながらも食べ応えのある一杯になりました。

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なお、当店の排骨麺には隠し味でカレー風味が入ります。
今回はさんまにAスパイスとターメリック。
鶏ひき肉にはBスパイスと分けて使用し、丼の中で総和を
形成するように仕立てました。

それぞれの単体での味を、
そしてまた、MIXした味をお楽しみください。
トータルバランスを考慮しています。

別皿には自家ハーブ類を合わせた柚子胡椒ならぬ
ハーブコショウを用意しました。
ポモドーロソースに入っているハーブ類と同じですからマッチングも
OKです。(小辛)
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期間限定「さんまの排骨麺」  ポモドーロソース仕立て
土日祝を除く平日のみ、 昼夜OK  950円
麵の追加一玉  200円
11/19(月)より11/30(金)の予定。
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なおスタートは平打ち麺ですが後半は細切り麺に移行する
予定です。
このスープにはどちらの麺が最適なのか評価をお聞かせ
いただければ幸いです。






小学館のビッグコミックに連載されていた「そばもん」で
記述されていた話に
”そば職人にとって一番難しいのが「とじ蕎麦」だ”
というのがありました。

蕎麦の茹で上がりに合わせてダシツユをグルグルとかき回して
そこに溶き卵をそっと落とすというものです。

温めた丼に茹で上がった蕎麦を入れ
その上に卵が潜り込まないように座布団替わりの海苔を置き
上からそっとダシを注ぐというものです。
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単純そうですが茹で上がりのタイミングがずれると
卵が柔らかすぎたり、硬くなったりと意外に難しいもの。

しかもそれを注文の立て込む時間帯でこなすのは
やはり大変なのです。
職人さんも気の張ることでしょうね。

これがタイミングばっちりで出来上がると蕎麦一本一本に
柔らかな半熟卵がまといつきふわふわとろとろの
何とも言えない美味しさとなってくれます。

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でも、そこで忘れてならない名脇役がいるのです。
海苔です。
この海苔もまた溶けて蕎麦に絡みつくのです。
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先ほどの「そばもん」に登場する人物に別項でこうぼやかせます。
「なんだ!この海苔はちっともほどけねぇな!」と

ほどける  というのは溶けてバラバラになるという意味ですね。
ほどけない  つまり硬いままで美味しくないと言ってる訳です。

誤解しないでください。
溶けない硬い海苔がダメと言ってる訳じゃありません。

例えば寿司のお持ち帰りや出前のケース。
例えばラーメンで麺を巻いて食べたい時。
そんな場合は溶ける海苔じゃ具合が悪いでしょう。

でも溶けてほしい仕立てなのに溶けない海苔を使っていたんじゃ
それもまた具合が悪いんです。

長いノリ養殖の歴史で昔と違う効率の良いやり方に代わった
から溶けない海苔が多く出回るようになったそうです。

溶ける海苔を使った代表的な蕎麦の種モノに「花巻」があります。
当店の「土佐丸」はこの花巻に着想を得て仕立てました。

次回はこの花巻の事を書いて美味しい海苔の話とさせていただきます。





私が達人のお店に初めて知人に連れていかれた時、
真っ暗な夜道、街はずれまで車を飛ばすものだから内心恐怖すら
感じたものでした。

でも、無事() お店に着いたら真っ暗な田園地帯に大行列していたのです。

ところが、初めて食べた時にはあまり解かりませんでした。

その後、もう一度食べた時に衝撃が走ります。
頭ではなく、舌と体で  です。
なんだか毎日調理の仕事をしているにもかかわらず
体が欲してるものがあったんだとその時に気が付いたんです。

「これだったのか!」  と

その後も何度も通いました。
しかし、自分も中華料理店をしている身で
そのお店で何度か自分のお店に来るお客さんと遭遇するのです。
これはイカン、この店に迷惑が掛かると通うのを止めました。

それから随分年数が経ち自分が食べた中で一番美味しいと
思ったあの味を再現しようと思い立った時にそのお店が
閉店してしまっていると聞き、とても驚きました。

そして
ある人を介して度々当店に達人が訪れるようになり、
沢山のヒントを頂きました。
その時に厳命されたことがいくつかあります。
砂糖を入れるな
達人の店名を出さない
等々。

チャーシューを煮る時に砂糖を入れると簡単に味が決まるが
後で必ず味に悪戯をするというのです。

私もその後迷いが出た時に一瞬だけ砂糖を使った時期が
ありますがやはりその通りでした。

それからお店ではミニ丼を1,000回以上数百種
現在に至るまでの数十種の期間限定メニュー全て無糖無添加で
通しています。(寿司を除く)

ある時
当店にいらっしゃるお客様が「富山ブラック」という名称を
言われ始めた時、数多くの反論批判が噴出しました。
黒いラーメン全てを指して
塩ッぱいだけじゃないかと非難し、
「あんなものを富山の代表みたいに言うな」というものです。

でも、単に色だけじゃなかったはずです。

ブラックコーヒーには砂糖が入りませんよね?

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そのピュアな味わいに着目したネーミングだったと
私個人は推測しています。

その当時は缶入りコーヒーですら甘くどい物しかありませんでした。
私の作るラーメンもひどい酷評を浴びました。

今、街の自販機でもブラックコーヒーが並び、
甘くどいものは逆に忌避されつつあります。

私や、「蓮」さんの作る甘くどくない
無糖、天然素材のラーメンも
ようやく認識されるようになってきたのだろうかと
密かに胸をなでおろしています。

当店、「万里」と「蓮」では
砂糖の入らない黒の正譜を受け継ぎ守っています。