2017.02.24 狩猟の話ー3
ho90.jpg


ho91.jpg

大長谷ハンターズジビエにお邪魔すると
大抵何頭かの獲物がぶら下げられています。
壁には鹿の角が掛けられていたりします。

でも決して生々しくて嫌だなどとは感じません。
いわば肉屋さんに普通に肉が並んでいる光景
魚屋さんに様々な魚が並んでいる光景
すっぽん料理店に普通にすっぽんの甲羅が飾ってあるのと
同じくらい自然な光景なのです。

頼んでようやく念願のイノシシのガラを分けてもらえました。
肉だけなら地方発送などで入手できるルートはありますが
ガラとなるとなかなかそうはいきません。
有り難い事です。

ちなみに
「イノシシは足が短いから多雪地域には生存できない」
だから
「太平洋側や西日本には沢山いるが雪国にはいないんだ」
と聞いたことはありませんか?

今までそれが通説のように語られてきました。
ところが古い文献によると
ずっとずっと昔は最北端の下北半島にまでイノシシはいたそうです。

なにかの病気が蔓延して一時は絶滅したらしいとの事。
今の青森県の長老に聞いても
「知らない、聞いたことも無い」と答えるそうなので相当過去の
事なのだろう  という話です。

木太郎さんに
「イノシシは雪中を移動するのか?」と尋ねると
「普通に移動してます」と即答

鼻で雪を左右にはね上げてブルドーザーのように移動するそうです。
そうなるとヒトがかんじきを履いて追いかけても
間に合わないスピードなのだとか。

やはり現場で聞く話はリアルですね。

ただ新雪が一晩で50cmも積もるような時には流石に
出て来ないそうです。


何はともあれ
イノシシ肉とガラが手に入るようになりました。
来月はこれで面白いラーメンが出来そうです。
どうぞ御期待ください

なお
プロアマ問わず手軽にイノシシやシカ肉が入手でき
ジビエにトライ出来るようになりました。

それでもまだ獣肉は臭いとか思う方々のためにもう一言
木太郎さんから聞いた話を記しておきましょう。

イノシシ肉が臭いのは「サカリ(発情期)」の時期だけです。
しかもそれは獣臭いのではなくまるで整髪料のような
若干石油系のような匂いで捌くとすぐに判る匂いなのだとか

しかも強いオスだけがそうなのであって
弱いオスにはその匂いが無いのだそうです。

ですから臭い肉が販売されることはありません。
ただし、雑食系のイノシシには臭みは皆無ですが
草食系のシカ肉はほんの少しマトンのような匂いが
あると言います。

それとてレシピの工夫でクリアーできるはずです。
貴重な機会なので勉強するつもりでひとブロック求めてまいりました。

さて、これで何を作りましょうか?
愉しみです。

ho98.jpg ho97.jpg




スポンサーサイト
2017.02.22 狩猟の話ー2
石黒さんの話を書き始めたら地元ケーブルテレビで
木太郎さんの顔がアップで映り『おや!?』と驚きました。
フットワークの良い方々が既に取材に行っていたようです。

雪の中をかんじきを履いて軽快に歩きニホンジカを見事に一発で
仕留めていました。

「ジビエと言えば大長谷と言われるようになりたい」
彼の願いです。
早晩それは叶うでしょう。
間違いありません。

彼やその仲間たちにはその力があるからです。

それを書く前に「ニホンジカ」のことを少しだけ書きましょうか。
日本には鹿は3種類生息しています。
北海道のエゾシカ
本州のカモシカ とニホンジカです。

富山県にはカモシカが沢山いますがこれは天然記念物指定
されているので狩猟対象ではありません。

北海道のエゾシカとニホンジカが害獣とされます。
エゾシカも大量繁殖して酷いことになっているそうです。
農作物が大被害になっているのは判りますが、意外に多い
のが交通事故です。

ちょうど車のボンネットの高さが足の長さほど
道路に飛び出したエゾシカと車が衝突するとフロントガラスを
突き破って巨体が運転席に飛び込むという事です。 
恐ろしい光景ですね。

ニホンジカはTVなどでよく見る「小鹿のバンビ」のタイプの鹿。
おじさん顔のカモシカに比べると圧倒的に可愛いので
『あんな可愛いのを殺すの?』と思われる方が多いようです。

ところが、これがとんでもない害獣でして
こやつは冬眠しませんから冬は木々を食べます。
春に備えている新芽や樹肌をです。

木の皮を少々剥ぐだけなら木は枯れません。
ちゃんと再生します。
ですからキハダの皮を剥ぐ人も一定範囲しか剥ぎません。
ところが鹿はぐるっと全部食べてしまいます。
するとその木は枯死してしまうのです。

何10頭の鹿が冬季に毎日それをやったらどうなると思いますか?

春、雪の下から草や山菜、木々には若葉が萌え出ます。
それも食べます。
鹿にはご馳走です。

普通、草や落ち葉が枯れて堆積して腐葉土になり滋味深い
1cmの表土となるのに100年かかるといわれています。
鹿はその分を一年で食べてしまうそうです。

恐ろしいほどの食害です。
イノシシのように大きな穴を残す目に見える痕跡じゃなく
ひっそりと静かに、しかし確実に森を破壊していくんです。

これが最近富山に大量に入り込んでいるんです。
あっというまに全土に広がるはずです。
イノシシがそうであったように。
ウリ坊の小イノシシや小鹿のバンビ似だから可愛いなどと
言ってる場合じゃない  ということがお判りいただけるでしょうか。

さて、鹿です。
とても臆病な性格で用心深い奴です。
これを鉄砲で撃つ時は首から上または心臓を一発で仕留める
技量が求められます。

半矢(はんや  仕留めそこなって)で逃げ回ると恐怖と痛みの為
肉に尿酸が回って味が著しく落ちると言われます。

だから優良なジビエとなるにはハンターの技量に負う所が大
と言われるゆえんなのです。

また、仕留めてからの処置もまた非常に重要で
血抜き作業や素早い処理とその技術の確かさと
なってくるとハンターが自ら処理場を運営するという事が
実に理にかなった理想的なカタチなんだとご理解いただけるでしょうか?

木太郎さんはまだ経験が浅いとはいえ映像で見ただけでも
確かな射撃の腕を持っているのは判ります。
しかしまだ散弾銃しか持つ資格がないそうです。

でもベテランの仲間の中にはライフル銃で1200m離れた獲物を
一発で仕留める名人もいるのだとか。
いずれ木太郎さんもそんな領域に行くのでしょう。

それまでは怪我などしないように気を付けて頑張って頂きたいものです。

ho95.jpg

ho92.jpg

ho82.jpg

こんな急こう配の雪中を獲物求めて駆け回るんです。
ものすごい体力ですね。





2017.02.21 狩猟の話-1
普通狩猟というのは猟期が定められていてその時期以外は
原則禁止です。
それが処理場建設、施設開設のハードルとなっています。
せっかく作っても安定仕入れができないからです。

事実、石黒木太郎さんが作ってくれる以前にも富山県では
そういった施設が無かった訳じゃありません。
でも材料の調達量が圧倒的に少ないために私達も手が出なかったのです。

ところが、木太郎さんたちは害獣駆除の指定を受けているので
通年の狩猟が(駆除)認められているのです。
これは私達にとっても誠にありがたい事です。

では具体的に野生獣はどんな害をもたらすのか?

熊はヒトと遭遇すると驚いて反射的に殴り掛かる、噛みつく。
そんなことをするヒトは今時もういませんよね。
やはり害獣なんです。
以前に
富山市で畑作業をしていたおばあちゃんに熊が遭遇した時
の事です。

実は熊は本来山の中に棲む為人里に出るのはかなりの
ストレスなのだとか・・
だからやむなく餌を求めて里に下りた時も茂み伝いに
ひっそりと進みたい。  だけど次の茂みが遠くにある。
そんな時は必死に走り抜けたい。

そこにヒトがいたらやみくもに腕で振り払います。
熊手そのもので張り倒されたおばあちゃん。
お気の毒に顔面が剥がれてしまったそうです。
病院に担ぎ込まれましたが手当の甲斐なくお亡くなりになってしまいました。

山にいてくれればただの獣ですが
里に出てくるのなら熊はもうただの熊ではなく
危険極まりない害獣なのです。

頼りになるのはハンターだけです。

ちなみに
熊はその体構造の故かボクシングでいう所の”フック”しか
出来ないそうでいわゆる”ストレートパンチ”のような動きは
出来ないのだとか・・。

そこで冬眠明けの猟期にはこんな不思議な狩りの手法が
あるそうです。

冬眠明けが近くなったらねぐらの穴に木枝を詰め込むのです。
熊は怒って抱え込み自分の後ろへとさらい込みます。
それをどんどん繰り返し
とうとう自分の居場所まで無くなってしまうまでになり
すごすごと穴から出てくるというのです。

そこを待ち構えた槍や鉄砲で仕留める  というもの。

やはりヒトの方が一枚上手なんですね。

冬眠明けの時が高価な熊の胆(胆のう)が一年で最も肥大
しているのだそうで、もちろん食事をとってないからなので
そういう意味では一抹の哀れささえ覚えずにはおられませんね。

この熊の胆(くまの い )は昔、奥深い山で暮らす人達にとって
無くてはならない必需品だったと言います。
あらゆる病気に熊の胆を用い、神秘的な効果を発したそうです。

胃腸系はもとよりあらゆる疾病の万能薬
一例では  
卒倒した時には熊の胆を少量湯に溶き飲ませる
小児の夜啼きには熊の胆を少量臍に入れて置くとよい
耳が俄かに痛む時には熊の胆を少量冷水で溶き耳の穴の中に
1,2滴入れるとよい

などとあります。

ところがしまいには街の商業主義にそまった製薬業者が
粗悪なニセ熊の胆を持ち込んで本物を奪い取っていってしまう
というのですから結局一番悪いのはやはりヒトですね。


カニとタコの戦い







富山県八尾といえば「越中おわら節」の風の盆で有名ですが
その南端に大長谷という集落があります。
正確には富山市八尾町中島という住所です。

なだらかな高原地帯がだらだらと続く両端は
急峻な山に囲まれていてさながら長い谷のような
細長い盆地のような地形から大長谷と呼称が付いたのでしょうか

ここに石黒さんという方がおられます。
その三男の石黒木太郎(もくたろう)さんはこの地で生まれ育ち
険しい山を遊び場として育ち、山で学び成長し
今は奥さんと子供さんとで幸せな生活を営んでいます。


ここ大長谷でもご多聞に漏れずイノシシが大繁殖をしています。
イノシシは食べ物を漁るため地中深く穴を掘ります。
小イノシシが掘る穴はその体が入る程度の小さな穴を
成獣イノシシは実に2メートル近くもの穴を掘ります。

そうすると、
雨が降る度に土砂が崩れて大変なことになるのです。
そう、猪の害とは住環境破壊なのです。

全国各地で道路の崩落や住宅地への土砂崩れなどが相次ぎ
しまいには住宅地にまで出没してヒトへの接触事故まで
起こる始末です。
これらはイノシシの繁殖に無為無策で放任していた
言わば「人災」です。

かつて農家が生産物を畑に放置するという事など
考えられませんでした。
ところが最近は売れないもの、小さくて収穫に手間がかかる
出来が良くない物などを畑に放置する人が増えたことも
その繁殖に一役買ってしまったとも指摘されています。

駆除は人間の手で行わなければなりません。
では駆除したイノシシはどうすればいいのか?

ハンターの方々は当初自分たちで食べていました。
野生獣を食べると元気が出ます。
その元気でまた険しい野山を駆け回ることが可能になるのです。

ところが獲物は沢山あるのに
売ってほしいと言う人もいるのに
そのままではどうしょうもありません。

そこでこの木太郎さんが処理場を建て
「食肉処理業」「食肉販売業」の許可を取得し
「大長谷ハンターズジビエ」をスタートしたのです。

ho86.jpg

有り難い事です。
なかなかお金で入手できなかったものがこれで手に入ることとなったのですから。

今はまだ雪が多いのですが道はすっかり除雪されて通行が
出来ます。
ho87.jpg ho88.jpg ho91.jpg

プロアマ問わず手軽にイノシシ料理にトライできる環境が
出来ました。

現場に立つ人ならではの面白い話を沢山聞けましたが
それらはまたいつかの機会にして、
今回は名刺の裏に記された彼のメッセージを転記して
その人柄をご紹介いたしましょう。

”In the ciculation of nature.

大長谷は、富山県南端の深い山の中にある人口約50人の
小さな集落です。

私達はそこで、山の水から米や野菜を育て、木々を薪にして
暖をとり、木の実を拾い、山菜やきのこを採る、山からの
恵みに生かされる暮らしをおくっています。

共に暮らす野生動物たちの命を頂き、暮らしに活かしていく
ことも、自然の環境の中での私たちの営みの一つと
考えています。”



訪れたこの日は大長谷交流センターの屋根の雪下ろし作業
真っ最中。
ho83.jpg ho96.jpg

約2メートルの積雪だそうで元気な若者は引っ張りだこです。
この左の赤い防寒着姿が木太郎さん。
ho95.jpg ho82.jpg ho93.jpg

出来る限りの応援をしたいと思います。