2010.06.17 麺の話
小麦粉を水で練ると例えそれがどんな形態であれ全て「麺」となります。
イタリア語では「パスタ」です。

私達日本人に馴染みのある「うどん粉」とは
中力粉です。
塩水を加えて練り、細く切るとうどんになります。
これが多加水麺の代表です。

TVなどでよく見る
手打ちそばなども(小麦粉ではありませんが)
やや多加水麺の手法といえます。

いっぽうラーメンでは強力粉を使います。
低加水麺だと手でまとまりません。
ぱらぱらとばらけてしまいます。
ですから練りようがありません。
加水が少ないとはそういう事なんです。

そこで機械のローラーで強力に圧着して麺体にします。


ご承知のようにそば粉にはその粉の栄養成分の違いから
一番粉 二番粉 三番粉 と分類されます
これはソバの部位や製粉、配合などの違いからうまれます。
そば粉と小麦粉の違い

これと比べ小麦粉では市販品では既に混合されたものしか無く、
灰分(かいぶん、ミネラル)の含有量を示した表を頼りに配合粉を選ぶのです。

麺類販売店は製麺所から仕入れます
製麺所は問屋から
問屋は製粉所から仕入れます

製粉所とは
粉のプロ中のプロです。
粉の配合から販売まで行うホンモノのプロは
出荷段階での保水率をコンマ数パーセントにまでコントロールし、
管理して最善の状態で製麺にまで届くように気配りをします。
ですから当店でも粉を大型冷蔵庫で保管して保水率が狂わないように管理しています。

加水が0.1%違うだけでもがらりと変わる世界だからこその管理です。

そのプロたちが小麦粉の食味でもっとも重視するのは
「つるみ感」です。
つるつるとした食感のことです。

灰分が多くなればつるみ感は失われていきます。
その最たるのが「全粒粉」ですが、
その代わり灰分にはミネラルなどの栄養素と風味や香りといったものが含まれます。

その分類をそば粉とは違い小麦粉では
一等粉、二等粉などと呼びます。

一等粉はつるみ感が豊富で色も白く
二等粉以下は灰分の増加に伴ってつるみ感が失われるのと引きかえに風味感が増します。

風味感とあえて書きましょう。
風味とは何でしょうか?

小麦の香り?

それは確かにあるのでしょうか?
良い香り?
小麦臭い匂い?

粉を扱う業界では香りの話題はあまり出ません。
「麦粉くさい」という話題の方がむしろ多く出ます。

そうです
風味感というのは食べた時に口腔内から鼻腔に抜ける微かな穀物香のことです。
それはプンプン匂うというものではありません。
どちらかと言えば存在しないと言ってもいいほどの香りです。
ですから「なんとなく幸福感を伴って感じる」という程度のものなのです。
それは蕎麦でも同じです。

卓上に供されたときにそれがザル蕎麦であれ、掛けそばであれ
ラーメンであれ、うどんであっても
麺を持ち上げて鼻を近づけてクンクンと嗅いでも滅多に感じないはずです。

蕎麦で言うと
かつて手打ち蕎麦店主に伺った所、
「匂いなんかありませんよ」ときっぱりと言われました。
「蕎麦がきなら香りは立っているでしょうね」
「ザルもね、水回しの時には多少香りは立ちますよ」
 でもね 考えても見てくださいと続けます
練ってから切り、それを茹で上げてからじゃぶじゃぶと水洗いする時に香りなんか飛んじゃいますよ

無理もありませんね
やはり食べる時の微かな香りは蕎麦の内部から零れ落ち
口腔内を経由して鼻に抜ける
美味しい蕎麦を食べているという至福感に付随した風味感だったのです。

では小麦粉の場合はどうでしょうか。
次回に実験画像を張りながら解説をしますが蕎麦よりもっと微少な香りと言っておきましょう。
むしろ「麦粉臭さ」の場合が多いのが現状です。
粉や麺の保存状態が悪かったり、
茹で方が足りなかったりするとそうなります。

生っぽいような、粉っぽいような、明確な穀物臭です。
ホワイトソースの不十分な加熱調理のもので感じる事もあります。
そうめんや冷麦の茹でたりない、洗い足りないときにも感じる事もあるはずです。

蕎麦は生茹ででも食べれます。
ところが小麦粉は生茹でだとお腹をこわします。
だから「麦粉臭い」というのは一種の危険信号を発しているんだと捉える事ができます。

さて、私の本業に入りましょう。
ラーメンではどうでしょうか?

ラーメンの匂い、香り そんなものをひとくくりにして書いてみましょう

なんだかまたまた危険水域に入りそうな予感に満ちつつ
次回に続きます。

最後に今は亡き達人の薀蓄に富んだ名言を添えておきます。

「美味しい物ってのは良い匂いしかあってはならないんだ」
「良くない匂いがあるって事は、それは本当に美味しいものじゃないってことなんだ」

しかと肝に銘じて日々を努めております。
合掌



 
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本来、味覚は美食の為だけに在ったのではないはずです。
腐ったもの、毒のあるものなどを感知する自衛の為の最終チェックの役目を担っていたはずです。
臭覚も同じです。
口に入れる前に匂いを嗅いで安全か新鮮かを確かめなければいけません。

だから!というのも今更ですが
両者には密接なつながりがあります。
どんなに美味しいものを食べる時でも
例えば茶碗を持つ指先に灯油の臭いなどがほんの少し付いているだけで
もう美味しく感じることができません。

だから良くない匂いを排除しなければいけないのです。
といって食品全てを網羅するほどのヒマもないので
ラーメンに限定して書いてみます。

では、ラーメンにはどんな良くない匂いの可能性があるでしょうか?

ネギの古くなった臭い。
(硫酸系の悪くなった臭いは強烈です)
メンマの古くなった醗酵臭。
(特に塩メンマの経時品は頭痛がするほど)
チャーシューの肉臭いもの。
(輸入豚の飼料由来の生煮えのような異臭。原因は抗生物質)
脂の酸化臭、スープの劣化臭
(店外からも臭います)
麺のかん水過多によるアンモニア臭
(かん水性悪説ではありません、入れすぎなだけです)
麺の保存状態の不適によるやや醗酵したような臭い
(経時または高温のため)
茹で方の不適による麦粉臭さ
(湯の不適)

これらには全て原因と対策、改良案がありますが今回は特に小麦粉の風味と勘違いをされる事の多い「かん水」に限って書いてみましょう。
よく聞く割には誤解の多いかん水です。

主成分はアルカリ性の物質で天然由来のものと化学合成のものがあります。
かん水には色々な種類があり、その全てを試したわけじゃありませんが
現在当店で使用しているものは液体タイプのものです。

かつて入手困難だった時代に灰汁の上澄み液や苛性ソーダなどを代用した事があったそうで
それがかん水のイメージを甚だしく貶めてしまったと言われています。
現在では例えば、中国料理では野菜を色よく茹で上げる時などに普通に茹で水に加えたりする位安全なものとされています。

これが無色透明で無臭なのです。
ここから誤解その一が始まっているようです。
先日、作り比べをしましたのでその画像を張りながら話を進めます。

  sb 001 sb 005


中力の二等粉を同量で二杯用意し、一方には塩と水だけ。
そして他方には同量の塩と低かん水を加えます。
灰分の多い粉です。

つまりかん水以外の条件を全く同じにして製麺する  という事です。
ただし、これはあくまでかん水の小麦粉に対する働きを実証するためであり、
必ずしも最善の麺を作るための作業ではありません。
その点を誤解なさらないようにご理解ください。

かん水には小麦粉に出会うと収斂作用があります。
つまり、「まとまり、縮みやすくなる」のです。
もうひとつやや黄色く発色します。

そして独特の香りを発します。

このかん水の原液は濃度が高いので水で薄めて使用します。
ウイスキーの水割りのようなものです。
この濃度を光学式の機器で計測をして一定を維持します。
この時の値を「ボーメ度」と言います。
値が高いほど濃度が濃く、かん水臭い麺になります。
低ければさほど気になりません。

今回は極低かん水で作りました。
それでも違いは明瞭に表れます。
水回し(加水)段階でもうかん水臭が出ます。
打ち込み、畳みまで全て同じ回数で打ちました。
   sb 007 sb 010


色   左は白っぽいのに比べ右はやや黄色味を帯びています。
堅さ  左はふっくらと柔らかい、右は堅い
匂い  左 穀物臭  右 かん水臭

そして茹でます。
茹で上がり時間にまではっきりと差異が出ます。
実際やって比べるまでこれほどとは思いませんでした。

水洗いしてザルに上げました。
左がうどん   右が中華麺です。

sb 017



まず、そのまま匂いを嗅ぎます。
左が穀物香がほどよく立ちます。
そして、右がかん水の匂い。

  sb 018 sb 019


どちらかと言えば左に比べると右のかん水の方がやや不快です。
ただし、これはそのまま嗅いだ時の話で
今度は何も付けずに食べますと
どちらも風味を感じることが出来ます。
どちらも不快感はありません。

それどころかかん水の入った右の方が小麦粉の風味として感じるから不思議です。
次にツユを付けて食べます。

左の方はツユに隠れてしまいほとんど風味を感じません。
やはり蕎麦に比べると数段香りが弱いです。
対して右は風味感を強く感じます。
仕掛けをした本人ですらつい
「これって小麦粉の香りなのか?」と思ってしまいそうです。

巷には麺を一口すすり
「う~ん!小麦粉本来の香り!」という評論家のような
語りが蔓延し、その全てがそうだとは言いませんが
相当、勘違いが多そうですね。

小麦粉本来というより中華麺らしいという表現がベターかと思われます。

では、かん水を入れないと中華麺にはならないのでしょうか?
いえ、他に卵を入れる方法もあります。
全卵、または卵白を加える方法です。
以前にも書きましたが
私は当初こちらの方を指向していました。

しかし、実際はこちらの方がアレルギーなどで実害が多い事に気づき止めました。
卵の殻を焼いて作る焼成カルシュゥムを加えるという手もありますが
やはりアレルギー反応が出るそうです。

ここで話を整理しましょう。
日本古来の「うどん粉」ではうどんが最適な麺なのです。
なぜなら地粉(内麦)はグルテンが弱いから多加水で「強靭なコシ」を作ってやり
なお食べ応えを求めるなら太くする必要があったわけです。

対して輸入粉(外麦)にはグルテン含有率が高いので
低加水でもコシと錯覚させるに充分な弾力が得られるのです。
外麦強力粉+かん水で
食べ応えのある強いコシがある(ような)麺の出来上がりだったわけです。

こうして因子を分解してしまえば後の方程式は簡単です。

内麦強力粉を主体に低加水で製麺するには
+グルテンの添加強化+やや多めのかん水
  
となります。

これに比べて
外麦強力粉を主に多加水で製麺すると+少ないかん水
で充分なコシが得られるというわけです。

私が採用したのは後者です。
ですからかん水が起こす独特の風味感のようなものは弱いです。
そんなかん水臭さは無くてもいい匂いですから少しも構いません。

ですが特級粉で作るとその代わりに素晴らしいものが生まれます。
「かすかな甘味」です。

良い粉はつるみ感だけではなく甘味を伴います。
ただし非常に微妙です。

しかし、ラーメンにおいてはそれでも威力を発揮します。

当店では昆布を多用していますからスープには
旨味の他に「渋み」「苦味」「えぐみ」「酸味」が混在しています。

これは嫌味要素となります。
例えばマグロでも
「旨味」「脂」の他に「渋み」「酸味」といった嫌味要素があるからこそ
かえって味に深みが出ているのです。
旨味や甘味だけでは単純な味となりすぐに飽きます。

当店では
「在るがままに」「原点回帰」として砂糖などで誤魔化す事をしてきませんでした。
それが一部のお客様の間では不評でした。
無理もありません。

化学調味料と砂糖をたっぷり加えた
「旨みたっぷりのコク」と「舌がよろこぶ甘い」スープに慣れた舌には嫌味要素など
ありえない味覚だったからです。

ところがうっすらと甘い小麦粉がこれら嫌味要素を押し込めてくれたのです。
無くなったわけじゃありません。
今も混在して深みを与えてくれています。
あたかもマグロがヅケで更に美味しくなるように
特級粉がスープを美味しくしてくれたと言う訳です。

もちろんそれはかん水がごく少ないからこその恩恵です。
なぜならかん水が過多だとスープに重大な悪影響を及ぼすからです。
詳しくは書きませんが、
あまりにも麺の食感をかん水に頼りすぎるのは麺の味にもスープの味にも弊害が多すぎます。

麺を持ち上げた瞬間にムワッと立ち上る匂いが
アンモニア臭のようになっているのは明らかに入れすぎでしょう。
体に良くない恐れが・・などというレベル以前にまず、美味しくありません。

ところが
そればかり食べていると感じなくなってしまうんです。
ひとつの考えにとらわれ過ぎて
『美味しいと思わなければいけないんだ』と入り込む場合もあります。
まさに囚人の行動原理と言えます。
顔の両側に掌を立て添えたようなものですね。
それを本当に美味しく感じるようになります。

味覚臭覚を正しく保つのは案外簡単なようで実は難しいのかも知れません。
肝要なのは正しくニュートラルを自覚することだと思います。
何事にもまず、立ち位置を決める事が大事です。
0を確立しなければ+1もー1もありません。

さて、かん水の話はこのぐらいにして
次は時間をあけて「麦粉臭い」実態を記してみましょう。

かん水の話を書くのに引き合いに出したのは「うどん」でした。
麦粉臭い話を書くのに引き合いに出すのは「蕎麦」です。
う~ん気が重くなるほどの危険水域の香りがプンプンしますね。

少しだけ時間をあけて続きます。
まさに、美味しいものに美味しくない匂いがあってはならないからです。
及ばずながら広めていきます。




 







qbe 050 のコピー

「ラーメンが嫌い」と言う方は意外に多くいらっしゃるものです。
もしかすると
「うどん嫌い」や「蕎麦嫌い」よりも多いかも知れません

アレルギーなどの不可抗力的なものを抜きにしてどんな理由からと
考えてみました。
ラーメン嫌いは来店されないので想像するしかありません。

化学調味料の入れすぎによるあざとい味と後口の悪さ。
脂過多。
動物系スープの匂い。
単に肉食が嫌い。

塩”分”過剰。
麺の食感が嫌い。
麺がかん水臭い。

こういったところでしょうか?

その他に「麺が総じて好きじゃない」と言う方もいらっしゃいます。

私は料理人としてこの「食の好き嫌い」と言う点に深く興味を持っていて
「○○が嫌い」などとうっかり私の前で言おうものなら
「何故?」「どうして?」「どんな点が?」
「他に類似する嫌いな食品は?」「いつ頃から?」などと
質問攻めにするという悪癖を持っています。

聞かれる人も案外嫌がらずにスラスラと答えてくれます。
普段から
「わがままなヤツ」とか「ぜいたく」、「やかましい奴」
などといった迫害を受けているせいでしょうか。
嬉々として語ってくれる人までいます。

そうした事を永年繰り返してきたおかげで少しづつ法則めいたものを掴みつつあります。
いつかまとめて書いてみようと思いますが、
ひとつだけ言えるのは
嫌いになるにはそれなりのワケがあるからという事です。

麺の話に戻しましょう。

麺好きからすると考えられないことですが、
まず、麺の何が嫌いかといってあのずるずるとすする事が大嫌い!
と聞いた事があります。
するとこちらはすかさず悪癖起動してしまい
「じゃヤキソバはどうなの?」とか「パスタは?」
などと聞き出すのです。

この時は
「すすらないで食べるピザなどはなんとか食べるけど小麦粉料理自体が、それほど好きじゃない」
という答えを聞けました。

先ほどの法則の事ではありませんが、
実はラーメン嫌いや麺嫌いの方々が自身でもそれとは気づいていない点があります。
先に挙げたラーメンの弱点もあるでしょう、
すするのが嫌い という方もおいででしょう、

でも、もっと根本的な嫌味要素があるんです。
ひとくちに言って「小麦粉の臭い」つまり「麦粉臭さ」です。
これは麺好きでも嫌いな匂いなんです。
これが原因で小麦粉嫌いになっているケースが案外多いのですが
当人にはあまり自覚は無いようです。

色々なケースで聞き出した結果を羅列しましょう。
・戦後の食糧難の時に食べさせられたスイトンの小麦粉団子が
 生煮えで不味かった味と匂いがいつまでも忘れられない
・大判焼き(今川焼き、回転焼き)の中が半生のものを
 食べた時の不味い匂いと味を連想する
・回転焼きの皮が不味かった
・そうめんの味噌汁がふやけた時の不味さと匂いが原因
などなど 匂いに繋がる悪い記憶が多いようです。

口では言うのですが麦粉臭さが何故小麦粉嫌いにつながるのかが解らないのですね。
これはよくあるケースなんです。

スイカが嫌いで見ただけで逃げ出した方がおられました。
この人は徹底していました。
フルコースの最後、宴もたけなわという時に季節外れのスイカを
出した時の事でした。
皆が「ワォ!」と喜んだ瞬間 ただ独り「ギャッ」と脱兎のごとく逃げ出したのです。

心配するほかの酔いどれには目もくれずあれこれ聞き出したのは言うまでもありません。
こんな面白い素材を見逃すはずがない私です。
傍目には優しく介抱する人に見えたでしょうが、残念ながらそれは的外れというものです。

原因は匂いでした。
したがって、同類のメロンは言うに及ばず胡瓜もダメなんだそうです。
共通項は「青臭い匂い」
子供の頃の不愉快な記憶がそうさせるのです。
この方はそれをはっきりと自覚されてました。

嫌いの素は匂い  ということは多々あるのです。

麺の話に戻ります。

麦粉臭さ=毒です。
蕎麦は生煮えで食べても大丈夫ですが、小麦粉は腹を壊します。
ですから小麦粉には葛湯や蕎麦掻きのような簡単調理はありません。
焼くか茹でるか、しっかりと熱を通すものしかありません。
でも運悪く火の通りが悪いものを食べさせられて不具合を起してしまうと
小麦粉全般が苦手になるケースもあるんです。

それは麺ばかりじゃありません。
かき揚などでも中心部の火の入りが悪いと起こります。
グラタンやホワイトソースでも起こります。
加熱不足の小麦粉料理が「麦粉臭く」感じるのは体が毒を感知したというアラームなのです。
それだけ感度が鋭い人の証明なのですね。

うどんやパンでは加熱時間が比較的長いので起こりづらいのですが
ラーメンではよく起こります。
危険なのが
湯の量に対して大量の麺を入れてしまった時です。
たっぷりの湯で泳がせなくてはならないのに
麺の対流が不完全だとダメなヌメリが発生して麦粉臭さの原因になります。
これも加熱不足の結果です。

沸騰した茹で湯が吹きこぼれそうになって差し水を入れすぎたときにも
当然起こります。
加熱不足が原因です。

濁った湯で茹でても起こります。

しかし、未熟な人はそれを解りません。
なぜなら一定時間経過した茹で麺というのは手で触った感触がほぼ同じだからです。
沸騰しない湯で3分茹で続けた麺と
沸騰している湯で3分茹でた麺が比較的似ているのです。
もちろん慣れていればまるで違うと解ります。

端を口に入れてみれば全然違うと誰でも解ります。
この時の味が「麦粉臭い」味なんです。
腹に来る味です。
これを食べさせられれば二度とこんな物を食べたくないとなります。
にちゃり とした歯に粘る食感 これを歯ぬかりといいます。
歯ぬかりする、麦粉臭い味。
こんな物を出していては麺嫌いを増産しているようなものです。
非常に困ります。

とはいえ
この頃では麺の茹で加減を指先の感触で見れない職人が多いそうで、
あまつさえ、最近ではタイムセットした時間がきたら自動で麺上げをする機械まで現れました。
私自身がラーメン屋ということを置いても、
麺好きにとっては先行きの暗い話です。

いつぞやはうどん屋さんでも体験したことがあります。
つい今しがたうどんでは起こりにくいと書いたばかりですが、
加水時(水回し)の攪拌が不十分だとそんな事もたまにはあるようです。
全般的に硬めに茹で上げられたうどんの中に明らかに硬い芯の残ったものが混ざっていて、
これは麦粉臭い味がしたものです。

蕎麦でもまれに麦粉臭いのに出会う事があります。
が、これはお時間をいただく約束ですからもう少し後で書かせていただきましょう。

麦粉臭さはかように調理の不手際でも起こりますが、
もっとも危険なのが保管方法の不適によるものです。

温度や湿度管理。
長期間の保存などです。
あまり流行ってなさそうなお店でうっかり地粉などを買うと
匂いが嫌なものに出くわしたりします。

また麺に加工するまでが大丈夫でも暑い場所に放置したりすると麦粉臭くなってしまう事もあります。
それらは明らかな劣化です。

そんな全てが管理不行き届きという一言でまとめられます。
どんなにそれ以降正しく茹でても取り返しはつきません。

小麦粉から麺に加工、それから茹で上げるまで生鮮食品を扱う心構えが必要なのです。

あまり長く書くと差しさわりが出そうですから今回はここまでにしておきましょう。
でもこの話はもう少し掘り下げて行かなければいけません。

寿司屋さんがネタの魚を暖かい室温に出しっぱなしにするでしょうか?

実は大事な本質を含む話です。












2011.08.08 すいとん-1
すいとん
と聞いただけで身震いしている人は沢山いるはずです。

戦後の食糧危機の折にアメリカ軍がもたらしてくれた
大量の「メリケン粉」
それはそれで大変ありがたい物でしたでしょう。

後になってみれば何のことは無い
小麦粉食に餌付けさせる為の戦略的支援だったとは呆れましたが
切羽詰まっているときはそれこそ喉から手が出るほどで
またこれのお陰で飢え死にしなくてすんだ人も沢山いるはずです。


しかし、あまりに何も無かった頃
小麦粉(メリケン粉)の特性もよく解らないまま
従来の食生活のまま取り入れた結果
恐ろしくまずいシロモノになって全国を席巻しました。

雑炊(ぞうすい)をご存知でしょうか?
ご飯に具材を混ぜてダシで軽く煮上げたものです。
これの語源は増量の増+水なのだそうです。

少量のご飯を大人数で食べる時に芋やら青菜やネギなどを
加えて水で煮込むと嵩だけは増やす事が出来ますよね。
これがいわゆる雑炊の原点なのだそうです。

今では高級料亭で懐石料理の〆に出されます。
炊き立てのツヤのある美味しいご飯を水洗いしてぬめりを
洗い流し、一番だしでさっと煮てサラサラッと食べる
本当の贅沢なご飯です。
戦後の食料危機をご経験された方なら怒り出しかねませんね。

すいとんはこの、よろしくない方の増量目的で作られました。
ダシが無い、卵も無い、美味しい具材も無い。
少量の野菜と小麦粉だけです。
味噌醤油があればまだマシで酷い場合は塩だけ。

水で野菜を煮る。
小麦粉に水を加えて練る。
団子状にして汁に落とす。
味付けをする。

これの不味さは想像を絶するものだったようです。
命を救われたにもかかわらず人間の舌というのは
理性のコントロールが出来ないとみえて
いまだに身震いしてその不味さを語るのです。

戦後生まれの私ですが亡き母がこれをしばしば作りました。
すいとんに慣らされてしまいたまに食べたくなったのか?
はたまた子沢山のまかないに苦労するが故だったのか?
今となっては解りませんが、
ご多分にもれず私もこれが嫌いでした。

ただ、家では鶏を飼っていたので卵の入った小麦粉でした。
それでも不味いのに変わりは無く不平を口にしては
母を困らせました。
そんな私を「贅沢言うな!」といつも叱った長兄もとっくに他界し、今は鬼籍の人となっています。

すいとんは汁ですが、家ではおかゆにも入りました。
残り少なくなった米びつを見ては思案していたであろう
母の苦労を今想うと申し訳ない気持ちでいっぱいです。

でも、すいとん粥は汁よりもっと美味しくなかったとだけ
書いておきましょう。
やはり感謝と舌は別物なのです。

終戦記念日も近いことです
昔を少しだけ振り返りつつ、私の本業ともからめつつ
続けてみましょう。

これは「麺」の話です。











2011.08.15 すいとんー2
すいとん汁は中国料理店の頃にも何度か
ランチのスープで出しました。
「今時のすいとん汁」として
小麦粉をカツオダシで練り、具沢山で作りました。
好評でした。

戦後の頃のすいとんを知る方がまだ大勢現役でしたから
話は随分と賑わいました。


でも、今回はすいとんを通じて「麺」を考えてみようと
きちんとしたレシピで小麦粉を練りました。

小麦粉を水でこねたものが麺です。
イタリア語ではパスタ。

ではどうしてあの頃のすいとんはあんなに不味かったのでしょうか?
まず、ダシの欠乏
   具材の欠乏
   そして主役の小麦粉のあつかいの不慣れ。

もちろん粉も今のような白い粉じゃなかったと言います。
これじゃかわいそうなくらい手の打ち様がありません。

何にも無い時にそれでも最善の努力をしてくれたんですね。
改めて母親達に感謝。

今の私がすいとんを最善の努力で作るときっと
「贅沢だ」と非難の声を上げる人もいると思います。
でも、出来るだけ美味しく作るという発想ではあの頃と
少しも変わらないのだという事を申し添えておきましょう。
わざわざ不味くしてやろうなどと考えた母親などいやしません。

(レシピ)
小麦粉中力  100g  全卵 1個 塩4%で4g

デジタル計りにボウルを乗せON。→0表示を確認
塩4gを量る
ボウルに卵を割り入れる。
水を48gまで加える。  
良く混ぜる。
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小麦粉100gの入ったボウルに卵水を入れ、箸でかき混ぜる。
袋に移して常温にて30分放置。(脱気)
テーブルに出してこねる。
まとまったら袋に入れて足で踏む。
広がったら畳み直して、また足で踏む。4~5回繰り返す。
uac 024 uac 036

(画像は鉄パイプで行なっている。麺棒で抑えても有効)
形を整えて袋に仕舞いこみ、1~2時間常温で放置。

包丁で細くカット。
棒状に丸く転がして成型。
小口からカット。
親指でつぶす。
この時に真上から押すのではなく、
斜めから押し広げるようにするとクルリと指に回り込む。
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これが今回のすいとんです。
uad 004

中国料理では猫耳(マオアール)
イタリアンではオレキエッティ(耳たぶ)という麺です。
もちろん粉の組成はそれぞれに異なりますが。

これを下茹でします。
分厚いから時間はたっぷりとかかります。

その間汁本体を仕込みましょう。

(レシピ)
かつおだし
鶏もも肉  ゴボウ、戻しシイタケ、人参、大根
インゲン豆、枝豆、ジャガイモ、タマネギ、長ネギ、 
みょうが。

材料を火にかけてアクを取ります。
下茹でしたまだ硬いすいとんを加えます。
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味付け
酒、塩、醤油

すいとんがふっくらとしてきたら火を止めてフタをし、
1~2分蒸らします。

これで完成です。

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おっと、忘れてはいけませんね。
今回は比較の為に水だけで練ったものも加えました。
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これで試食です。
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ふっくらとして、もちもち
まるでつき立ての餅のような食感です。
これがコシなんですね。

贅沢でとても美味しいすいとんになりました。
いっぽう、水だけでにわか仕立ての方はというと
uad 022

ダシや具材の旨味を充分吸い込んでこれもなかなか
美味しくなっています。

ところが、
もっちり感やコシはまるでありません。
小麦粉の弾力だけです。

確かに水で練れば全て「麺」とはなります。
しかし、美味しい麺にするにはやはり熟成と鍛えが必要だったんです。
中華麺やうどんでも同じです。

低加水か多加水かなんかどうでも構いません。
問題はその後。
正しく扱われてきたか?
ちゃんと育てられてきたか?

ただの麺か、美味しい麺かが分かれるという当然の結果でした。

しかし、こうして贅沢なトライが出来るのも
水、電力、ガスなどのライフラインが完備されていればこそ
改めてそれらに携わる皆様に感謝を申し上げます。

こうして美味しいすいとんを食べると
「すいとん」と聞くだけで身震いをするようなトラウマから解放される気がします。

ぜひ一度お試しください。

しかし、あの不味かったすいとんの記憶は消そうとしても
消えないでしょう。
でも、あえて言います。
それは「他に得がたい宝物の記憶」だと

不味いすいとんを食べた

それは限りない愛を享受してきた  という証なのです
誰もが生きるだけで精一杯だった戦後。
それに生き延びてこられたんです。
 
私には戦後の食糧難の経験はありませんが、生きてる限り
食べるため、命をつなぐための戦いには終わりはありません。

『がむしゃらに働いてきたから定年を迎えたら
しばらくはのんびりと暮したい』
などと言ってたと思ったらすぐにお亡くなりになってしまった
という話はよく聞かれます。

機関車が動かなくなったらすぐに錆びてしまうように
生きている限りスイッチを切ってはならないのです。

戦後は何も無かったけれど母親たちはそんな中でもいかにして
少しでも美味しくしようかと知恵を絞り工夫をこらしたはずです。
懸命に”生きた”んです。

今生きている私達もそれを見習わなくてはいけません。

あの戦後の復興を成し遂げた先人達に負けないで気を張って生ききりましょう。

終戦の日に感謝を込めて
贅沢なすいとんを食べ、偉大な先人の方々に合掌。




以前の過去記事麺の風味
「う~ん小麦粉本来の香りが・・」などというのは誤り。
それはかん水と小麦粉の合体した匂いであると書いた時に
麦粉臭い匂いのことを語るには少し時間を頂くとしました。

かん水の事を証明するにはかん水を加えないうどんを
持ってきましたが
麦粉臭さを語るには蕎麦を持って来ます。

のっけから危険な香りが漂いますが始めてみましょう
時間が来ました。
時間とは「新蕎麦」の事です。
美味しい新蕎麦粉が入手できました。

私は「こだわらない手打ち蕎麦」というのを提唱していて
興味のある人とよく蕎麦打ちを楽しみます。
ただし、こだわらないと言う位ですからあくまでも
個人が趣味として遊ぶというレベルです。

決してお店を持ちたいとか達人名人を目指すなどと
いうものではありません。
手軽に、気軽にお家で食べましょう  という程度です。

でも、美味しい蕎麦を食べたいので粉だけは吟味します。
そしてまず一番初めにそれで十割蕎麦を打つのです。

伸している途中で割れたって、麺線が千切れたって
構いません。
ファーストインプレッションとしての自分の打った蕎麦の
味見というのが大切なのです。

旨いんです。
太かったり、細かったり不細工でも
最後の一本、一筋まで。
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そして蕎麦湯を飲みます。
ほっこりとした、どこか懐かしいような日向くさい
穀物香が心まで温かくしてくれるような味わいを楽しみます。

そうしてから二・八蕎麦を打ちます。

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わずか二割の小麦粉を加えただけで生地は滑らかで
伸しても割れず、とても扱いやすくなります。

そして食べます。

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こうすると皆怪訝な顔をするんです。
たった二割の麦粉が入るだけでこんなにも味が落ちます。

その落ちた分が「麦粉臭い」風味なんです。

いえ、
更科は念入りに練るが二・八は練りすぎては饂飩臭くなる
などという高度な次元の話じゃありません。

麦粉が混ざった味が不快だというだけなんですね。
その証拠に蕎麦湯の味がまるで違ってきます。

喉越しや口当たりは確かに滑らかになりますが
なぜこんなに麦粉臭くなるのか?
小麦粉と蕎麦は相性が良くないのでしょうか?

いいえ、ここからの答えは推測になりますが
これは茹で時間と異種混合による熱伝導の問題だと思います。
十割蕎麦だとわずか30秒から一分で茹で上がりますが
小麦粉が入るとぐんと長くなります。

蕎麦は生でもOKだが小麦粉は生だとお腹を壊す
と以前に書いた事をご記憶でしょうか?

ですから蕎麦がきのような簡単調理が麦粉には無いと
書きました。
つまりほんの僅かの麦粉であっても蕎麦粉に混ざり合った
状態では充分な加熱が行き渡りづらいという事なんじゃ
ないかと思うのです。

逆に小麦粉の方が多い乾麺蕎麦だと充分茹でるので
かえって気にならないくらいです。
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さて麦粉臭いを実感したうえで
美味しくない中華麺の不快な匂いの話に進みましょう。

簡単におさらいをします。
 入れすぎたかん水
 保存状態の悪い粉、麺
 濁りすぎた湯で茹でた場合
 火力が強すぎる茹で

それらもさることながら
実は製粉業界人が最も嫌う「麦粉臭い麺」とは
粉の浸水、吸水が不十分な状態の麺を
不適な茹で方をしたもの
と言えます。
生の小麦粉・・・・・・・・・・・

あまりこの先は書かないでおきましょう。
誰しも美味しくない話は不快でしょうから。
繰り返しになりますが
適切な処理を施されない麺は中華麺だって
「麦粉臭く」なるとだけ記しておきましょう。


麺を多加水、手打ちにしてしかも充分な「寝かし」を
与える事でそういうトラブルは皆無になります。
もちもちとしてツルツル
しっかりとしたコシが生まれますから小細工は不要に
なります。
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でも、
人間と言うのは厄介な生き物です。
すえた様なメンマ臭いメンマを「美味しいんだ」と
思って食べているとその匂いが無いと物足らなくなるように
麦粉臭い麺を常食しているとそうじゃないのを
物足らなくなってくるのですね。

つくずく食べ物で万人ウケなど幻なんだと思わされます。

もう少しお時間を頂いて、
麦粉以外のつなぎを加えた蕎麦の話などもいずれご紹介
してまいります。



2012.01.23 箸と麺の関係
私達ラーメン店を含む麺類を商う店、業種は全て
割り箸で支えられてきたと言っても過言ではありません。

日本の割り箸は製材過程で出る端材で作られました。
ですから一時言われたように森林破壊を起すものではなかったのです。

ところが中国からの安価な割り箸が入ってくることで事情は
一変します。
国内の小規模な割り箸製造業はほぼ壊滅しました。
今では吉野杉などの高級材を用いた一部だけがかろうじて
生き残っているだけです。

中国での製造工程にはいくつかの不安要素があることと
エコ指向の高まりなどで当店も樹脂製の箸を導入しました。

最初は自然素材の方が良いだろうと竹箸を試した所
竹というのはそのままなら滑らずに使いやすいのです。

私は普段使いの竹箸を自作して使っていますが、
とても使いやすくて気に入っています。
ザル蕎麦を食べてもスノコに挟まった最後の一本まで簡単につまみ取れます。
でも、何も処理をしない竹箸は必ず黒ずんでくるんですね。

ですから市販の物には必ず表面加工が施されます。
すると滑りやすくなり、使えません。
なので先端に滑り止めの刻み目をつけてあります。

これは麺を持ち上げるのには便利ですが口の中から
箸を抜き出す時の擦過感が良くないのです。
ザラザラと引っ掛かるんですね。

全国には放置竹林の問題があるんですから政府が補助を
つけて使い捨ての竹箸を流通させれば一石三鳥にもなる
効果が期待できるのですが・・
それはさておき。

樹脂製の箸でも麺は滑ります。
なので先端には滑り止め加工が施されます。

今まであらゆる麺類の世界で最適な麺線の長さという事がさんざん語られてきました。

ザル蕎麦の世界では「持ち上げてちょうど良い長さ」
と語る人もいますし、

「イヤイヤ蕎麦の長いのはいいんだ長ければ猪口切りといって
ツユ猪口の縁で押さえて切れるんだから
むしろツ・ツとすすりやすい長さを気にするべきなんだ」
と語る人もいます。

うどんの世界では
「いいや太さが重要だ!ウチのは極太の一本麺だ!」
などと語る人までいます。

(横道)
ちなみに、カレーうどんはすする時に跳ねて服に
しみがつきますがあれは最後の麺の端が跳ねるからなので
一本ではなく輪っか、つまり丸くつながった麺線にすると
跳ねないんです。

麺線と書きました。
麺とだけ書くと種々雑多なので業界では細長く切った物を
こう呼びます。

この麺線の長さ、あるいは太さ、を言い換えると
一本の重さで考えることも出来ますね。
それらは全て割り箸だったから何でも自由自在に
ふるまえたと言えるのです。

中国料理ではアンがかかると更に重くなります。
油がたっぷり入った分だけ滑りも強くなります。

今まではあまり考慮せずに割り箸さえ添えれば自在に
できました。
ラーメンの世界では粘度の強いスープもあります。

ストレートか縮れかでまた異なります。
私の打つ多加水手打ち麺は表面がツルツルですから
よく滑ります。
極太ですから重いです。

ですから店内には割り箸も常備してあります。
今まではわりあいこれを使う人も多かったのも無理ありません。

ところがラーメン専用に開発された樹脂製箸というものが
現れたのです!

これは逆転の発想で作られています。
滑り止めを横ではなく
タテに溝を切りエッジを立てることで麺に食い込みやすく
加工してあるんですね。

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いや、頭のいい人もいるものです。
日本のモノ作りの底力を見せ付けられた思いです。

と、こんな事をいうと
「たかが、箸の事ぐらいでおおげさな」と
思われるかもしれません。
でも一国の工業力と言うのはえてしてこういう些細で
かつ汎用な品物に顕れるものです。

有名な話に
某国の工業力の進捗状態をマッチ棒で判ったというのがあります。
マッチ棒の端に機械でつまんだ跡がついてきたというのです。
日本は昔から付いていますね。
こうです。

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昔は手作業で作っていたのでしょう。
それが先進国並みの機械技術を手に入れたようだと
判明したと言うわけです。

となるとそういう解析の専門家は一本の繊維や
ちょっとした部品の材質からでも工業力の程度を探れるのかも知れませんね。

この箸は材質の進化なのかあるいは太さのバランスの妙か
この手のモノにありがちの持ち重りが全く感じられません。
しかも油汚れが落ちやすいのです。

その内に秘めた工業力まで推し量る能力はありませんが
非常に優れた箸であることだけは充分理解できます。


ところで
ご存知のように箸の長さというのは親指と人差し指を
直角に開いた長さ、
これを一咫(ひとあた)と言いますがこれの1.5倍と
言われます。
つまり一咫半というわけです。

ですから一人一人最適な長さは異なるのが当たり前なんです。
平和通り食堂さんではそこの所をしっかりと踏まえて
何種類かの長さの箸をご用意してらっしゃいます。
なかなか出来ることではありませんが、理想的です。

つまり、用意する側はまず第一にこの長さを選定するという
作業から始まるのです。

次、箸に要求される点は手が滑らない事。
持ってしっくりと馴染む事です。
妙に角張って手指が痛いようでは話になりません。

それと持ち重りのするような重い材質も不適です。

そして最後にモノが滑らない事が最終的な見極めとなります。

これに加えて今回選定したのは口から抜き取る時の
擦過感の改善まで出来ました。

まさにラーメン店の為に開発された使いやすい箸です。

今まではそんな事など何も考えなくともただ割り箸さえ
用意しておけばそれだけで済んでいました。
これからはお店の性質に合わせた箸が必要になってきた
というわけです。

とにもかくにも色々な業界の努力協力によって成り立って
いるという事を忘れないで
お店側もメーカーに負けないで勉強しなければいけませんね。






2012.09.19 替え玉の話
たまにはラーメンのことも書きましょう。

当店では替え玉をしていますので大盛りはありません。
「麺追加」と表記をして1玉を200円でお出ししています。

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お客様はごく自然に「追加」と注文されていますが、
この追加制は当初は難しく、他のほとんどのお店と同様
「大盛り」までしか出来ませんでした。

ではこの「大盛り」と「追加(替え玉)」の違いは何かと
いいますと、ズバリ「スープの強度」と言えます。

他店の事は知りませんから当店の事だけで語りましょう。

ラーメン店にした最初の頃に麺を1玉食べ終わって
追加玉を入れるとスープの旨味もコクも何も無くなって
しまっていたんです。

つまり1玉分の味を支えるだけの力しか無く
それを食べ終わる頃にはスカスカのスープになっていた
というわけです。

でも、そんなスープでも大盛りには耐えられます。
タレを多く入れてスープも多くする。
つまり一回り大き目の丼で供すればOKなんです。

これが「大盛り」と「追加玉」のスープの違いです。

かなり苦労してようやく「追加麺」の出来るスープに出来た
時に「大盛り」を止めました。

大盛りというのは単に量が多いというだけのものです。

追加というのは麺を後から投入することで隠れていた味
つまり
一杯目には醤油の後ろに隠れていた昆布やガラの本当の
旨味、そんなものがゆっくりと解け出て美味しく変化するのです。

だから
普通に空腹を満たすだけなら一杯だけ、
それでも足りなければご飯でも食べれば充分なのに
しかも
1玉の量も多目に設定されているにもかかわらず
ほとんどのお客様が麺の追加をされるのです。
それも2玉すら珍しくなく中には4~5玉も食べる方まで
いらっしゃいます。

よく耳にする「博多ラーメンの替え玉」とも
そこの辺りが若干異なる点ではないかと認識をしています。

名前が出たところでもう少し博多ラーメンのことを書くと
博多でも全てのお店が替え玉制を行なってるわけじゃない
そうでして、
以前にどなたかのエッセイでそんな
替え玉をやってないお店での事を読んだ記憶を要約すると

(要約ここから)
その店は替え玉をやっていなかったが旧知の仲でもあり
無理を言って替え玉をしてもらった。
一玉を食べ終わった丼にもう一玉を入れてもらった訳だ
ところがどういうことだか
まるで湯の中に入れたみたいでまるで味もコクもない
これじゃ何を食べてるのか分らないという結果に驚いた
(要約ここまで)

これがいわゆる普通のラーメンのスープなんです。
替え玉に対応するにはもう少し濃いスープに仕立てる必要が
あると言う訳ですね。

ではそれはどうやったら出来るのか?
というと固形物を多くする
つまり、鶏ガラなどをたっぷりと使うということです。
または
当店で行なっているように昆布をどっさりと入れる
あるいは
野菜などをたっぷりと入れる
という方法などが考えられます。

さらに
スープを濃くすればタレもそれにつれて強くしなければ
なりません。
スープを濃くするという事は誰でも分るでしょうし
また、案外簡単にできます。

しかし、強いタレというのは実は非常に難しいものです。
普通は色々な調味料を組み合わせようとしてしまいがちです。
でもそれじゃただ単に濃い味のタレというだけで
強いタレにはなりません。

ここは誰しも苦労するところでしょう。
だからつい化学調味料に手を伸ばすわけですが
多く入れれば入れるほど強い味にならないところが
これの特徴であり限界でもあります。

スープだけを濃くして弱いタレと合わせると
なんともバランスの悪いものになり、
知らない人はスープのせいにして後戻りをしてしまいます。

ところで
鶏ガラや昆布などを多くするのはまだいいとして
化学調味料を多用すると思わぬ落とし穴があるのですが
それはいずれ改めて書くとしましょう。

化学調味料は決して万能ではないとだけ記しておきます。
使い方を誤れば”後ろから匕首”のように裏切る奴なんです。

こうして濃いスープと強いタレが出来たら
最後に麺です。
以上の二点と比べると一番創り出し易いのがこれです。

誰でも具体的なイメージを持てるからです。

一玉を食べ終わって『あぁもう少し食べたいな』と
思ってもらえる麺を合わせれば完成です。

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そうそう、強いタレのことをもう少しだけ書きましょう。

以前に「和風ラーメン」をやっていた時に
ラーメンなんて
化学調味料無しには出来ないように言われているのが
間違いである  
という事を証明するために出していましたが

この和風ラーメンも元の強いタレを還元するだけで
簡単に出来ました。
しかも無添加のあっさりラーメンなのに
麺の追加は2個まで可能でした。

強いタレというモノの正体が少しはお伝えできましたでしょうか?

富山ブラックと g.s.さんにつけていただいた名称も随分
浸透してものすごく塩辛いというイメージが独り歩きを
していますが、ただ塩辛いだけじゃ強いとも言えません。

強いタレとは小さな丼一杯では納まりきれないほどの
旨味を持ったタレの事です。
ただ塩辛いだけじゃそんな力は持てません。

だから
何個も麺をお替りして頂けるのです。
麺を追加するたびに
ゆっくりと隠れていた旨味が丼の中でほどけ広がるのです。

でも、青竹式手打ち麺になってからはひと手間を
おかけになった方がより美味しく召し上がっていただける
ようになりました。

そのまま投入しても充分美味しいのですが、

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まず、茹であがったばかりの麺を1~2本そのまま
味見をしてみてください。

その次に少量のタレを麺に絡めてから丼に移す
たったこれだけです。

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手打ちならではの表面のつるみがスープの染込みを遅く
するからです。
より素早い一体感をお楽しみいただけます。

どうぞ
無添加スープが支える「麺追加」の力をご賞味ください。