2014.01.08 手打ちとは?
「手打ち」という言葉はよく見る事が多いのですが
これを機械製造=機械打ちの麺に対しての言葉と誤解されて
いる人が多いそうです。

ビッグコミック連載「そばもん」によると
製麺機械がまだ出現していない江戸時代からすでに「手打ち」
という言葉は存在していた  というのです。

それは何故か?

江戸時代にそば切りが爆発的な人気を得て専門店が
沢山出来ました。

そうすると数をこなす必要が出てきます。

そこで小麦粉を混ぜた生地をむしろでくるみ
(当時はナイロン袋が無いので)
足で踏んで延したのです。

それを嫌った純手打ちそば店が「手打ち」

という言葉を使い始めたという説です。

現代では手打ちと表記する場合の決まり事がいくつか
あるそうでして
確か要点を3点ほどクリアーすればOKなのだとか・・。

しかし、何もそんな事をわざわざ決めなくても
手打ちそばは最初から最後まで手だけで行います。

うどん屋さんでも一部工程は足踏みは入っても
ほぼ手だけで行います。

その方が設備投資の必要もないし、また
熟練するとより合理的に美味しくできるからです。

手で作るからこそ、その日その日の微妙な感触で
コントロールが出来るのです。

この全て手作業で行う麺打ちを「純手打ち」と呼びます。

一方私の選択した手打ちは一部工程を機械で行います。
青竹で打ち込み、次に鉄パイプに持ち替えてまで
固く鍛えた麺体はもはや手で延す事が出来ないからです。

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こういうスタイルは「手打ち式」と呼ばれています。
その中でも「青竹手打ち式」というジャンルです。

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青竹打ちの盛んな地方ではその後も手で延しているお店も
ありますが、やはり麺体はうどんに近い柔らかな生地です。

柔らかな生地という事とコシの強弱はイコールでは
ありませんから麺の美味しさを追求する上には無問題です。

ですが、私の理想とする中華麺本来の固さを持ちつつ
讃岐うどんの力強いコシと茹で上がりのソフトな触感

つまりは無理を承知で無いものねだりを捏ね上げてしまおう
という麺を作るには
やはりこの「青竹」で無理やりまとめ上げてしまうしか
他に方法はありませんでした。


さて、今まで長く製麺所さんとお付き合いをしてきて
私なりに理解していることがあります。
「餅は餅屋」ではありませんが、
製麺所さんはやはりこの道の専門家だということです。

あらゆる店の願望を叶え、様々なお店の要求を満たす能力
を持っているのです。
それには長年蓄えた知恵と技があればこそです。

私にはそんな手練れの技はありません。
ですから製麺所さんがやらない手法で時間と手間暇を
かけるどんくさいやり方で作ります。

(ついでに白状するとたまに行ううどん作りの講習会でも目が回ってしまうほど足踏み打ちが苦手です)

そんなに大量に作れなくても
たとえ少量でも「美味しい」と言ってもらえれば成り立つからです。

製麺所さんと同じように機械だけで簡単に作るという選択も
ありました。
短時間で楽に大量に作れます。
でもそれじゃ製麺所さんには恐らく永遠に近く敵わないだろう
と思ったのです。

誰もやりたがらない手間をかけ
誰も使いたがらない高価な食材を使い
誰にも出来ない自分だけの一杯を作ろうと我を通せば

いったいどれだけのものができるのか?
他でもない自分がそれを見てみたいのです。

安易なところで”手打ち”(妥協)は出来ません。

万里の手打ち麺

今現在30%の変容中ですが既に好評です。





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そろそろこのブログも一杯になってきたようですが、
ラーメン屋ですからたまにはラーメンの事も書きましょう

麺の話です。
中華麺とうどんの見た目の違いと言えばまず黄色い色ですね。
次に縮れのある無しでしょうか。
細いうどんも太い中華麺もありますから太さは無関係です。


その黄色い色
以前にも書いたように中華麺に入るかん水の発色効果もありますが、
そもそもは卵を加えた卵麺を高級なもの上等なものとして
喜んだというのが最初のようです。

(現在当店では、麺に卵は一切使用していない事を先にお断りしておきます。)

では、
卵が入るとどういう影響が出る(起こる)のか
大和製作所さん(製麺機メーカー)が出している本が
実に解りやすくまとめてありますので引用させてもらいます。

(引用要約ここから)
卵を使用する場合卵白として使用する場合と、全卵を使用する場合とがあり、
それぞれ使用目的が異なります。
卵白の特徴として一番解りやすい例は、
「ゆで卵の白身部分」です。

食感としては表面の歯ざわりは弾力を持っていながら、一旦歯が立ちこむと亀裂が走り
歯切れの良さがあります。
また別の一面、この白身の部分を長時間煮炊きをしても
ふやけることが無いことから判るように水を通さない性質です。

この「歯切れの良い弾力」と共に麺が水を吸いにくい、
言い換えると「茹で延びに強い」性質を麺に与えてくれます。
これはラーメンには大きなメリットと思われがちですが
とんでもない欠点を併せ持っています。

「スープを吸わなくなる」という点です。
「麺にスープが乗らない、馴染まない」と言う事になるのです。
ですから卵白を使用する時はそれらの妥協点を探らなければなりません。

全卵は風味付けと着色です。
卵白のような著しい効果は望めません。
これは卵黄が歯応えも弱く、水も通しやすいからです。

実際には衛生面などを考慮して粉卵が最適です。
原料小麦粉に対し生卵で5%、粉卵で1%以上使用した場合に
卵麺としての表示が可能です。
(引用ここまで)

はい実に明瞭ですね、さすがは実力派のメーカーさんです。

つまり卵の入った麺は美味しい
という認識が初めにある訳です。
実際の所、全卵を加えても意外と発色はしません。
ほんの僅かです。
卵で普通の黄色を出すとすれば大変な量が必要です。

ですからほとんどの卵麺には着色料も併用されています。
昔は化学製品でしたが嫌われるようになり今では
クチナシ色素で色づけされています。

クチナシは黄飯(おうはん)
という黄色く炊き上げるご飯に使用されるほど濃い色が出ます。

昔は黄色いほど値打ちがあるように見せかけられたのでしょうが
今は強い色は敬遠されます。
まして「卵麺という表示が可能です」と書いてある位
ですから少量しか加えてなくても表示したい業者が多かった
のでしょう。

その方が『値打ちがつけられる』と
思っていたであろうことは容易に想像がつきます。
少しでも付加価値をつけて高く売りたいという心情だった
のでしょう。

ところが時代はかわり
今では卵アレルギーの人が多くなってそんな表示があると
販促効果としてはむしろマイナスです。

市販の某メーカー生麺の袋の裏を見ると
驚くほどの添加物が表示されています。
常温で何日も保存のきく美味しい麺を作ろうとするとこんなにも
沢山の添加物が必要なんですね。

もうひとつ乾麺を手に取ります
添加物は少なめです。

では何故添加物の少ない麺を作る技術があるのに
先の添加物まみれのような麺がいまだに売られているのでしょうか?

それを知る為にもまず試食してみましょう。
添加物の多い常温の麺です。

口に運ぶともう鼻先に近づいただけでかん水が臭います。
でも、
実際に食べてみると実に中華麺らしい食感なんですね。
歯応え、喉越し、唇を通過するときの擦過感
どれをとっても非の打ち所の無い麺です。

そのひとつひとつの特徴を産む、持たせる為に多くの
添加物が使われているわけです。
だからメーカーは
「添加物は他ならぬ消費者が望んだものじゃないですか」
などとたわごとをぬかすのです。

誰かそんなリクエストを出しました?
「旨ければ何を入れてもいいから」なんて

かつて輸入ワインに不凍液が混入されていたことが発覚して
大騒動になった事があります。
飲み口が甘くなって「貴腐ワイン」のようになるからと
行われ始めたのが広まったと言います。

それは消費者が望んでそうなったのでしょうか?
違います
美味しく感じたから手に取られたのであって
美味しくなるなら何を入れても構わないなんて
誰も言ってませんってば。

メーカーと言うのはそこの所を逆手に取った言い回しが
実に巧みです。
猛々しいと言い直してもいいくらいに。

とはいえ
便利で日持ちがして安くてしかも美味しい
と無いものねだりばかリしていては
いつまでたってもそんなメーカーの思うつぼなのも確かです。

そうしていつの間にか世の中の食べものがどんどん酷くなって行ったんです。

おっとついまた話が明後日の方に逸れてしまいました。

卵なんか入れなくたって
怪しげで、台所では見たことも無いようなカタカタばかりの
薬品まがいのものを入れなくたって
手打ちで作れば美味しい麺が出来ます。

かつては名品の証とされた黄色い色が
今ではアレルギーの人達から忌み嫌われるように
今当たり前の添加物がいずれ実害を伴う様々な障害を
もたらすことが実感されるようになるやも知れません。

いま平気な人たちはまだそれを感じていないに過ぎないのです。

私もかつてはスーパーで蕎麦の生麺を何度か購入して
家で茹でて食べました。
ところがある年、
年末とて自作する時間が無くこれを買ってきて年越しそばにしようと
袋を開けたとたん
その悪臭に気付いたのです。

何とも言えぬ胸糞の悪くなる匂い (失礼 
嫌らしい化学薬品の匂い
食べ物とは思えなくて即、捨てました。

PGという名の添加物の匂いでした。
いえ
裏書きを見たってそんな事は書いてません。
酒精と書いてあるだけです。
これを保存目的にアルコールを加えているんだろうか?

と思ったらメーカーの思うつぼです。

そのアルコールにPGが加えられているのです。
興味のある方は検索してみてください。
ご承知のように予め製品に加えられたものまでは
表示義務はありません。
(キャリーオーバー)

雲の上の官僚は庶民の方など向いていないという
結果のひとつですね。

そろそろ年越しそばの季節です。
生麺の蕎麦と乾麺の蕎麦
匂いを嗅ぎ比べてみればどなたでもお解りになるはずです。

それはラーメンの麺でも同じです。
美味しい匂いと美味しくない匂いを比べてみてください。














麺に関する誤解や不理解の解明を書き続けています。
「う~ん小麦粉本来の香り」
などといった誤解を解く比較対象に選んだのはうどん

麦粉臭い話の触媒に取り上げたのは蕎麦でした。

さて、今回は言葉に置き換えるのが至難の「コシ」です。

日本人にとってこれほどよく使われるのに
これほど言葉にしづらいものもないと思います。

ペンキを塗る刷毛でもコシが求められます。
女性が使う化粧用の刷毛、筆、
これらは柔らかさの中にしっかりと受け止める力といった
使い心地を求められることをたった2文字で伝えています。

さて、麺ではどうでしょうか?
柔らかさの中にしっかりとした言わば「芯のようなもの」
それは正しくしつらえられた手打ち麺にあるものです。

噛み始めの最初はふっくらと柔らかく無抵抗のように歯が入り込み
次第に押し返す力が感じられるようになり
最後には小気味よくプツリと切れる様です。

ふわり、むぎゅうぅぅ、ぷつり  です。
一本の麺の中には多層構造があるからこういう事が起ります。

では手打ちではない麺の「コシ」とは何でしょうか?
答え
正しい意味ではそれは存在しません。

いちどきに作り上げるタイプの麺には多層構造が作られていないからです。
ですから茹で加減でそれを演出するしかありません。
それを水分勾配と言います。

水分勾配のみです。

表面の加水が十分な部分と加水の少ない中心部への
水分含有の角度を表す言葉とでも言いましょうか・・

つまり固茹での麺の水分勾配は大きく
スーパーに並んでいるような茹で伸びしたうどんはほぼ0です。

麺とは本来小麦粉を水で練ったものを指す言葉です。
イタリアではパスタ、 だから漢字の一部に麦が入っています。
 
では手打ちではあっても麦以外の素材でできた麺線ではというと
蕎麦、米粉、その他あらゆるものが存在します。
それらに「コシ」はアリやナシや?  というと
やはり正確な意味では ナシ となるのです。

麺線以外に小麦粉の多層構造といえばクロワッサンの生地
などがあります。
バターなどの油脂を塗りながら何度も折りたたむから
焼いたときに表面はサクサクで中はフワリと仕上がる訳
ですが、これなども大きくガブリとやるとコシが味わえます。

肉で言えばロース肉はほぼ一体構造ですから
火は通りやすいですよね。

ところが肩ロース肉では小さな筋肉の束が集まったような
構造ですから火は通りにくいのですが
この二つが一体構造の麺と多層構造の麺との違いに例える事も出来ます。

鶏肉で例えるなら
一体構造のむね肉と筋肉束の収束したもも肉という具合に・・。

つまり火の通りと茹でた場合の水分の浸透具合は似ているからです。

手打ち麺の何度も畳んでは伸ばすという繰り返しの作業で
形成される多層構造麺では水分勾配の出来方が単純ではなく
熱と水分の浸透が段差を持ちながら進行するのです。

クロワッサンの焼け方火の通り方が多層構造の一枚づつ
に違いがあるように   です。

これが一体構造の麺の単純で直線的な水分勾配とは
異なる歯ごたえを生むのです。

これがコシです。
もはや水分勾配などとも言われません。
コシ
このたった二文字で麺の美味しさが表現されるのです。

そう、
わざわざ言わなくても解る、知ってる美味しさ

だったのです
昔から日本人は杵つき餅の出来たての美味しさを旨さを
そのコシを。

ハケでも筆でもコシと表現されるのは同じです。
もちろん小麦粉とは材質は違いますが
最初はふわりと柔らかく次第に反発力を強めていき
放すと素直に元に戻る柔と剛を併せ持ったもの。

これはやはりコシと表現されるのも無理ありませんね。


次回は実際にビーフンを作りながら追求してみましょう。

 
私達日本人は小麦粉由来で無くても細長い麺線状であれば
全て麺料理として受け止めます。

蕎麦、春雨、葛切、はてはところてん、魚のすり身だって
ダシに放てば魚そうめんと呼び南瓜ですらがそうめん南瓜
と呼び麺の仲間のようにとらえます。

その中から今回は
「コシ」を語る比較としてビーフンを取り上げてみましょう。
ご存じのようにコメの粉で出来ているから米粉と書いて
ビーフンと呼びます。

中国や台湾ではそのままビーフンと呼びます。
タイやベトナムではこれが大人気で
タイではその太さや幅の違いから様々なものが
作られています。

ベトナムでは毎朝スープに入れた「フォー」を食べないと
一日が始まらないと言われるほどです。

いっぽう日本では今まで正しい作り方が知られていなかった
為と不出来な商品が多かったため長く低迷していました。

原因の一は戻し過ぎだったのです。

細いタイプを長々とぬるま湯に漬け過ぎてふやけ切った
のを手早く調味できない人がゴリゴリとフライパンで
かき混ぜすぎてブツブツに細かく千切れてしまったものを
食べさせられると誰だってビーフン嫌いになってしまいます。

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乾燥保存してあるものですから水、またはぬるま湯などで
戻します。
裏書きの通りに作れば誰にでも簡単に出来ます。

まず、台湾の細いタイプです。
この細いのは焼きビーフン向きです。
台湾でもやや太めの物は汁ビーフン向きになります。

ぬるま湯に漬けて置き、その間具材を用意します.

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今回はエビなどの他になんでも美味しいのですが
旨みを吸わせる重要なアイテムとして干しシイタケと
ベトナムの干しエビの刻んだものをそれぞれ水に戻しておきます


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時たま、ビーフンの硬さをチェック。
硬いのは大丈夫なのです  後でどれだけでも吸水させる事
が出来るから。

ダメなのが戻し過ぎ、ふやけ過ぎです。
後戻りできません。

こうして曲げてみます。
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硬すぎるのは鋭角的に曲がりますが丸く曲がる位に
なったらザルに上げておきます。
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フライパンに油を少々引き具材を軽く炒めます。
酒を入れ
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そして干しエビを戻し汁のまま入れます。
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味付けは塩コショウ、それにトナミ醤油さんのイカ魚醤。
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これだけで簡単に味が決まります。
正しく仕込まれた魚醤には旨みがぎっしりと詰まっているからです。
そこにビーフンを加え炒めます。
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実に簡単に作れるのですが大事なコツは吸水です。
幾分固めに上げたビーフンにエビやシイタケの戻し汁を
吸水させて好みの硬さに仕上げる。

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最後にごま油をひと混ぜして完成です。

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心地よい歯ごたえの美味しい焼きビーフンです。

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ふやけビーフンしか知らなかった人がこれを食べると
目からウロコとなりますが逆にそんなものを知らない
若い世代は素直に旨い麺料理だと受け入れます。

具材はなんでもOK。
味付けだって和風、本場風、イタリアン、カレーと
ご飯がどんな味にも合うように自在に作れる便利な食材です。

でもここには美味しい歯ごたえはあってもコシはありません。

お次はタイの太いタイプです。
細いセンミー
平たいセンヤイ
太いセンレック と大まかに分けられているうちの

このセンレックを使ってフォー(汁ビーフン)を作りましょう。
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これがコシを解明する大きなヒントになってくれるはずです。

ぬるま湯に付けた後沸騰した湯で茹でます。
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全て裏書きしてある通りに行いましょう。

スープに具材を入れ塩コショウ、トナミ醤油さんの魚醤
これも同じです。
味が決まったらごま油を数滴落とし完成

丼にセンレックを盛り、上から掛けます。
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ラーメンで言えばタンメンと要領は同じです。

食べると程よい歯ごたえはもちろんですが
美味しい弾力があるのです。
解っているのにこれをコシと呼びそうになります。
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これはコシじゃありません。

美味しい弾力があるというだけなのです。

一体構造の麺なのでコシがないから
太くしたり固ゆでにする必要があるのです。

こんにゃくでも硬いのもあれば柔らかいのもあります。
つまり小麦粉製多層構造じゃないものでは
茹で加減や太さで「硬さと弾力」を持たせていると言う訳です。

ここで「ところてん」を引き合いにして一体構造麺というもの
を考えてみましょう。
天草(てんぐさ)という海藻を煮だして汁をバットで固めて
天突きと呼ばれる道具で突き出します。

生地は完全な一体構造です。
天草の割合を多くすれば、つまり濃度を濃くすると
強い弾力が得られるという訳です。

他のものではどうでしょう?
ビーフン(フォー)ではタピオカ澱粉が添加されたりします。
冷凍うどんでも澱粉が入ります。

よく勘違いされる蕎麦について触れましょう。
ざるの十割蕎麦では心地よい歯ごたえが得られます。
これは焼きビーフンのやや硬めに仕上げたものと
同類の硬さです。

これを食べやすく、打ちやすくするのに小麦粉を2割程度
加えたものがいわゆる2・8蕎麦ですが
その二割を中力粉ではなく強力粉で打つとどうなるでしょう?

答え、食べ慣れた人でも十割か? というぐらいの
硬い蕎麦になります。
ですからこれを食べた人がつい「コシ」と表現してしまうのです。

そう、一体構造の麺ではコシではなく水分勾配と言う名の
「硬さ」が求められているのです。

粉の種類、濃度、太さ、ゆで時間すなわち吸水加減
これらは全て硬さで食べ心地を演出あるいは表現
させるためのファクターなのです。

多層構造を持つ麺ならそんなものは一切不要です。
柔らかく茹でても、固ゆででもしっかりコシはあります。

もちろんどんな麺を美味しいと感じるかは人それぞれです。
また、何に「コシ」を感じてどう語るのも自由です。
中には学校給食のソフト麺でも
「コシがあるから好きだ」と語る人もいるのですから。

でも、本物のコシを持っているとこんなことが起こります。
当店のお土産専用の「焼きラーメン」です。
生麺を茹でて焼きます。
冷ましてパックします。
冷凍保存します。

お客様がお買い求めになって持ち帰られます。
その間に冷凍は解凍されてしまいます。
それを自宅でもう一度冷凍庫で保存されます。
電子レンジで加熱して召し上がられます。

その麺にちゃんとコシがあるんですよ。
まさに手打ち多層構造の麺にしか出来ない技です。

ちなみに汁ビーフンにカレー粉を投入するとこんな具合です。
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カレー味のビーフンも実に美味しいです。
一度お試しください。

長い記事をお読みくださりありがとうございます。










蕎麦にはコシはありませんと書きましたが、
数ある乾麺の中にはコシのある蕎麦もあります。

でも
よく見かけるなま蕎麦の「手打ち」には確かにありません。
加水をして一気に練り上げるものは一体構造になっているからです。

乾麺でざるそばにして美味しい物というのは意外に
数少ないのですが、コシのある乾麺蕎麦というのは
ほとんど知りません。

私の知ってる中では富山県 五箇山の利賀手延べ蕎麦が唯一それです。
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きっと他にも沢山あるでしょうが、
もし新たに出会ったらおいおいご紹介いたしましょう。

今回は利賀です。
その前に手打ちと手延べの違いをご存知でしょうか?
簡単に復習しておきましょう。

手打ちは店頭などでも見ることができます。
こね鉢と呼ばれる木鉢で蕎麦を練って麺台で伸ばし
包丁で切るものです。

うどんでもよく似た作り方をしますが、
うどんは麺体を足で踏み折り畳んでは踏むという
工程で多層構造を作り、寝かしでコシを強めるという
作業があります。

蕎麦はすぐ伸ばすから多層構造が出来ないのです。
手打ちというカテゴリーでは蕎麦もうどんも同じですが
麺体の中は全く異質な物であるとお解りいただけますでしょうか?

ところが手延べは更に次元が違います。

そうめんでご説明しましょう。

小麦粉を塩水と油で練り桶に入れて寝かします。
包丁で渦巻のように切り目を入れ油を手に付けて
ひねりながら伸ばします。
それを何度か繰り返しある程度細くなったところで桟にかけて
更に寝かしてから引っ張り伸ばして最後は干して完成となるのです。

ですからこれは店頭で行われるようなものではありません。
気候や気温で微妙に影響されます。

富山県にはこれの有名な大門そうめん(おおかど)がありますが、
気温と風を読むのが難しいと言います。

讃岐うどんの釜前でも出てきましたね
この「読む」ことが難しいのはどこでも同じです。

農業の話ですが
ある人が天候不順で作物の出来が悪かったと気候を言い訳に
したそうです。
すると名人が
「そんなことは織り込んでおかないあんたが未熟なんだ」と
斬り捨てたというのです。

もっともその名人ですらがあらゆる事を想定しているにも
かかわらず予想外の事が起る   と言います。
「だから農業は面白い」とは名人ならではの言ですが

まだ見ぬ先を読むのがいかに難しいか
という話です。

話を戻しましょう。
ビックコミックの「そばもん」にこの手延べの事が今週号に
詳しく載っていたので引用させていただきましょう。

手延べそうめんは伸ばすときに植物油を手に付けて伸ばします。
生地にも伸ばす時にも油が入るのでこれを油入り法と呼びます。
いっぽう油の入らない油不入り法では米粉を使用し、その分
そうめんほど細く伸ばせないためやや太めに出来上がる
ものが「ひやむぎ」
もっと太い仕上げにしたものを「手延べうどん」
(引用ここまで)

これらはひねりながら伸ばす時に構造的に
また適度に時間をかけて乾燥させることで寝かし効果を
与えてコシが生まれるのです。

ですから仕込み時期は主に冬です。
夏の暑い空気の中では過乾燥ぎみとなるのでしょう。

では利賀の手延べ蕎麦ではどうでしょうか?
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小麦粉がそば粉より先に書いてあります。
これはそば粉より小麦粉のほうが多いという意味です。

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実際に食べてみましょう。
不思議な食感です。
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蕎麦のザラリとした舌触りは全く無くつるりとしています。
でも、美味しい蕎麦ですhb75.jpg


正確に言うならばそうめんのように作られた蕎麦だから
そうめんに近いのも無理ありませんがこれはこれで
独特の食べ心地というしかありません。

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村の9割以上を森林が占める厳しい環境の中で古来から
受け継がれて来たことを踏まえるとこれはかつて
製粉技術がまだ日本全体で未熟だった頃

私も子供のころ食べたあの蕎麦殻の混入したザラザラで
チクチクした恐ろしく不味い蕎麦をどうにかして美味しく
食べよう、子供にも美味しく食べさせたいと
願ったであろう結果なのでしょうね。

新潟では「へぎそば」がそうでした。
滑らかな食べ心地を得るためでしょう。
「ふのり」を混ぜて作られていました。

利賀手延べ蕎麦を冷たいまま食べると
まったくそうめんと同じような食感です。
もちろんこれはこれでつるりとして美味しく食べられます。

今度は温かい「かしわ蕎麦」にしてみました。
ダシにカエシを入れ関東風の仕立てにします。
ネギと下味をつけた鶏肉を煮たてて
茹でた蕎麦に掛けます。
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これにははっきりとコシを感じます。
細いのですがムニムニとした他の乾麺蕎麦には無い
明確なコシが感じられるのです。
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これは温かい仕立てにした方がよりはっきりと
美味しさが伝わりますね。

蕎麦というよりむしろそうめんだろ?
という突っ込みも聞こえるような気もしますが
古来から蕎麦をいかに美味しく食べるかと
連綿と受け継がれてきた事を考えるとやはりこれは
美味しいお蕎麦でしたと言わざるを得ません。

コシを堪能できる珍しい蕎麦です。
さすが手延べの奥深い技
美味しくいただけました。
ご馳走様でした。






さて、長々とコシを尋ねる話を続けてまいりましたが
ここで家庭でも簡単にそれを実感できるものを実践しましょう。

手打ちうどんです。
ちっとも面倒じゃありません。
足で踏むから億劫だったり食べ物を足で?!などと
二の足を踏んでしまう    あ、もう踏んでしまってる?

ホームセンターでこんな丸い棒を買ってきたらもうOKです。
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長さは肩幅ほどもあれば十分。
お店で出すような何キロも作ろうというのなら別ですが
数人分ならこれで楽勝で作れます。

今回は小麦粉(中力粉)を200g
塩  5%   10g
水  47%  94g  これが加水率
ボウルに粉を200g計ります。
別のボウルに塩を10g入れた中に水を94gまで加えます。
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ここで勘違いされがちなのが 10g+94g  ではない
という事です。 10g+水=94g です。
なお94CCとも違います。 (微妙ですが)
(粉の水分含有率でも微妙な差異があります45~52%前後 )

塩をよく溶かしたら粉に入れます。
菜箸でよくかき混ぜます。
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ある程度まとまってきたらビニール袋に移して30分~1時間
そのまま放置します。
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普通はここから足で踏み伸ばしますが今回は手で行うのです。

テーブルに置き麺棒を上から押し付けます。
端から十分押さえつけたら両端を折り畳みます。
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これ一回で3層になります。

角度を90度動かしてもう一度繰り返し両端を折り曲げます。
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角度を90度動かしてこれをと、合計5回繰り返すと
この様に程よく水分が回ったやや硬めの生地となります。
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一日目はここまで  一晩室温で休ませます。
一晩経つと生地はこんなに柔らかく戻っています。
小指で軽く押しただけでめり込むほど
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ここで打ち粉が必要になります。
私たちは焼成澱粉というサラサラしたものを使いますが
ご家庭では普通の片栗粉で十分です。
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テーブルに薄く広げて生地をのせ麺棒にも粉を付けて
「伸ばし」に入りましょう。

まず対角線にのします。
これを角出しと言い、なるべく四角く伸ばすための重要な
工程です。
後はご自由に縦横無尽に伸ばして結構。
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ある程度伸びたらこうして麺棒に巻きつけて
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トントンと手で叩くように中心から横へと手のひらを
移動させつつ転がします。

向こう側でひっくり返してもう一度という風に・・

厚さ数ミリになったら三つ折りに畳みまな板に移し
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カットします。

太かろうが細かろうがあまり気にしなくても大丈夫。
茹で加減にはさほど影響は出ません。

切り終えたら出番が来るまで冷蔵庫保存。

意外に話が長くなったので続きは次回にしましょう。

さて、コシを実感してもらうために何を作りましょうか?

今回は足で踏まないで手打ちうどんを作るまででした。


うどんを美味しく食べると言えば
ざるうどん、掛けうどん、釜たま と色々ですが
それらは水分勾配しか持っていないエセうどんでも
そこそこ美味しくなってくれるものです。

本物のうどんをせっかく打ったのなら”ならではっ”という
ものを作りましょう。
「焼きうどん」です。

え”~焼うどん~っ?
  と思った人 あなたは甘い! 

ここで中華料理店時代の昔話をしましょう。

某寿司店での事
たまたま隣り合わせたウチの常連客が
「貴方のトコの焼きそばが好きで行ってるんだ」 と
嬉しい事を言ってくれたのです。

毎度私が書いているように
正しく下ごしらえをした焼きそば麺はアルファ化(糊化)
されており低加水麺であってもコシのあるような美味しい
弾力を持っているからなのですが、

それを聞いた寿司店親父さん
「ほう、どんな焼きそばなんや?」と口を挟んできました
それで仕込み方法を飛ばして
「具材と麺を醤油味で炒めるんです」
と簡単に答えたところ

「なんや  焼きうどんみたいなもんか」
と鼻で笑ったのです。

この一言でどの程度の食遍歴を持っているか
どの程度の食に対する情熱があるのかが知れます。
迂闊な一言というのは裸と同じ、恐ろしいものです。
道理でそこの・・・・・・・・・・ ゴホゴホ 

失礼しました、年寄りの昔話でした。

焼きうどんの発祥地では乾麺からゆでて作るそうです。
パスタでいうところのアルデンテ
すなわち85%程度の茹で加減、まだ芯の残る部分を残す
ここに美味しい味を染み込ませて程よい硬さに仕上げる
という工程が必要なのです。

ではどんな味を染み込ませるか?
豪華な具材でブイヤベース風にするか
肉たっぷりのイタリアン仕立てか
あるいはカレー味か?   と自在すぎて悩んだ結果

「ネギ」にしました。
ネギ、カツオダシ、醤油とみりん同割のカエシ 花ガツオ

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それだけ用意しました。
ではネギの切り方は?
魯山人氏いわく。”ネギを加熱する時はぶつ切りに限る”

世に「魯山人のすき焼き」と言うものがあり
平らなすき焼き鍋にびっしりと同じ長さに切り揃えたネギを
立て並べて煮た   と言うものです。

先に白髪ねぎは歯に挟まるから斜め切りにと書きましたが
加熱する時はこの切り方がベストなのです。
まさにケース・バイ・ケース。

うどんをたっぷりの湯で茹でます。
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沸騰した湯にうどんを入れ蓋をします。
これで再沸騰までの時間を最短にしましょう。(これ重要)

沸騰したらやや弱めて約10分
ラーメンのようにそのまま熱いスープに入れて完成という
場合はつまんで硬さを見ればOKなのですが
うどんはつまんでから水に冷やしてから食べてみます。

程よい硬さになったらザルに空けて水洗い。
これで表面の片栗粉を落として締めておきます。
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フライパンに油を引いてネギを中火でじっくりと炒めます。
ゆっくり火を入れる事で甘味が立ちます。
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うどんを投入して炒めてカツオダシを加えます。
カエシを加え軽く煮込みます。
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これを私は味を染み込ませるために圧をかける  と
表現しています。
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味見と硬さをチェックして仕上げます。

皿に盛って花ガツオを少々掛ければ完成です。
ネギの焼きうどん
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確かなコシが堪能出来る美味しい焼きうどんになりました。
ネギが甘くて中の芯の部分などとろりと蕩けます。
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ゴテゴテと具材を多くしないで大正解でした。
うどんとネギだけで御馳走なのです。

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「なんや焼きうどんか」   とは言わせません。

本物の手打ちならではの美味しさです。

ぜひお試しください。
コシの話  了。




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