かつ丼には一般的な卵とじタイプの他に
当店でもすっかり御馴染みの新潟風タレかつ丼、
下仁田タレかつ丼、ソースかつ丼、岡山のデミかつ丼、
名古屋の味噌かつ丼などなど沢山の種類があります。

最近ではもっと斬新なスタイルも出てきているそうですが
やはり卵とじスタイルが一番馴染みのある定番ですね。

そこでカツをダシの中に入れないでご飯の上に直接乗せ
その上から卵とじを掛ける
「かけかつ丼」
なるものがあります。

サクサクとした歯応えを楽しみつつ味は安心感のある定番
このいいとこ取りをしたスタイルが今流行の兆しを見せています。

これを作って出しました。
ちょっと聞いただけで美味しさが想像できるでしょうが、
簡単にやってしまうと美味しくはなりません。

美味しくするには美味しい手間をかけなければなりません。
カツと聞いて肉に塩コショウなどとやってしまっては台無し。

コショウと和風だしは不仲です。
もっとも砂糖やほんだしで作るなら別ですが。

まず、美味しくて柔らかな肉を用意。
かといって当店では売価が200円と決まっていますから
上等の豚ロースやヒレは使えません。

ご家庭でならOKでしょう。

今回も能登健康鶏を使います。
その中でもあえて胸肉をチョイスしました。
胸肉は加熱すると白くなる部位で、パサパサしているからと
毛嫌いする人もいますが、栄養価の高い優良肉なのです。

パサつくのはレシピが悪いからです。
美味しいひと手間をかけると無問題。

朝には鶏屋さんからさばいたばかりの肉が届くので
すぐに削ぎ切りします。
それをダシにみりんと醤油で薄めに味付けした中に漬け込み
一晩おきます。

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身肉から肉汁が染み出ても、代わりに美味しいダシを
含ませてしっとりとした肉に変身させてやるという訳です。
こうすれば栄養価の高い、しっとりと柔らかいカツになりますが、

もうひとつ忘れてならないのがパン粉です。
パン粉はフライには欠かせませんが問題はその粒のサイズ
油はその粒のぐるりにまといつきますから
大きな粒ほど残存油は多くなり、小粒ほど少なくなります。

それは食べる時にボリューム感の在る無しとなって表れます
ですから若い方ががっつり食べたい時には粗め
さっぱりと仕上げたい時は小粒
となります。

それはカツだけで食べる時ももちろんそうですし、
卵とじにする時などはなおさらです。
ダシに油が流れ出るからいっそうその傾向は強く出ます。

そこで今回の「かけかつ丼」では
衣がダシの中で柔らかくならない分だけやや細かめにする
必要が出てきます。

粗いパン粉だと口当たりがガリッとするからです。
ラーメンと合わせるわけですから重くしたくない
という思いもあります。

パン粉をすり鉢で摺って細かくします。

ここまでが仕込みです。

美味しくしようと思ったら
美味しくなるポイントを押さえなきゃいけません。
ただ決まりきったセオリーだけを流すだけじゃ
旨くはならないのです。

後、フライヤーで揚げないということも重要な点ですが、
今回は触れないでおきましょう。

鍋の油はこまめに温度調節ができるから美味しくなるとだけ
記しておきます。

注文が入ったらカツを揚げて
ご飯を盛り、カットして乗せ
その間に温めていたダシにタマネギを入れ
ひと煮立ちしたら溶き卵を回し入れます。

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そうして上からかけます。
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これは食べる前に想像していた以上の美味しさでした。
軽めの衣がさっくりしていて
肉はしっとりと柔らかく
新鮮卵はふんわりと優しく
肉の間からご飯に染込んだタレが甘くどく無く
食べるほどに食欲を刺激してやみません。

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今回も砂糖の入らないタレでラーメンとの総和はぴったり
きれいに食べていただきました。


かけかつ丼
なかなか美味しいものですね。
このパターンでまたいくつか応用がききそうです。
いつか試して見ましょう。

昼の食事はささやかな休憩時間。
せめて出来るだけ美味しいものを食べて気分転換や
英気を養っていただきたいと思います。

だって
お客様は飲食店とは「美味しいものを出す所」と思って
来店されるんですから。

それを
何よりも経営者が儲ける為に商っているんだ
資本主義なんだから何が悪い

などと開き直ってよろしくないものを商うところが多すぎ
じゃありませんか?



私は全力で作ります。
「貴方はラーメン屋なのになんでそこまでするの?」
と聞く人もいます。

怠惰な仕事に慣れされすぎてしまった人の愚問ですね。











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インド料理店などでタンドリーチキンを食べて
『なんだかパサパサしてあまり美味しくなかったな』
と感じたご経験はありますか?

私はあります。
というより、いまだ本当に美味しいというそれに
お目にかかった事がありません。

お客様にうかがった話ではT市に本格料理店があるから
そこへ行って見なさいということなのですが
まだ行けてないうちにとうとうこんな危ない記事を書き始めて
しまいました。

タンドリーチキン
私が想像するにこうです。

まだブロイラーなる食肉用の品種など存在していなかった頃
地飼いの鶏を絞めて作っていた頃、
肉質はやや硬かったはずです。

食肉用ではなかったら、あるいは卵を産まなくなった
廃鶏だったならなおさらです。

その硬い肉を柔らかく仕上げる為にレシピが産まれた
のではないか?

だからヨーグルトに漬け込む理由があるのじゃないか?



乳酸菌がただ風味付けだけじゃないとしたら
それしか思いつかないのです。

時を経て、ここ日本では、
ブロイラーの冷凍カット肉が世界中から輸入されています。
安いのを探せばいくらでもあります。
東南アジア、ブラジル・・・

鶏肉はさばいて骨を外したらすぐに肉汁が流れ出ます。
カット肉とはそういう状態でパックされています。

冷凍を正しく解凍しないとさらに流れ出てしまいます。

それを古来のレシピで焼くわけですね。

タンドリー釜というのはナンなどを焼く竈です。
日本の炭焼きのようにこまめに返せません。

だから、
肉汁の落ちたようなぱさついたものが多いのじゃないか?

とここまでが私の想像です。
間違っていたら謝りましょう。

そこで
作ってみました。

能登健康鶏のもも肉の皮をむいて用意します。
普通は塩とレモン汁をかけて一晩寝かしますが
みりんと醤油で一晩寝かしました。

翌日、通常のヨーグルトやガラムマサラなどのスパイスに
漬け込み、焼き上げます。
焼くのは普通のガス火の網焼きです。

脂を落しつつ落しすぎない
肉汁を極力落さない

ひたすらこれを注意して焼き上げました。

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それを冷ましてから刻みます。
温かいうちに刻むと肉の収縮圧力が大きいので
肉汁が全部流れ出てしまうからです。

タマネギを刻んでよく炒めてスパイスを絡めておきます。

そうして昼のミニ丼でお出ししました。
各種スパイスをたっぷり加えて作るチャーハンは
インド風味満載ですがカレー粉ではありませんから
辛くはありません。

少しでも野菜を多く食べてもらいたいので今が旬の
山形の食用菊を加えて仕上げます。
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ラーメンとの味の総和を乱すことなくちゃんと納まってくれました。

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これは実験でした。

まず、日本人向けのタンドリーチキンを作る。
良質の肉で作るとどう活かせるのか?

の二点です。

結果は良好でした。
後は彼にこれを提案するだけです。

「彼」とはヤキトリ店の店主の事です。
先日向こうから来てくれました。
説明すると黙って聞いてくれました。

鶏を焼かせたらヤキトリ店が一番です。
ヤキトリ店では火力の強い備長炭で一気に表面を焼き固め
肉汁を閉じ込めつつ余分な脂を落し、
美味しい脂を残して焼き上げます。

ここで美味しい肉質のしかも、日本人に合う味付けの
タンドリーチキンが食べたかったからなのです。

熱心に聴いてくれました。
さて、彼はどんな答えを出してくれるでしょうか?
いつか
ここでそれをご紹介できる日は来るのでしょうか?

私もその答えは知りません。
期待して待ちましょう。
日一日と進化し、成長する料理人というのは
こんな楽しみももたらしてくれます。


かつて明けても暮れても
「釣り釣り釣り」と狂っていた時期があり
それこそ山のような道具類に囲まれていました。

沖釣りから南西諸島の離島まで狂いまくっていたのが
現在の場所に移転してからはそれどころじゃなくなり
ようやく縁が切れてすっかり足を洗い、

数年前久しぶりにかつての釣り友に誘われて船でのキス釣り
に行った所全く釣れなくてがっくりときました。

『え? 釣りってこんなに退屈だったっけ!?』

最近はずっと山行きばかりしていたせいでじっと座って
いるのがたまらなく退屈で、
釣り友が暇つぶしのように吹かすタバコさえも
とっくに禁煙した私には疎ましく感じる始末です。

昨年、足腰を養う為にイワナ釣りに連れて行ってもらおう
と家内に話したときに
一番危惧されたのは山が危険だからとか
熊が怖いんじゃないか   だとかじゃなくて

「また、病気が再発するんじゃないの?」だったくらいです。

その時は
「大丈夫、どこに落とし穴があるかはわきまえているから」
と胸を張っていましたがどうやら雲行きが怪しくなってきた
この頃。

先日はほんの少しの時間でしたが
とうとう家内まで一緒にハゼ釣りに行ってきました。

食い気の前にはあっけなく理性など吹っ飛ぶ二人の前に
ぽっかりと大きな穴が広がっているようです。
釣具店のご夫婦の満面の笑顔が恨めしい最近です。

以前と異なるのは釣り魚に対する料理の執着。

ハゼが全くクセが無くふんわりと美味しいので
今回はワンタン蕎麦に仕立ててみました。

ハゼを細かく刻み、イカと豚の脂身と合わせます。
いくらふんわりしているとは言え脂肪分の少ない
ものを練るには脂肪分を補わねばいけません。

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御馴染みのエビ団子もエビだけじゃバサバサして旨く
なりません。
エビ+白身魚少々+イカ少々+背脂少々がベストミックス
なのと同様です。

それに卵白、ネギ、生姜汁、片栗粉で練りワンタン皮で
くるみます。

完成しました。

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ぷっくりとした食感で生臭味など皆無。
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とても贅沢な味わいです。
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ハゼは釣って楽しく、食べて美味しい
いい奴です。

今日は前線のせいで大荒れだから自宅待機だけど
次回はあの釣り方、あの仕掛け、あの針で
いやまてよ、
小物が釣れたらそれを活き餌にしてアレを狙う置き竿を・・




あ   

本当にやばいかも  


2012.10.22 ハゼの洗い
今回は洗いです。
この日は麺打ち仕事を早くに終らせて上市川に急ぎました。
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ようやく陽が上り始めてススキが黄金色に輝く中、
もう数人が釣り始めています。
中にはお隣の県のナンバー車も。
いったい何時に起きてくるんでしょうか!?

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そうです
ハゼはやり始めると熱中するんです。

帰ってさばく時間、仕事を始める時間などを引くと
釣りに許される時間は小一時間で朝釣りとしては充分。
そのかわりのんびりとした釣りじゃありません。

ハゼはうららかな秋晴れの中のんびりと釣る方法と
せかせかと数を稼ぐ釣りと選択ができるのです。

今回は数を狙いましょう。
ところ!が
こんな時に限って食いがシブイ。  

潮の加減でしょうかポツリポツリとしかアタリが出ないのです。
下げ潮でした。
(下げ潮=引き潮 潮止まりよりは良、上げ潮よりは劣る)

そんな時には二本竿を出します。
それでようやく数が出だしました。

隣で釣っていたおじさんがのぞきに来ます。

「釣れないねぇ」
「おや?釣っとるやないか!」

ハゼは入れ食いが当たり前のように思っているとこうして
思ったよりアタリがないとがっくりとくる釣りなんですね。

(入れ食い=エサを投入後すぐに釣れる、&持続する)

それでこうして釣れている人の様子を見に来ると言うわけです。

この方は今シーズン五百匹は釣ったと自慢していきました
全部白焼きにして冷凍保存したそうです。

そうこうしているうちにタイムアップ。
急いで帰ります。
一時間で25匹が釣れました。

帰路、クーラーボックスの水氷が
チャプチャプ、ガシャガシャと心地よい音を立てるので
ラッシュも気になりません。

帰ってすぐに氷水を作ります。
ボウルに水と氷を入れただけじゃ冷たくはなりません。

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こうしてしつこい位にグルグルグルグルと混ぜて置きます。
そこへさばいた刺身を切っては入れ、引いては放り込み
もう一度グルグルグルとやってザルに空けます。

氷を捨てて
布巾でギュッと絞り、洗いの完成!

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透き通った身がもちもちでとても美味しくできました。

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キュッと冷たく締まったハゼがあまりに美味しいので
調子に乗って握り寿司も作ってみました。

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かつて「ハゼ禁止令」を出していた家内も
「今度は私も行ってみようか」などと言う始末です。

冷たい雨が続くようになるとどんどん海へと降っていく
もうしばらくの間ですが
ハゼ釣りは老若男女どなたでも楽しめる釣りです。
一度トライしてみませんか?

簡単に釣って楽しく過ごし、美味しく食べる。
まさしく釣りの原点のようなひとコマとなるでしょう。





富山県では魚が豊富過ぎて選り好みをする
傾向があります。

川なら清流の魚や、海魚でもモノによっては磯臭いなどと
言って嫌う人が多いのです。

これは地方によっても異なるものなのですが
例えばベラなどは関西では喜ばれますが北陸ではあまり
食べません。
でも佐渡では大いに喜ばれるそうです。

私はフグを除く大抵の魚は食べましたがベラははっきり言って
美味しい部類に入ると思っています。
食習慣というのは一朝一夕に変化しないものですから
とやかくは言いませんが魚はレシピによって
活かすも殺しも自在になるものだなと改めて痛感している所
です。

ハゼを釣る人は結構多いのですが富山県全体でみると
やはり
「ハゼなんか美味しくないし、食べようとも思わない」
という人が圧倒的多数なんだろうなと思われます。

でも、例えばシマダイ。
ご存知イシダイの幼魚ですが。
これも大変美味しいのにご多分に漏れず
「磯臭いから嫌い」と残念な事をいう人が多い魚です。

これを釣ってきた時のことを例に挙げてみましょうか。

シマダイを早朝に釣りに行っていた頃の事です。
まだ子供が幼稚園に通っていました。

朝早くに出かけ、釣り上げたらラッシュの前に慌ただしく
帰宅します。

シマダイはまだ死後硬直もしていない生暖かいままです。
それを3枚に卸します。
シマダイの骨はみっしり隙間なくそろっているので小型でも
卸しやすい魚なんですね。

そうして刺身にします。
小型なら片身で一切れにしかならないほどです。

それをボウルに氷水を作りよく混ぜて超冷たくした中に
放り入れ全部さばき終わったら混ぜます。

そしてザルにあけ、氷をのぞき、刺身を布巾でギュッと
まとめて水気を取り小鉢に盛り付けます。

それをおろし生姜と醤油で子供に食べさせるのです。
子供は幼稚園に行くのを嫌がり朝からぐずる子でしたが
このシマダイの洗いにだまされて朝からモリモリと
ご飯を食べてくれました。

活きている身を氷水で締めるこの洗いはとても美味しく
朝からでもどれだけでも入ります。
キンキンに冷えてコリッとした刺身には磯臭さなど
全くありません。

次回はハゼでこれを作ってご披露してみましょう。

今回は天ぷら蕎麦です。

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揚げたてをジュッとそばつゆに乗せるともうそれだけで
美味しそうな香りが立ちます。
ミツバと自家製柚子コショウを添えて食べると
あの無骨な顔から想像もできないほど

ふわり

と口の中でとろけます。

ハゼはかなり美味しい部類に入る魚だったんですね。
いや、こんなに美味しい魚が簡単にしかも大量に釣れる
川がどれだけでも在るなんてやっぱり富山県はいいとこなんですよ~

これは
前回に続いて過去の不明の反省と自戒を込めての繰り返しです。
ハゼをバカにしていたせいでこんなに美味しい物を長年
見過ごしてしまっていました。


東京でもハゼは美味しい魚として人気なのです



珍重されるのは活魚だけで                       
死んだものは格段に値打ちが落ちるそうです。
それで開きで流通するのが主なのだとか。

そこで前回ご紹介した「水氷」です。
活絞めにしたら魚は死んでも身肉は活きている
この法則を大いに活用して
くれぐれも食わず嫌いなどせず
無心に召し上がってみてください。

どなたもきっとハゼを見直すことでしょう。
私のように後悔しないように

さらに念押ししておきます。


秋はハゼ釣りの季節。
富山は河川が沢山あるのでこの時期になるとあちこちで
釣り糸を垂れる人を見かけます。

休日ともなると釣り上げるそばから持ち込んだコンロで油を
沸かし、から揚げを作る家族連れの姿も見ます。

ところが私は永年このハゼが嫌いでした。
むかし、一度だけこれをやったことがあるんです。

釣り上げてすぐをから揚げにすると美味しいよ  と
聞いていたのですが実際にやってみるとなんだか泥臭く
美味しいとは思えなかったのです。

それを家に持ち帰り家内に食べさせたところ
冷めている分だけさらに美味しくなかったと見えて
とうとう「ハゼ禁止令」まで出される始末でした。

それから20年近く経ち
最近
「いやハゼは美味しいんだ」と聞いたのです。

こちらも僅かな記憶をたてに反論しました。
でも、
『そう言えば大した手間を掛けていなかったな』とも
思い出したのです。

ハゼを不味いからと敬遠してから後も色々な釣り遍歴を
しましたが、その中で船釣りが参考になりそうです。

釣り上げた魚を美味しく食べるーつまり鮮度を保つには
様々な手法があります。
堤防などではクーラーボックスなどを持参しますが
沖のテトラ釣りではかさばりますから持参できません。

そんな時にはストリンガーという大きなフックのついた
鎖やロープを持参します。
エラぶたから口に通して海に垂らして泳がせておくのです。

その時に重要なのが尾びれの根元の骨に少しだけ切り込みを
入れる事です。
そうすることで魚は泳ぎながら少量づつ血を流し帰宅
するころには血抜きが出来ているということになるのです。

船釣りでは大きなクーラーボックスを持参できますから
そこにたっぷりの氷を持って行き沖で海水を入れてやります。
これを「水氷(みずごおり)」と呼びます。

氷が溶けて塩分の薄まるのを嫌う人は塩を加えたり
ペットボトルの水を凍らせた氷などを併用します。

この水の冷たさといったら手をつけていられないほどで
たちまち魚は絶命してしまいます。

常温で、
例えば堤防の上や無氷のクーラーボックスの中などに放置
してバタバタと暴れまわった挙句絶命してしまった魚は
野締めと呼ばれ味は著しく落ちます。

一方、生きているうちにエラぶたから包丁を入れたり
こうして水氷などで瞬殺したものを活き締めと呼びます。

どちらが美味しいかは言うまでもありませんね。

ところが実際の漁の現場では驚くほど無頓着に扱われている
場合が少なくありません。

ひどいのになると夏の盛りに胴の間に温かい海水を貯めて
その中に魚を泳がせたまま帰港し、
水揚げしたら市場の温かいコンクリートの上に並べて
跳ね回らせている
というのまであります。

それを素人は「なんて活きがいいんだ!」などと
喜びますがプロは眉をひそめます。
絶命する頃には身が焼けてしまっているからです。

では表題の
ハゼはどうかというと恥ずかしながら、バケツで川の水を汲み
そのまま帰宅するまで中で絶命するまま放置して
しまっていたのです。

ハゼは汽水域で泳ぐとはいっても本来は海の塩水で生きています。
川であってもハゼの遊泳層は塩水です
それを水面の水、つまり真水に長々とつけておけば
どんどん味が落ちて当たり前ですよね。

子供が観察して喜ぶ為に釣り上げるのならそれも良し
でしょうが、
いい歳をしたおっさんが釣るのは食べる為なのです。

心を入れ替えて”たかがハゼ”などと言わず
ちゃんとそれ相応の手当をしてみよう。

と反省しつつ
先日行ってきました。
ハゼと言えば誰でも山ほど釣れる。
という概念も捨て去り、この日は10尾ほどだけを釣り、
早々に帰宅しました。

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たっぷりの氷に天然塩。
そして水道水で作った水氷はとても冷たくハゼはたちまち
ピクリとも動かなくなります。

帰宅してまな板に乗せたそれはしっかりと硬直してとても
裁きやすくなっています。

魚の命は果ててしまっていますが、こうして処理された
身肉は活きているんですね。



刺身にしても洗いにしても美味しくなります。

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今回は刺身でいただきましたが
ほんのりと甘く、とても美味しいものでした。
家内にも食べさせたら「美味しい」と評価をしてくれました。
数十年ぶりでハゼ禁止令も解けそうです。

そう思って顔を見ると今までは不味そうにしか見えなかった
のに妙に愛嬌があり釣り上げられたのも解らないとでも
言いたそうなキョトンとした表情まで滑稽です。

ハゼが不味いなんて不明のいたり
まずは己のなまくらを反省させられた一日でした。

魚の美味しさをお伝えするのにいつもつたない握り寿司を
作りますが今回はこんな専門誌に出ていたハゼの握りを
真似てみました。

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天ぷらも作ってみます。
いずれも河原でザザッとさばいてから揚げにしたのとは
まったく比べ物にならない美味しさでした。

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よし、ハゼ君これからは気合を入れて遊ばせてもらおうか。
なに遠慮することはない。
大いにお近づきになろうじゃないですか。
ささ、まずはこのご馳走を君に・・・。




え?そうだろう旨そうだろう?
そうこなくちゃね。










片貝川の上流の沌滝(どんたき)を見に行ってきました。
ここは8号線から10分ほど南に入ったところで、
一帯にはりんご園が広がっています。
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車を降りてから15分ほど急崖を登るだけでこんな光景が
待ち受けています。
一面に苔むした大石の間を美しい水がいたるところから
流れ出てとても神秘的です。

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ところで
金の卵を産む鶏を殺すと聞けば
欲深い人は全てを失うという寓話を連想します。
少し考えれば誰でもその愚かな結末を想像できるはずです。

近代
人は幸せを求めて大都市に向かいました。
ムラは窮屈
ムラでは個性が活かせない

いっぽう
都会にはなんでもある
自由と豊かな生活は大都市にしかない

とでも言わんばかりに田舎を捨てて街へと
さながら民族大移動のように流れました。

それを受けて人口減少した地方はなんとかお金を産まないと
もっと人口流出に歯止めが掛からなくなるからと

木を伐り、山を削り、農地をつぶして巨大なレジャー施設
を建設。
立派な道路を通し、川をつぶして見た目はきれいになりました。

今、
スキー場は寂れ果て動かなくなったリフトは赤錆の塊となり
トンボの止まり木となっています。

巨大なホテルには人もなく駐車場には草が生い茂ります。

だからと言ってただやみくもに開発そのものを批判するのじゃ
ありません。
ただ
自然の魅力の伝え方や
新たな魅力の創生にやや短兵急なところがあったのじゃ
なかろうかと思うだけです。

広葉樹林には様々な生物が豊かな命を育まれていたのに
それを伐採し、杉を植林したものだから
杉は硬い地下に根を張らず柔らかな腐葉土の層にばかり
つまり、横にだけ根を伸ばし通常3年掛かる成長を1年で
育つありさまです。

生き物の育たない杉林はそれだけでも薄暗く不気味なのに
大地の守り神としての役割も果たしません。

大雨が降るといともたやすく大事な表土ごと流れ落ちます。
普通はがけ崩れが起こると木は倒れるのですが
こんな脆弱な人工杉林はまるごと木が直立したまま
ずるりと腐葉土層全部が流出するといいます。

そうなると出番だとばかりに
建設省のオエらい人達がやってきて砂防ダムを建設します。
流出後はむきだしの硬い岩盤が露出したままとなって
何十年経っても草も生えません。

まるで皆でこの国を役割分担して絞め殺そうとでも
しようとしているんでしょうか?


そんないたたまれない光景は決して珍しくはありません。
市街から30分も車を走らせればいたるところで見受けられます。
整備された道路。
新しい橋。
コンクリートで固められた河。
一見整然と整備されたように見えるその下に踏みつけられた
ものは数え切れない命です。

里山が大好きだから過多に感情移入してしまうのでしょうが

だから、
ここに来て本当に嬉しくなりました。
手付かずの自然などとは言いません。

人が草刈や崩れなどを手当しているからこそ
こうして訪れることができるのです。
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手当はするが、壊さない。

金の卵を一日に一個だけ産む鶏に餌を食わせすぎては
いけません。
ましてや腹をかっさばいては一個も得られなくなります。

きれいな水
澄んだ空気
安心に暮せる幸せな環境

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人が望む幸せはここに全てあります。
このあたり一帯の水道水は豊富な地下水が源泉で
豊かな腐葉土を経て湧き出る水はミネラルたっぷりで
とても旨い水です。

それは田畑をうるおし、沢山の生き物も育みます。
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自然の恵みを吉として欲張らない生き方を選択した
こちらの方々の知恵に敬服いたします。

私達もまた
この景色から学ぶべきことが沢山ありそうです。
山中に広がる栃林は巨大で根周りだけで背丈を越える程。

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悠久の時を想いながら
広葉樹独特の明るい木漏れ日の中を歩くと小動物にでも
なったように自分がちっぽけな存在なんだと自覚させられます。

水こそが命の源
短い時間でしたがそんな当たり前を再認識しました
四季折々の滝の姿を見に来ようと家内と話しながら帰宅。




  本日のミニ丼
マヒマヒのポキ  200円

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かつて日本が貧しかった頃、海外に移民した
方々がいらっしゃいます。
挫折して戻ってきた方も沢山いるそうですが
艱難辛苦の果てに成功を収めた人もおられます。

そんな人達が食べたくてどうしょうもないほど恋焦がれた
味が味噌と醤油です。
ほとんどの人達は自家製でまかなったそうです。

ブラジルでは小麦が入手できなくて仕方なしにトウモロコシ
と大豆でほんのりと甘い醤油を作ったそうで
これが今でもブラジルの醤油のスタンダードなのだとか。

ブラジル奥地に入植した人たちの元へキッコーマンの樽が
初陸揚げされる時の事を記した小説では
日本人が歓声をあげて涙を流したと書いてありました。

ハワイではさらに事情が異なります。
なにしろ周り中が海。
新鮮な魚がふんだんにあるのに醤油が無い。

これは魚好きな日本人にとって想像を絶する拷問です。
海を渡って醤油がやってきたときの歓喜は想像するだけ
でもさぞやと思われますよね。

これで刺身がたべられる!
寿司が食える!
煮物・・・・。

どんなに醤油が嬉しかったのか
日本人はそこでハワイでよく獲れるシイラでタタキ丼を
作りました。
柑橘果汁を醤油に加えればワサビは不要です。

そうしてそれは現地の人たちを巻き込んで
今ではハワイを代表するメニューとしてポキと呼ばれます。
ハワイの和食です。

日本のタタキ丼と異なる風味が日本移民の
流した汗と涙のスパイスと思えばまた格別の味わいです。

秋のシイラが上がり始めましたのでさっそくこれを
出しました。
マヒマヒとはハワイ語でシイラの事です。

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シイラは日本では案外人気がありませんが、
海外では非常に好まれています。

富山で水揚げされたシイラはほとんどがロシアや
ヨーロッパへの加工用に輸出されるそうです。

そこの水産会社に中国人が働いているそうで
聞くと、シイラの頭を切断するのに硬くて大変だからと
出刃包丁をあてがってから金槌でガンガン叩くそうです。

何千円もする包丁がすぐにだめになってしまうと周囲は
困り果てているそうです。

アメリカのナマズがバーガーの白身魚に化けているように
日本のシイラもどんな料理に化けているのか興味のある
ところですがその第一歩が中国人の洗礼とは時代も変わったものですね。

海外では元気の出る魚としてシイラは大人気ですが
日本では案外と不人気なのにはいくつか理由があり
中には風評としか思えないものもありますが、
理に叶った理由というものもあります。

漁業や鮮魚関係者はそこの辺りを触れたがりませんが
誤解と無用のトラブルを無くす為にもキッチリと書いておきましょうか。

シイラはトップウオーターと呼ばれる水面近くを遊泳します。
捕食するのは小魚、貪欲なフイッシュイーターです。

では海面近くで小魚が群れる所はどこでしょうか?
海の中には潮流がいくつもあり、それらがお互い干渉しあい
かつ激しくぶつかりあい渦や潮目と呼ばれる境界を作り出します。

稚魚は激しい潮流の中では上手く泳げませんからこういう
潮目に棲むのです。
潮目には流れ藻やゴミくずが漂いますからそこの中などで
生息しているのです。

ヤガラもこういうところで”幼児虐待”をしている
と以前に書いたことがありますよね。
テリトリーは同様です。

ただ、ヤガラにはウロコはありませんがシイラには
細かなウロコがびっしりとついてます。
ここが問題なのです。

普通にさばいて三枚にして、そのまま刺身にするとまれに
中る(あたる)人がいるんですね。

ですからよく分ってる料理人はまず、
体表をタワシや金ダワシでガシガシと洗い流します。
ウロコの隙間に入っている汚れを落とすことが重要なのです。

次に三枚に下ろしてからはまな板をしっかりと洗うか
まな板を取り替える。

これだけで安心の食材になります。
大きな体を維持する為に魚を腹いっぱい食べて
これからが産卵の時期です。

白身なのに脂の乗った美味しいシイラをもっと賢く
大胆に活用したいものですね。

「なんでもっと工夫しないのか!?」と
ハワイに移り住んだ先人からお叱りを受けないよう
度々、マヒマヒのポキを作ってみましょう。

サラダ感覚でさっぱりと食べられる美味しい味わいですが
さらに幾通りか変化もつけられそうです。

こうして自分で仕事を増やし、課題が多すぎて困るなんて
潤沢な食材に囲まれているからこその贅沢な話ですね。

いつものことながら言わせていただきます。
いろんな人達が良い仕事を持ち寄ってくださるおかげで
こうして、まがりなりにも料理人の仕事をさせてもらえます。

私に出来る事はただ素直に美味しい物同士を組み合わせることだけ
そこに余計な雑味を付け加えることは
そんな人達に対する侮辱でもあると考えています。

余計なものを添加する必要は全く不要なのです。
今回はすだち醤油で合わさせて頂きました。
どうせ手を掛けるなら”より美味しく”でなければ
ウソですよね。

わざわざ不味くするために余計なひと手間をかけるなんて
馬鹿げていると思いませんか?

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美味しい物を作れる事に
美味しい物をご提供して頂いた全ての人に合掌、感謝。