当店も含め「自家製麺」の店は随分と増えました。
そこで今回は今さら人に聞けない製麺の色々について
記してみましょう。
知ってるつもりでも案外誤解が多いものです。

まず「手延べ」
これは小麦粉に塩水を混ぜて練ったものを桶などで寝かし
次に包丁で渦巻き状に切り太く長い麺体にしてから油などを
塗りながら細く引っ張り伸ばしていき
木枠に掛けてグイグイと伸ばしていく製麺方法です。
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そうめん、うどん、冷麦などで行なわれますが主に製麺所
の仕事で例えばうどん屋さんの店頭で行なわれるものでは
無いというのが普通です。
ですから一般に流通する手延べ麺というのはほとんどが
乾麺です。
干す事でさらにコシを強くするというメリットがあります。

なお、その製法上  麺一本の断面は通常丸いのが特徴で
幅、厚みともに同じです。
結果、これもまたコシを産み出しやすくなっています。


つまり寝かせた生地を手でつかんで延ばすから「手延べ」
というのです。

次に「手打ち」
これも練った麺体を麺棒などで薄く伸ばして切る方法です。
うどん、蕎麦打ちなどがこれに当たります。

勘違いしやすいのが麺棒を使って手で延ばすから
「手延べ」と混同されやすいと言う点です。
手延べと手打ちは全く異なります。

蕎麦店やうどん店の店頭で盛んに行なわれていますが、
最近は全て手作業で行う事を「純手打ち」などと
呼んだりします。
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もうひとつややこしいのに中国式の手打ちラーメンが
あります。
これは手打ち方式でひとかたまりから両手で広げて持ち
麺台に叩きつけて細く伸ばすやりかたです。
この麺の特徴は柔らかいという点です。

こういう純手打ちとは異なる「手打ち式」と呼ばれるのが
私の採っている方法です。
一番重要な鍛えを手で行ないますが麺体が硬くなるので
これ以後は手では始末できないのです。
後は機械で延ばします。
手技と機械の併用が手打ち式というものです。

機械製麺では低加水で作る事もできます。
手ではパラパラとしてまとめられない程の少ない水でも
強力なローラーで圧着してしまうのです。

製麺所ではほとんど機械で行ないます。
早朝から製造を始め夜明けごろには作り終え配達を
するばかりにしておかないと仕事になりません。
うどん玉などは茹でて袋詰めしなければならないものも
あります。
手打ちをしている時間など無いのが普通です。

でも、手打ち風に仕上げる機械というものもあります。
餅は餅屋と言いましょうか、製麺のプロは豊富なノウハウを
持っているのですね。
しかし、多加水麺にすることは出来ても2日かけてじっくり
熟成をかけるということを実行することは困難でしょう。

いずれにしろ機械製麺と手打ちは見た目も味わいもまるで
違ってきます。
蕎麦はエッジの立ち方
うどんはコシの強さなどに顕著に現われます。

そして最も重要な食感。
手打ち多加水麺はつるつるとしています。

なぜ、手打ちだとつるつるするのか?

というと手打ちは機械製麺に比べるとゆっくりと行なうので
空気の隙間が出来るからだと言われます。
そこに水が入り込むからつるりとした滑らかな麺体麺線に
なるという訳です。

小麦粉と水
たったそれだけで様々な顔を見せてくれる麺。
お客様に楽しんでいただくためではありますが
作り手にとっても興味は尽きません。

ラーメンの世界では手打ち麺の聖地とでも言うべき地が
あります。
山形県です。
ここには自家製麺、手打ち麺、無添加の店が沢山あり
今月末にお休みを頂いて念願の聖地巡礼に出かけて参ります。

9月27,28,29(火、水、木)と休ませて頂き、
手打ち麺、無添加ラーメンの勉強に行って
並居る先達の方々のエッセンスなりを覗ければと思います。

どうぞご理解のほどよろしくお願い致します。



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中華麺は加水量により二種類に分けられます。
加水30%台の低加水麺と50%台の多加水です。

低加水での水回し終了時では麺体と呼べるほどの物はなく
ぽろぽろの状態です。

いっぽう多加水のその状態ははっきりと粒状の麺体が
できています。

ですから
低加水の麺を作るには強力なローラーで圧着するしか
ありません。

いっぽう多加水の麺はうどんや蕎麦の手打ち風景で
見られるようにそのまま手で捏ねられるのです。

しかし、
青竹打ちの麺が著しく他と異なるのはここからです。

ローラーで圧着した低加水麺はそのままカットするか
いくばくかの時間寝かせてカットするかしか
選択肢が無いのに比べて

青竹打ちは手の力の数十倍の力で鍛える事が出来るのです。
何度も折りたたみなおして鍛え
さらに十分寝かせる事でグルテンとタンパク質の
強靭な生地を作り上げる事が出来るのです。

それがもたらす効果とはどんなものか?

太麺ではコシとふんわりとした相反する食感を得ました。
この独特な食べ心地は麺好きの方々からはすでに
大好評を頂戴いたしております。

では、現在のカニワンタンの細麺ではどうか?

細い分だけ硬く茹で上げてお出ししています。

良く知られている細麺はやはり低加水のケースが多く
しばしば私が述べている通りこの細麺には正しい意味での
コシが存在していないため自然と硬めで供される事が
多いのです。

というより硬めに茹で上げないと水分の吸収が早いため
たちまち茹で伸びしてしまう
という低加水麺の持つ根本的な性格がある訳です。

加水の少ない麺を硬めに茹で上げる
という事は言い換えれば粉っぽく仕上がっている
とも言えます。

事実
麺の固ゆでが好きじゃないという方は
その点を嫌います。

多加水麺はその点
製麺時ですでに十分な水が入っています。
ですから硬めに茹で上げても粉っぽくはなりません。

不思議なくらいに
多加水細麺を硬く茹で上げても
誰も「硬すぎる」とは、言わないのです。

考えてもみてください
手打ち10割蕎麦の硬さを
あの噛み応えのある硬い蕎麦にだって
誰も「硬すぎる」とは言いませんよね?


カニワンタンメンは12月第一週で終了の予定ですが
今回初めて手打ち細麺の塩味をお出ししてみて
解ったことがあり
それは次の新しいインスピレーションをもたらしました。

加水の十分な麺を硬く茹で上げても
粉っぽくならないため面白い取り組みが出来、

新しい味の地平が広げられそうな気がします。

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以前の記事の続きです。

さて、前回は包丁を動かさなければきれいな切り口にならず
それは味にも関わる というような事を書きました。

では、それは麺においてどういう状況を生むのでしょうか?
例によって危険な予感をはらみつつ進めましょう。



ラーメンを食べに来店されたお子様連れの皆様は
「チュルチュルだよ~」と言い聞かせられています。

私はこの言葉に麺類好きの最大要素が表現されていると
思うのです。
ツルツルとした食感。
唇を通過するときの心地よい擦過感。

もちろんこれ以外にもコシや、もちもち感など色んな要素が
ありますが言葉に言い表しにくいのですね。
特に子供には一番訴求力のある言葉を当てますから。

子供に
「ほ~らもっちりした麺だよ」などと言っても
解りません。

冗談はさておきツルツルとした麺。
これが”食べる側”から
すれば全ての要素の美味しさを言い表すと言えます。

作り手側はもっと複雑な要素ももちろん考慮しなければ
なりませんが、食べる側からすれば関係ない話です。

(ここで少々、横道に寄らせていただきます)

ところで私達日本人はこの麺をすする時に
空気とスープという液体、麺という固形物の三者を一気に吸い込むのですが
これは欧米などの国の人は苦手なのだそうで
実は大変危険な行為なのだそうです。

専門医の方が
「神様はなんて危ない構造にしてくれたんだろうか!?」
と嘆いておられたくらいなんです。

喉の小さな突起物で上手に交通整理してくれなければ
たちまちむせかえってしまいます。
これが上手くいかないと命に関わりますから
やはり子供の頃から慣れる必要があるのですね。

私達はそうして小さな頃からすすりこむということを練習して来ているから出来ますが、
来店される欧米人の方はさりげなく観察させていただくと
やはり、すすりませんね。
あちらではマナー違反だ  という事もあるでしょうが、
根本的に”出来ない”と言ったほうが正確なようです。

その代わりスパゲッテイなどもそうですが
唇を上手に動かして麺を送り込んで食べられます。
私達にはこれは難しい食べ方ですね。
唇を突き出すように麺を迎えに行き、上手に手繰るように
ムニュムニュと召し上がられます。

あれだけ面妖な動きで鍛えていれば
難しい英語やフランス語の発声も上手なのもうなずけます。

え?
フランス人がフランス語を上手なのは当たり前だ?
これは失礼。

本題に戻りましょう。

つるり とした食感を出したいからと、手を尽くしても
切る工程が間違っていると台無しになります。
美味しく切るということはつるりとした食感にも多大な影響を及ぼします。


手打ち蕎麦の美味しさを語るときに
断面のエッジのたった小気味良い食感が語られますが、
キリリと角の立った蕎麦は確かに美味しいものです。

ですが、本来当たり前のはずだったのにほとんどの蕎麦がそうでなくなっているから
手打ちモノでことさらにそう感じてしまうとも言えます。
ではエッジの立っていない蕎麦はどうやって切られているのでしょうか?

これは製麺機の切り歯というローラー状の歯で作られたものです。
押し切りしたようになりシャープな切り口とは言えません。
例えてみれば
ペーパーカッターで切るようなとでも言いましょうか。
断面はザラリとして角は丸くなります。

誤解しないで頂きたいのは
切り歯でカットした麺がダメだといってるわけじゃない
ということです。

パスタだってツルリとしたものやザラリとした切り口を
持つものがメーカーごとに特色を出して販売されていて
それを調理人が”それに見合ったソース”で合わせます。

ですから
つるつるっ と食べてもらいたい  と願う料理人が
押し切りするような道具で切ったりしていては
目的を遂げられない  と言う事になります。

昔はあまり良い道具はありませんでしたから
しょうがない面もありました。
でも今はネギを切るだけですら人より優れたものがあるのです。

手で包丁を使わなくとも機械式の包丁切りが出来ます。

前述しましたように
ツルツルとした食感は延し面に強く出ますが
包丁を動かして切った断面もまたつるりとした食感を持ちます。

このままならばエッジの立った麺です。
しかし、ツルツルとした麺には弱点もあるのです。

ツユが絡みにくいのです。
滲み込みも少なくなります。
ですから角の立ったエッジを犠牲にして
手もみ麺とします。

つまり、
麺に味を滲み込みやすくするのか?
それを犠牲にしてでもつるりとした麺を求めるのか?
などといった様々な理想を追い、求めているのです。

その工程の重要な部分がこの「切る」という事です。

蕎麦の話ですが、
福島県に星さんという方がいらっしゃいます。
この方は「裁ち蕎麦」の名手で本にもよく紹介されています。
(ご無事でしょうか?)
裁ち蕎麦というのは包丁でぐいっと切るのではなく、
先端の鋭い包丁でスーッと引き切りをする  
というものです。

普通は定規などを当てなければ出来るものではありませんが
この達人「星さん」は何も添えずにスッスッスーッと
切るそうです。
一度見てみたい所ですが、なによりそのエッジの立ち方
想像するだけでも実に美味しそうではありませんか!

あるお店ではせっかく包丁でキレイに切っておきながら
それ以後の扱いが良くないために蕎麦がよじれてしまい
残念な食感になってしまっているのを出された事があります。

包丁で何をしたいのか
何をするために包丁を手に取るのか
もう少し考えてから持ってもらいたいものです。

包丁で切る
この単純にして奥深い仕事には終りがありません。

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以前に低加水麺には本当の意味でのコシは無いと書きましたが、
では多加水麺なら全てコシがあるのか?
というと必ずしもそうとは言えません。

というのも先だって不思議なうどんを食べた事が原因で
あることを実験し、
普段から思っていたことが実証できたからです。

そのうどんとはセルフ方式で最近急激に勢力拡大してきた大きなお店です。

一言で言えば”食べた気のしない麺”
見た目は太くて、食べても歯応えはあるのに
食った感が全く無い。
かなりな量を食べたにもかかわらず店を出た瞬間
何を腹に収めたのか解らなくなるような感覚。
とこう書くと意味不明ですね。

つまり、うどんのようなモノとでも言いましょうか。

なぜこんな麺になるのか?

粉の種類にもよりますがおおむね原因は製造法にあります。

麺の製造には低加水と多加水の方法があります。
それは水量の多さによって分類されるのですが
はっきり言って分類なんか意味を持たないとも言えます。

要は自分の求める姿、性格、性質、味さえ実現できればいいのです。

うどんは元々手打ちで行なわれてきましたから多加水でした。
低加水というのは機械の強力なローラーで圧着しないと麺体になりません。
つまり、低加水の手打ちというのは不可能に近いのです。

多加水というのはほぼ50%近く水を加えます。
水回し(ミキシング)
寝かし
こね
寝かし
伸ばし
切り

という工程を経てうどんになります。

この寝かしがとても重要です。
小麦粉には親水性といって水に馴染む性質があるとはいえ、
微粒子レベルではやはり一定の時間を必要としているのです。
それが独特のコシを生むのです。

こねてグルテンとたんぱく質の網目構造を作りだし、
また寝かして馴染ませます。
これで正しい手打ち独特のコシと喉越しが生まれるのです。

ところがこの面倒で時間の掛かる「寝かし」を
省いてしまったらどうなるでしょうか?

水回し(ミキシング)
こね、伸ばし
切り

まず、製造にかかる時間は大幅に短縮されます。
私の作る中華麺は三日がかりですが、これでやると
ほんの数時間で出来てしまいます。

時間=お金  という考え方で捉えるならばこれも
コスト高、コスト削減となるのでしょうね。

そのかわり代償はとても大きくなります。
コシの無いふにゃふにゃの麺が出来上がります。
もちろんそれでは客は納得しませんから
茹で時間を短くするのです。

そうすると硬い茹で上がりになり、
『あぁ、本物の讃岐うどんとは硬いものなんだな』
と勘違いさせられるのです。

白玉うどん
(製麺所で茹でられて配達された茹で伸びしたうどんの事)

しか、食べたことの無い人は勘違いさせられたままでしょうが
硬いうどんというのは美味しいものじゃありません。

本場讃岐でも硬いうどんを出すとたちまち客足は遠のくそうです。
麺場に立つ人が調理場の司令塔となって先読みをしつつ
待たせないで、茹でたてをタイミングよく出す。
そんな店が繁盛しています。

ですから寿司でいえば花板のような重要なポジションで
言うまでも無く一番の高給取りなのです。


コシが正しく形成されたうどんというのは茹で伸びも遅いのですが
そうでないのは伸びも速いので茹で置きすると二重の意味で
味の劣化が進みます。


コシというのは案外解らない人が多いので
冷凍うどんではカタクリデンプンを入れてそれらしく
あつらえてあります。

これは食べ飽きます。
一回だけなら
『おや?冷凍でも旨いもんだな』と思いますが
三日続けるとその不味さに気づきます。
気づくともう食べたくなくなります。
冷凍うどんが五食パックになっているのもそこのあたりの
非常にデリケートな計算に基づくんでしょうか?

しかし、ちゃんとしたうどんなら冷凍にも耐えられます。
食べ飽きも起きません。
現に富山県の超繁忙店では冷凍うどんでこなしていますが、
誰もそれを指摘しない位、美味しいのです。


実験では伸縮率、茹で伸び、弾力全ての面において
話にならない結果が出ました。

この「寝かし」という適度な熟成
そして適切な「鍛え」の二点。
とても重要かつ、欠くべからざる作業なのです。

刃剣だって生鉄をいきなり成型していくら焼入れをしたって
粘りのあるものにはなり得ません。


コシ
解ってしまえばこんなにシンプルで美味しいものが
ほんの少しの手間を惜しむだけで台無しになってしまうのです。

水さえ多く入れれば美味しい多加水麺になるというものではないとお解かりいただけましたでしょうか?

とはいえ、
かつて、高度成長の時代、労働人口が多かった頃には
質より速さが優先されて白玉うどんが全盛でした。
今は
質よりもひたすら安価が求められているとするならば
これもまた正解なのでしょう。

天邪鬼な私はいまだに麺の醍醐味はコシにあると信じていますからあえて古臭い手法で打ち続けます。
当店では麺を子供をあやすように毎日寝かしつけて、育てています。

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左が出来たばかりの中華麺、右が熟成麺
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コシは目でも伝わります。
水と粉をきっちり馴染ませると口の中で弾むような
美味しい麺になるのです。



”ヤキソバ”と聞いてどんなのを想像されますか?
今、NHKの朝ドラでやってるから言うわけじゃないですが、
90%以上の方は鉄板焼きのソースヤキソバを連想されるのじゃないでしょうか?

それじゃ改めてもうひとつ想像してみてください。

スパゲッテイ


いかがでしょう?
すぐに「パスタ」という言葉が出てくるはずです。
アサリあり、カルボナーラあり、塩味あり、アラビアータありの
まさに百花繚乱のパスタブームと言ってもいいくらいに
すっかり日本の食事に入り込んできました。

でもほんの少し前までは
スパゲッテイ  と聞くと
誰もが「ナポリタン」を連想したんです。
そう、あのソーセージやピーマンを加えてケチャップに絡めた甘い味付けのモノです。

ホントですってば。
若い人達には信じられないでしょうが。

でもイタリアには「ナポリタン」というメニューなんか存在しないそうです。

一方、アジアのパスタである中華麺は当然中国からやってきた訳ですが
中国には日本で言うところのラーメンは無いというのは有名になりましたが
「ソースヤキソバ」もありません。
そもそもドロリとしたトンカツソースは日本人が作り出したという話です。

ヤキソバがパスタにも負けないほどの美味しさと幅広いメニュー展開を持つ
と聞いて信じられますか?
本当なんです。
そもそもパスタもヤキソバも元はほとんど変わりがありません。
私達の周りに在るヤキソバがあまりに不出来だから、
イメージが出来ないだけなんです。

ここでヤキソバ好きな方は「むっ」とされるでしょうが、
ヤキソバ好きなら尚更、もう少しだけお付き合いください。

ヤキソバの麺をどこで買いますか?
スーパーの麺売り場ですね。

ではその大手製麺メーカーがどうやって作るかご存知でしょうか?

生麺を蒸し、茹で、洗い、油をまぶして完成です。
普通はこれだけで美味しくなるんです。

問題は「儲け優先」という思考がここに入ることです。
蒸して、茹でます。
ここで程好い硬さに上げないで、とことん茹でます。
そうする事でカサが増えるのです。
目一杯増やします。

そして、冷水で洗ってぬめりなどを落として麺を絞めるのですが、
ここに、ある薬品を混入させます。
すると量は減らなくて麺自体が「締まったような感じ」になるのです。

確かに増量は出来ます。
ラーメンで販売するよりも粗利は上がるハズです。
でも茹ですぎと怪しげな薬品、この2点。

たったこれだけで見事にマズくなります。
そして売り場に並ぶヤキソバ麺はいつもの
皆がすっかり馴染んでしまっている
あの
(私に言わせれば)
ふやけた、コシの無い、ブヨブヨの麺になってしまっているのです。
あれが本当のヤキソバだなんて思ってはいけません。
あれは圧倒的多数に支持されている「ソースヤキソバ」用
というだけのものです。

もしくは限りない「安売りのために」作られた麺とも言えます。

解りやすく言えば
あれはソースヤキソバにしか出来ないモノ。 
(といえば言いすぎでしょうが、ソース味が最適なのは間違いありません。)
ですから、
カップヤキソバもまた、そんな誤解の上に便乗して商売が成り立っています。
「あんなものは本当のヤキソバなんかじゃない」と
皆が言い出せば金輪際成り立たないシロモノなのです。
ちょうど
本物でもないのに「ほんだし」と名づけて売っていたら
今度はインチキ味噌がそれらを混ぜて「だし入り」として売り出したのと似ています。

誤解と便乗を活用するうろんな業界というのがあるんですね。
頭のいい人には適いません。

ほとんどの人がそう思ってるんだからいいじゃないか。
とか言われそうですがヤキソバが大好きな私としては
もう少しヤキソバの事を見直してやって欲しいと思うのです。

今でも十分愛すべき人気者なんですが、
実はもっとすごいポテンシャルを秘めてるんだ
あいつのことをもっとよく解ってやって欲しい

って
そんな奴皆さんの周りにもいませんか?
私にとってはヤキソバがそんな奴なんです。
決してヤキソバの悪口を並べていい気になろうってんじゃありません。


ではまず最初にソースヤキソバにしかならない理由を挙げましょう。
麺が茹でられすぎで水分が飽和しているからです。
パスタをアルデンテで茹で上げる と言う事は皆さんご存知でしょう。
数パーセントまだ茹できらない硬さの残る麺のことです。

それをフライパンの中のソースに絡めつつ加熱する
(私はこれを圧力を加えつつ  と表現しています)
そうすることで味をパスタに染み込ませます。
茹で切らない部分が味を吸い込みつつ程好い硬さになっていきます。
パスタはこのソースと麺の一体感を出すのがコツなのです。
こうすると必ずしもドロリとした粘りのあるソースは必要とされません。

茹ですぎた麺にはこの味を煮含めるという工程が難しいのです。
同じく茹でうどん(白玉うどん と揶揄されてます)でも同様です。

ですから粘りの強いソースが最適となります。
まだスパゲッテイを上手に茹でられなかった頃には
スパゲッテイもベチャリとしたケチャップをたっぷり絡めた
味付けが主流だったのも同じ理由です。
日本ではパスタ用のふりかけが人気というのもこの辺りが原因でしょう。

パスタとヤキソバの違いと言うか、
異なる捉え方を一言で片付けるならこうです。

「ヤキソバは茹で置きが可能ですが、
パスタは茹でた状態では販売されません。」

こうなります。
一部には白玉うどんのような真空パックのパスタもありますが、
ソースは必ず粘度の強いものとの組み合わせです。

ヤキソバは茹で置きが可能なのですから
販売したっていいんです。
ただ、私としてはもう少し品質を上げていただきたい という
願いを持っているというだけなのです。
そうすればもっと美味しいヤキソバを誰でも手軽に作れるのに
と惜しんでいるのです。

はっきり言いましょう。
正しく作ればヤキソバってのは
パスタに負けない、いえ、焼き目がつく分だけ
場合によってはパスタより美味しいものになるんです。


さて、では美味しい本物のヤキソバはどう作るのか?
それを書き上げるのは多分、年をまたいだ来年早々になると思われます。

ただでさえ年末で気ぜわしいのに雪まで参戦してきました。
お時間をいただきます。
どうかご容赦のほどを・・

なお、私が参加している「みどり共同購入会」さんで
年に数度だけ
料理講習会を実施しています。
私も何度か出席させていただいています。
私の提案するテーマは毎回同じです。
「化学調味料を使わないで、お店より美味しい物をおうちで!」
今までに
「タンメン」や「チャーハン」や「餃子」を取り上げました。
子供さん達に
「お母さんの作るのが一番だよ」と言わせたいのです。

次回の私のメニューはこの「本物のヤキソバ」です。
マスターすればとまでは申しません、
この「圧力を加えて味を染み込ませる」という理屈を
解るだけでパスタまで上達します。

皆で美味しい物を作り大切な人に安心なモノを食べてもらう
こんなささやかな積み重ねが私達を少しだけでも助けてくれる
と信じたいものです。


二月ごろの開催予定ですが詳細はまだ未定です。

会員でなくても参加はできます。
どうぞ会の方にお問い合わせください。


最近は各地の湧き水で麺を打っています。
富山県には”名水”といわれる湧き水が豊富にあります。
そしてその水源となる場所が大きな河だと~~河水系などと呼ばれています。
これは上流で地下に染み込んだ水が長い時間を経て伏流水となって湧き出てくるものです。

また、名も無き山あいにも湧き水が流れ、水のみ場になっているところもあります。
そんなところでは昔から往来する人や農耕作業の合間に飲まれたであろう
アルミのカップやカップ酒のグラスなどが伏せて置いてあります。

私はそんな湧き水が好きなので見かけるとたいてい飲んでみます。
そうするとその場所ごとに微妙に味と感触が異なるんです。
一般に名水とまで呼ばれていなくとも美味しい水は県内各地にあります。

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水の味を言葉に置き換えるのは至難のわざ。

一般には土中に含まれる鉱物からしみ出たミネラルの含有量によって違う
性質をph値で量り
硬水、軟水と呼び分けますが、それは水質のお話です。
味となるともう一段違う角度からの話になります。

口に含みゆっくりと流し込みます。
その時の舌当たりや喉越しを
言葉に置き換えるなら
「まろやか」「尖ってる」「さらりとしてる」
それに柔らかい、硬いぐらいしかありません。
これでも味の話ではないですね。

ところが、まれにカルシュウムなどを多く含む水というのがありまして
これは微かに「甘い」味がします。

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これで麺を打つとどうなるのか? これが現在の課題です。

とりあえずかん水などが入らない「うどん」でこれを試してみます。
塩と水だけで打つうどんならより結果が明確に出そうだからです。

塩はナトリウムですから水中のカルシュウムとなんらかの反応をするのでは?
と仮定してのトライです。

見た目だけでお伝えできないのが残念ですが
つるみ感がまるで違います!

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なるほど、これで一応の答えを導き出せました
次に中華麺で試作をしてみます。

果たして水中のカルシウムとかん水はどんな反応を見せてくれるのでしょうか?

と、
ここで閑話休題。

時を古代にまでさかのぼり所は中国。
水の味をみる達人がいたそうな。
最高のお茶を貴人に振舞おうと下人に
「○○の泉の水を汲んでくるように」言いつけました。
さっそく馬を走らせて幾千里ではありませんが
遠路を駆けて指定の名泉に着き、器に水を汲みます。

ところが下人というだけに粗忽者だったんですね。
途中で半分がたその貴重な水をこぼしてしまうのです。

困った下人、思案して
「ま、いいか  どうせ解らないだろう」と
傍の池の水を足して持ち帰ったのです。

するとさすがは達人
「上から半分は××池の水で下半分が○○泉の水である」と
ぴたりと言い当て厳しく下人を諫めました。

史実か寓話かは判りませんがいかにもあの国らしい
突っ込みどころ満載な話です。
私は世に言う
”古代中国の人は賢い民族が支配していたが、今の漢民族は劣る”
という説をあまり信用していません。
むしろ、古代中国も現代中国もほとんど変わりがないと思っています。

ここに出てくる水を誤魔化そうとする行動が現代中国の
「ニセ水」騒動と見事に合致しているではありませんか。
「ニセ水」は今の中国で最も儲かる商売なんだとか(笑)
中国人の本質論になんか興味はないですが

自国だけでやっていてくれと言いたいですね
日本の水資源を狙うのは止めてもらいたいものです。
どうせニセ水に仕立て直すのがオチでしょうに。


もうひとつ閑話をします。

かつて富山にラーメンの達人がおられました。
亡くなられて久しいのですが、
かつて大繁盛の勢いをもって北海道に進出された事があります。
残念ながら結果は思わしくなく撤退してこられました。

私は縁あって薫陶を受けていた頃に
その頃の話を聞く機会に恵まれました。
曰く、
「北海道の水が合わなかったせいか、麺が思うような仕上がりにならなかった」
というものです。
達人にしてそれほどのものなのです。
水と麺の関係は微妙なものですね。

さて、話を戻して今回の名水と麺の結果はどうだったかと言いますと。

大正解

とだけ書いておきましょう。
いつもに増してツルツル、もっちり、
かすかに甘味さえ増したように感じます。

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ある種の水は味では微妙すぎるため正確に聞き比べたり表現する事すら
困難でも、物理的とでも言えばいいでしょうか
水色がはっきりと変わるケースがあるんです。
{忍ぶれど 色に出にけり}  ではありませんが
味覚で判断出来ない→色に出る→麺に仕立てる→味覚で判断可能

水そのままでは判らないが麺にするとその凄さが解る。
と言う事なんですね。
水は全ての基本。
大元。
美味しさを求めるのならまず、水。
それを「正しく」活かす事。

とはいえ、まだ取り組みは始まったばかり。
またこれから長い旅の始まりです。
どんな水と麺の物語が続くのかは誰にも判りません。
出会う水によって好結果が出たり、また予想外の事も起こり得るでしょう。

ましてや聞き水のできるような達人の域など
気の遠くなるほどの彼方です。

まず、今日の一歩を記しておきます。
全ては「美味しい」の為

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ラーメンの事を語る時におかしな言葉が出てくる事があります。
「小麦粉本来の香り」
「豚脂の甘味」
などです。
気にしなければそれでいいのですが
喉奥に刺さった小骨のように妙にいらだたしい気持ちにもなります。

それらはいずれ順次遠慮なく総括していきましょう。
人を惑わせてばかりの半可通を斬ります。

今回はそんな解ってるようで実はまるで共通理解がなされていない
代表的な言葉として
「コシ」を取り上げたいと思います。

「麺にコシがある」と誰でも言います。
スーパーに並ぶ茹で玉うどん(白玉うどんと言います)でも
学校給食の「ソフト麺」でも
カップ麺のふやけたのでも
しまいには立ち食いソバでもそう言います。

本当でしょうか?
コシ  ありますか?

ここらで一度「コシとは?」と大書して、共通認識を共有しましょう。
理屈では既に述べています。

グルテンとタンパク質の多層鉄筋構造のような強靭な組織がもたらすという事。
多加水麺にしかそれは無い事。
低加水麺では擬似的な「硬さ」でそれを錯覚させている事。
低加水麺ではグルテンなどを添加強化する事。  などです。

しかし、話は味覚の事、10人十色に感じてしまう感性の話です。
またまた今回も危険な予感がします。

味覚上のコシを言葉で解析できるのか?  試してみましょう。

「餅」
はい、今回の例にあげるのは餅です。
餅には機械突きとキネ突き餅の2種類があるのは誰でもご存知でしょう。
美味しいのはどちらでしょうか?

聞くまでもありません
キネでしっかり突いた方が美味しいですよね。
言葉で言い表してみましょうか。
「むにゅうぅぅぅ~っ」となるのがキネ突き餅ならば
「むにゅぅ~~ん」となるのが機械突きです。

柔らかさの中にも歯を押し返すような心地よい弾力があり、
ぷつり  と切れるのです。
これが「っ」です。

一方、機械突きは柔らかいばかりです。
どこまでも伸びますが歯応えにやや物足りなさがあります。
(とは言え、これも好き好きなんですが)

見た目から違いますね。
焼き立てを引っ張ると伸びて、「っ」で切れるとわずかに縮みます。
機械突きは「ん」と伸びたまま垂れ下がります。

この違いがコシです。

つき立てや焼きたて、雑煮やぜんざいなどの茹でたての餅には
ふわりとした柔らかいような歯ざわりがあります。
歯がすっと入っていきます。

しかし、だんだん押し返す力が強くなり
「むにゅう」から「ぷつっ」とキレよく千切れるのが美味しいキネつき餅なのです。

聞いたような話でしょう?
手打ち麺の美味しさを語るときと全く同じではありませんか?

これだけじゃありません。
麺をこねる時の様子まで似ています。

麺体に体重をかけて押し込んでいくと
内部から押し出された生地が横へとはみ出てきます。
これがキネで餅をついた時の臼の中で起きている事と同じなのです。
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そして臼での餅つきを終り、小さな塊に取り分けで手で丸める作業。

やった事のある方ならお解かりのはずです。
切り口をつまみ真ん中に押し込み裏返して両手の掌でくるくると回しますね。
その時にも頂点から次々に内部から新しい餅生地がめくれあがって出てきて
裏のヘソへと入り込んでいく
この作業もまた手打ちの工程そのものなのです。

ただ丸い臼ではないから手で畳んでやる  というだけです。
畳んで圧力をかけて生地全体に力を与える事でグルテンとたんぱく質の
強靭な鉄筋多層構造を構築するのです。
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タイ人はタイ米を食べます。
このインディカ種米は粘りが少なく私たちにはパサついた食感と感じてしまいます。
ではタイ人に日本のご飯を食べさせると何と言うでしょうか?

「粘りが強すぎてまるで餅を食べているようだ」 と困惑気味に語ります。

欧米人の主食のパンもまた本来はパサついた食感を良しとします。
日本人の大好きなしっとりした焼き立てパンは体に良くないとしてトーストします。
充分乾燥させたカサついたパンの方が美味しいとして、そのまま食べます。

おそらく最近の日本人好みのもっちり食感のパンは好まれないのではと推察します。

こうして考えると米食文化圏のタイなどから見ても
粉食文化圏の欧米からみてもいかに日本人が
もっちりとしたコシのある食べ物を深く愛してきたかが良く解るではありませんか!

豊かな水資源に恵まれてきたというのも理由かも知れません。
しかし、水は怒ると暴れ狂います。

そんな厳しい自然環境に負けず、だからといって自然を征服するなどと思い上がった傲慢さを持たず
自然と一体になり粘り強く生きてきた日本人の姿勢ともよく調和しますね。
『粘り腰』という言葉に尽きる日本人の生き方でした。
だからこそ
手作りうどんの伝承文化も日本中の各地に沢山残っているのです。
ほとんどそれらも手打ちです。
機械が無かったから
というのは後付の理由に過ぎません。

美味しいご馳走だったから今でも残っているのです。

美味しくなかったから残らなかった
「蒸し蕎麦」がその反証です。
今では「せいろ」の名称と器にその面影を見るばかりとなっています。

さて、手打ちラーメンでは最後に手もみをします。
これもまた最後の手打ち作業です。
薄く伸ばされ細く切ってあるとはいえ、
その生地には先ほどの麺体と全く同量の多層構造が入っています。
切っただけの麺線ともんだ麺線と比べてみてください。

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縮れ  ではなく正確に言うと
それはギュッと練りこんだ時と同じカーブを形作っているはずです。
単なる縮れではなく、「練り」そのものなのです。

これら全ての作業、仕事の目的がたった一言「美味しい」の為です。

麺を口に頬張る幸せ
噛む時の「ぶるるん」と跳ね返るような心地よい食感
全て手打ちラーメンならではのものです。

つるつるとした食感が唇に心地よく
ふわりと歯が入り
やがてやんわりと押し返し
むにゅうっ となり
ぷつり と噛み切れ
つるりと飲み込んでしまう

麺の美味しいと言われる要素全てが入ってます
言うまでも無くその美味しさの正体が「コシ」なのです。

残念なことにホンモノのキネ突き餅を入手するのは年々難しくなりつつあります。
茹でたての手打ちうどんを賞味する機会の無い方もおられるでしょう。
正しい「コシ」とはどんなものなのかを実感するチャンスが少なくなってきていると思うのです。

このままではタイの春雨状の「フォー」を食べても「コシ」があるなどと言うことになりかねません。
フォーは淡白で軽い食感を楽しむ所が美味しいのですし、
フランスパンはカリッとしたドライな食感が美味しいのです。

本来あるべきところに「コシ」を求めないで無くていいところにばかり「コシ」を
求めるから正しくない食品列が並ぶような惨状になっていくのです。

スパゲッテイには水分勾配の程好い硬さが丁度似合うように
日本人の為のラーメンには多加水手打ち麺がもたらす「コシ」が最も美味しい麺だと確信しています。

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「コシ」がどんなものなのか
いまいち良く解らないという人にこそぜひお召し上がりいただきたい麺です。
今まで茹で足りない--妙に中芯の残る不快な硬さのラーメンを食べていて
何らかの疑問をお持ちだった方なら間違いなく「目からウロコ!!」となります。


グルテン強化などの小細工は不要です。
原点回帰してみればそこには昔から少しも変わらぬコシがもたらす
美味しい世界があったのです。


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どこにも無い麺
どこにも無い一杯を求め続け今日も試行錯誤を繰り返しています。






















自家製の手打ち麺では多加水で仕込む為3日がかりと前回までご紹介しました。
つまり、日曜日に使う麺は金曜日に仕込み始めなければならないのです。
これをずっと続けるのはちょっとしんどい話なんですが、
実は手打ちの本場のひとつ讃岐ではもっと大変な事態なのだそうです。

先に手打ちうどんの辛苦という話で取り上げましたが、
うどんを茹で上げるのにほぼ10分以上かかります。
この時間がうどん屋さんの泣き所なんだと書きました。

ところが讃岐では様相が違います。

その前に
普通、調理場では誰が一番偉いのかというと断然!調理長です。
調理場の天皇と言っていいほどの絶対権力者です。

場合によっては経営者より権力を持ってたりします。

和食では調理長
場合によっては板長、花板など色々な呼ばれ方をされ、
大体次に来るのが二番板だったりします。
煮炊きする人は煮方です。

中国料理ではチーフ=調理長
主に一番鍋、次に一番板か二番鍋とそれぞれその店で序列がきっちりと決まっているのです。

特殊な例ですが、
鮎専門店があり、ここでは鮎を炭火で焼き上げる職人が一番です。

トップには権力とともに高給が保障されなければ示しがつきません。
私が初任給3万円だった当時、東京の巨大有名店のチーフは60万円という話でした。
その頃の外国航路の船長より高給でした。
お金ばかりじゃありませんが、だからこそ見習いにも夢があるとも言えますね。

鮎専門店ではライバル店から高給で引き抜きがあるほどです。

さて、讃岐うどんの本場では誰がその地位を占めるのかというと
「釜前」と呼ばれる人です。
うどんの茹で加減を見る仕事をします。
ちょっと意外な感じがしませんか?

ダシの味を決める人でもなければ、打つ人でもないのです。
もちろん、どうかすると経営者より偉い場合もあるやも知れません。
もしかすると他店からもっと高給で引き抜きがあるかも知れない そんな
トップがうどんを茹でるだけ??

奥が深いんですね、実は。
ただ、茹でているわけじゃなかったんです。

その日の様々な条件をみて、先に茹でるのです。
以前にも書きましたが、讃岐では繁盛すると「茹で」は正しく出来ても
ついその後の「蒸らし」がおろそかになり客足が遠のいてしまうほど客の舌が肥えているのです。
が、もうひとつ重要なポイントがあるんですね。
つまり、長々と待たす店もダメなんだそうです。

待たさず、ちゃんと正しく茹で、蒸らした美味しいうどんを出す。
一見当たり前のように思えるかも知れませんがこれは至難の業です。
しかし、昼の繁忙期に沢山のお客様をすばやく捌き、しかもちゃんとした物を出せれば
確かに繁盛店になりますよね。

不慣れな人なら必ず茹で置きしすぎてふやけたうどんを出しそうではありませんか?
そんな店は論外なほど、ことうどんに関しては厳しい土地柄なのですね。
ここ富山では普通に皆おとなしく10分以上黙って待っています。

その釜前の達人が行っているのが「読み」なんです。
気候、温度、お客の入りの動向、その日の客層などなどです。
先の鮎の炭火焼きの達人もそうです。
何しろ仕上げるのに時間がかかりますから
顔を見てから始めていたのでは遅い仕事になって「腕が悪い」と言われます。

本場で手打ちを学んでくる人は多いんですが、
ただ手打ちの技術だけを学んでくるだけでなく
この、待たさないで美味しい出来立てを常に供する  という秘術を学んで来て欲しいものですね。

さいわい、私は手打ちではあってもラーメンなのでお客様のご注文を聞いてから茹で始めても苦情は来ません。
有難きかな
といったところです。


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味噌魚貝のひもかわうどん





麺が美味しくなったとお褒めの言葉を頂戴することが多くなってきました。

「暴れ馬のようだ」
と評した方がいらっしゃいます。


私は十数年以上前から趣味として手打ちうどんを作っています。
中国料理店の頃には「小田巻き蒸し」というランチメニューで出していました。
茶碗蒸しの中にうどんを敷くものです。
現在のミニ丼に使用している丼で大きな茶碗蒸しを出す時の1パターンとしてです。
もちろんもう一品つきました。
ボリュームがあるので大人気だったんですよ。

さて、うどんは中力粉という比較的グルテンの少ない粉で打ちますから
足で踏む程度でこねる事ができます。
これを中華麺用粉の強力粉で出来ないものか というのが私のかつてのナゾでした。

実際は硬くなりすぎて、とても手ではこねる事ができないのです。
柔らかく練っても美味しくなりません。
なんとか、こねても今度は薄く伸ばす事など不可能でした。

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青竹打ちがそれを解決してくれました。
長いパイプを使い、テコの原理で体重をかけることでそれが可能になったのです。
実践してみると思っていた以上の多加水麺の威力が判りました。

基本は讃岐うどんと同じです。
頑固な手打ちうどんを作る方法で中華麺を作るわけです。
(一日目)
   水回し__加水して混ぜる
   脱気 __粒子の中の余分な空気を抜く工程_一次熟成
   練り __青竹打ちで何度ものしと畳みを繰り返す
   寝かし__一定温度で半日寝かす     _二次熟成
   半のし__機械にかける厚みにまでのし直して
        一晩寝かす          _三次熟成
(二日目)
   伸ばし__機械で一定の厚みに伸ばす
   裁断 __麺線にカットする、手もみ 
   計量 __一定重量に量る
   寝かし__翌朝まで冷蔵庫でしまう    _四次熟成
(三日目)
   お店で提供

こうして作り始めてから3日めでようやくお店に出せる麺になるのです。

麺の生地は手打ちによる のしと畳み効果で適度な空気層が入ります。
これが手打ちならではのツルツルとした食感を産みます。
(但し、水回し直後の多量の空気は邪魔なので抜く工程が必用=脱気)

こうして出来る多層網の目構造の麺体とはどのようなものかと例えるなら
パンで言うならクロワッサン
菓子ならパイですね。
小麦粉は先に述べたように水などの配合を変えるだけでいかようにも姿を変えてくれます。

また鶏肉ならモモ肉。
豚肉なら肩ロースのようにその組織が小さく区切られた小部屋状になっているのも大きな特徴です。

まさに高層建築の1DKマンションのような構造になっているのです。

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これを伸ばす ということは
これだけの網目構造が一本の麺に入っていくのです。
どれだけ薄くとも、厚くともその構造は同じです。
これが多加水麺の内部構造です。

この多層構造にはいくつかの長所があります。
1、伸びにくい
2、太くても茹で上がりが早い
3、コシが強い
4、消化分解が緩やかなので
       「食後の急激な血糖値上昇を比較的緩やかに抑えられる」
       「腹持ちが良い」
という所です。

理由を考える為に低加水麺と比べてみましょう。
低加水麺は水回し後、ローラーで生地を圧着させます。
水分の少ない粉体は手ではまとめられないからです。
ですから「こねる」事が出来ません。

そのため仕上がる麺体は多層には出来ても網の目構造を作ることは難しいのです。
4層なら4階建ての各階1フロアの建物 に例えましょう。

熱や水を加えると  を
-ドアを開けて声をかけると-  に置き換えてみると判りやすいですね。

小部屋の集合体は時間がかかりますが1フロアならすぐ向こうにまで声が届きます。

多加水は水分を多く含んでいますから茹で時間が早く、伸びにくい理由がココなのです。
低加水は水分が少ないですから盛んに水分を吸収し、早く伸びるわけです。

この伸びた状態を
「水分勾配の減少」した状態と言います。

麺の外側と中心部の水分の差異を形容して水分勾配と呼びます。
これが急勾配なほど硬い状態
勾配の無い状態が伸びた麺  というわけですね。

多加水麺ではコシがしっかり形成されていますから柔らかく茹で上げてもコシは残ります。
つまり水分勾配だけに頼らない と言えます。
低加水麺では正確な意味でのコシはありませんから水分勾配が重要視されます。
だから硬さを売りにするケースが多いのです。
柔らかく茹で上げるとコシの無いのが解るからです。

だから低加水の代表のパスタがラーメンになり得なかったのです。
スープパスタは量を多く出来ません。
-ちゃんぽんに利用しているケースをかつて見たことがありますが、
熱くてゆっくり食べると終いにはふやけてしまいました。

同じ理由から分解消化の時間もどちらが早くてどちらが遅いか
また腹持ちの違いもお解かりいただけるかと思います。

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料理人は作って終りではありません。
食感や腹持ちの事まで考えて作ります。

前回の「天麩羅」を例に挙げるまでも無く。
食べる時のカリッとした食感を時間の経過とともに「読む」事の出来る料理人が
油の調合から衣の配合に気を配るように

私も麺を作って
「はい、今日の仕事はこれで終り」とはなりません。
茹でて、出して、
お客様が口に運ぶ時の食感、噛んだ時の食感、口から鼻へ抜ける時の風味
飲み下す感触、食べ終わるまでの時間、
そして追加麺の茹で上がりの時間の「間」
腹持ち  まで全てにおいて責任があるのです。
こうしてやっと仕事を支配できます。

これを読まないと仕事になりゃしません。

奔馬のような麺とはありがたいお言葉です。

おもちゃ作りの職人はゼンマイやバネで動く仕掛けを仕込むときに良い材料を吟味するように
私も最善の粉を選択します。

おもちゃの動く姿を予想してネジを巻くように
私も口中で麺にたわめられた力がはじけるその瞬間を読み
麺を鍛え打ちます。

そして期待通りにお客様がその食感に驚きの声を上げてくれる瞬間と
再来店してくださりお顔を拝見するまでが
ひとつながりの仕事なのです。

うれしい事に初めて来店された方の「麺追加」のケースが多くなり、
再来店される割合も少しづつ増えてきたようです。

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PCの調子がここ数日変だと思っていたらとうとうドック入りするはめになり、
おかげで麩の話の完結を書くのは画像が無い為、先送りになりました。

代わりに予備のノートを出してきて書いています。

今回は確認したいことがあり久しぶりにうどんを打ちました。
手打ちうどんはやはり楽しいです。

「そんな事言って、毎日中華麺を作っているではないか!?」
と言うなかれ、
それでもやっぱりうどんは楽しいんです。
何というか、
自家用ならではの無責任の気楽さ+手の感触の快感+仕込み(仕掛け)の期待
などです。

うどんの生地には特有の滑らかさがあり、触れていると癖になる楽しさがあります。
これは初めての方でもすぐに理解してもらえます。
出来上がりを期待して寝かしを行うのも中華麺と同じですが今回はあえて
変化球を試しますのでいっそうの期待でソワソワするほどです。

この「手中から生まれ出ずる美味の面白さ」
  という素晴らしい事をできるだけ多くの人に伝えたいものです。
  民族の遺産とも呼べるものではないでしょうか?
昔から小麦生産の盛んな地域では
「上手にうどんを打てないと嫁に行けない」 などとされたくらいだそうです。

さて、今回打ったのはこちらの2種。
栃木県佐野に伝わる耳うどん と 群馬県桐生のひもかわうどんです。
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スーパーに並んでいるパック入りが普通になってしまった今
これを見ると不味そうに見えるかも知れませんね。

耳うどんはすすり甲斐が無さそうだし、ひもかわうどんは薄すぎて口当たりが悪そうに映ることでしょう。
今回私が実証したかった事の第一はそこなんです。

1、うどんで麺の変化をどの程度加えられるのか?
  また、それによって変化を起こす水分勾配によるコシの経緯の検証。

すみません、つい持って回った言い方をしました。
要は麺の変化を舌で確かめる ってだけです。

耳うどんは薄く延ばした生地をマッチ箱程度の大きさに切り分け両手でつまみ、
ぐるりと回してくっつけるだけのものです。
茹で時間はその同じ厚みのうどんと同じ。

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もうここにいらっしゃる皆さんはお解かりでしょう。
茹で時間は厚みで決まりますから表面積は無関係です。
これは10分程度茹でて、いったん冷水で洗いぬめりを落としてから
具と一緒にダシで煮込んだものです。

郷土料理なんだそうです。
重なった部分の生地の変化がとても美味しい  
『やっぱりこれもうどんなんだな~』と食べながら思わず笑って納得してしまいます。

お次は「ひもかわうどん」です。
桐生は昔、繊維産業が盛んだったそうで食事の時間も惜しんだ女工さん達が作って食べたという経緯があるそうです。
女工哀史の話を引くまでもなくもう悲しみが伝わりそうな風情ですが、
これは想像に反して実に美味しいうどんです。

時間を惜しんだというくらいですから誠にすばやく茹で上がります。
しかし、茹で立てならではのふっくらとした食感と異様なくらいのその幅広な形体でツユの絡みが素晴らしいのです。
つまり、ダシは薄くても十分美味しく食べれたはずです。
貧しい女工さん達がそんなにおごったダシを引いていたとは思えないからです。

さて、この2種類のうどんを見て皆さんは何を思い感じますか?
実に示唆に富んでいると思うのは私だけでしょうか?

耳うどん  戦後の悪名高い「すいとん」にどこか似ていませんか?
事実それに近い「団子汁」といううどんの遠縁もいます。
しかし、これは違います。
それどころか「ハレ」の料理なんです。

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年末に作り正月三が日に食べることで魔除けにする  そうなんです。
つまり、
うどんを悪魔の耳に見立て家庭の話を悪魔に聞かれないから無病息災に過ごせる
or
悪口が聞こえないようにして近所との交際を円滑にする
などの説にもとずくものです。
ですから
正月料理につきもののかまぼこや伊達巻などの豪華な具材と一緒に煮込んで仕上げます。

はい、
ここで誰しも疑問に思う点に触れましょう。

不思議な事に  すすれない  不満は全く感じません。
煮込みという一点に主原因があるのでしょう。
熱すぎるうどんはどのみち盛大にはすすれませんからね。
でも、その短所を十分補ってくれる長所があります。

食べ飽きが来ないのです。
ふっくら、もっちり、重なった部分はしっこり、と

熱々をハフハフ などと食べていると
             これは、うどんなんです。やっぱり。
断じてすいとんではありません!
これは手打ち、多加水だからこそなんです!
コシ があるからこそ  なんだとしっかり確認できました。

さて、ひもかわうどん  
幅広といえば全国には様々なタイプがありますがこれほどの極端なものはないのでは?
それがこんなに美味しいとは素直に驚きました!


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実食に勝る想像無し

食べて見なくちゃ解りません
とかくネットでは見た、読んだ、
「らしい」「そうだ」だけで勝手に情報が独り歩きします。
ですからこれを読んで頭から信用もしないでください。
どこかで食べる機会があってもそれはまた同一とは限らないからです。

でもこれで両方を食べてみて
もうひとつの課題もクリアできました。

2、多加水麺はなぜ腹持ちがいいのか?  を検証する。
  というものです。

皆さんは「うどんは消化がいいからすぐに腹が減る」
     「うどんは腹持ちが悪い」
と、思ったり、聞いた事はありませんか?

それは間違った印象です。

茹で玉うどん(白玉うどん と呼ぶ)では確かにそういうこともあります。
しかし、しっかり多加水、手打ちで鍛え上げたうどんは実は腹持ちが大変いいのです。

なぜか?
一般に低加水と多加水の麺を比較すると低加水麺の方が延びにくい印象を持ちがちです
が実は反対なのです。
低加水麺は水分が少ないが為、すぐに水を吸いやすい傾向があります。
多加水麺はそれより幾分吸いにくい と言うわけです。

伸びる=ふやける とまず量が多くなります。
そして、以前にお話した鉄筋コンクリートのような構造が壊れやすくなります。
すると、当然分解が早くなりますよね。
ですから、白玉うどんや低加水麺は腹持ちが悪い  となります。
白玉うどんでは『沢山食べたはずなのに??』となって一層、先のような印象を強くします。
(量の問題では無い ともうお判りですね)

ところが低加水麺のラーメンでは化学調味料や脂で腹持ちがいいように錯覚をします。
腹持ちではなく大抵の場合「もたれ」です。

では、多加水手打ちではなぜ腹持ちがいいのか?

それは手打ち麺の構造にあります。
顕微鏡で見ると小さな気泡がいっぱい見えるそうです。
打って見ると良く解りますがどうしても空気の層を巻き込んでいくから
自然にそうなります。
それがツルツルとした食感を生み、
そして打ち込むほどに強靭な「コシ」=鉄筋構造を形成するのです。
空気の層と鉄筋構造で伸びや分解は遅くなります。

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そう、低加水麺には正確な意味での「コシ」はありません。
小麦粉を練って茹で上げた状態の水分勾配をコシと錯覚しているのです。

しっかりとしたコシと多加水構造が腹持ちを良くする原因です。

なぜ、では私が多加水麺にこだわったのか?
答えは「腹持ちを良くする為」だったのです。

無添加スープで体に悪いラードを排除してラーメンを作ると実に消化が良いらしく
すぐにお腹が空く というのが欠点だったからです。
今は
やたらにお腹がふくれる  と言ってもらえます。
いずれ、きっと腹持ちも良い事にも気づいてもらえることでしょう。
しかし、それは決して
不快な「もたれ」ではありません!
幸せな満腹感の持続です。
静かに無添加が分解吸収されているのです。
きっと血糖値の上昇も幾分ゆるやかなのでは? と想像しています。

寝る間も惜しんで働いた女工哀史の主人公たちが空き腹を抱えていたなんて想像もしたくありませんね。
きっと手打ちのひもかわうどんはしっかりと腹持ちよく厳しい労働に耐える彼女達を支えてくれたに違いありません。

参考文献
旭堂出版
「うどん大全」









  























一本の麺には のし面と切断面がありそれらが太さを構成します。
そして最も重要なのが次の「長さ」です。

この話をするためにはいささか長めの前振りを要します。

音を立てずに細長い麺を黙々とフォークで口に運ぶ欧米人は知らず
日本人は盛大にずるずると音をたててすすりこみます。

麺だけではありません。
味噌汁も音をたてます。

欧米人は絶対!音を出してスープを飲みません。

この違いはスープと味噌汁の温度の違いです。
スプーンですくってぱくりと口中に入れることの出来る温かさがスープの適温なのに対して
味噌汁はただでさえ味噌の保温性が高いのに熱々を良しとしますからとてもそのままグビリとは飲めない高温なのです。

直接唇を触れただけでヤケドをするくらい熱いのですからそのままではとても飲めません。
そこで空気と一緒に吸い込む事で急激に温度を下げているというわけです。
今ここで何度から何度に下がりますとは明記できませんが何かの文献では驚くほどの温度差でした。

よくスープの冷めない距離で暮す  などという言葉が誤解されていますが
そこの所を考慮するとまた違う微妙なニュアンスが見えてきたりしますね。

さて、この高温か微妙なぬるさか というのはお茶でも当てはまります。
高温で淹れるほうじ茶なら音を立ててでもすすらないととても飲めません。
ですから落語家の演じているお茶のすする擬音はほうじ茶なのかな? と
推測できたりします。

ぬるめのお湯で淹れる煎茶や玉露ではすすらなくともそのままグビリと飲めるからです。

コーヒー、紅茶も日本人は概して熱すぎの湯で淹れる傾向があるようです。
そうして考えればいつかアメリカのファストフード店で
『コーヒーが熱すぎてヤケドをしたのはそのコーヒーが熱すぎたからだ』
との訴訟に対してこれを認める判決が出たことがあり、
それを多くの日本人がやはり訴訟大国アメリカはどこか変だぞ  と感じた事も
その点を考慮すれば微妙なニュアンスの違いがあることを解るはずです。

ことほど左様に温度というのは決定的に生活に根付いていて、
そこから習慣の違いや食生活の違いまで起こしています。

さて、長い前振りですみませんでした。
熱いラーメンやうどんはすすらないと食べれたものではありません。
逆な言い方をすればすすれないラーメンは美味しくないとも言えます。

美味しく感じる麺には太さと同時に適度な長さが求められているのです。

以前、製麺所さんから仕入れた最初の頃

-普通は一玉何グラムと注文しますから-
-切り歯の総幅が決まっているので自然に長さも決まってくるのですが、-

厚さを取って太くした分長さが10数センチしかなかった頃がありました。
これは美味しくありませんでした。
すする喜びが半分だったのです。
長さは味に響きます。

すぐに改良しましたがやはり機械打ちの麺は不自由なものだと感じた次第です。

今はどれだけでも長く出来ますがやはり過ぎたるはなんとやら おのずと適度なサイズは決まってきます。
長すぎれば今度は重くなり、すすりづらくなります。
快適にすすれないと美味しくは感じられないのです。

さて、TVなどでラーメンを食べている場面を見ると無性に食欲をそそられませんか?
その原因もこのすする音に主原因があります。
もちろん撮るのも編集するのも放映するのもプロの技があってこそです。
ですがこの音!
すする習慣のない外国人はいざ知らず日本人にはたまらない音です。
名人の落語家はこれだけで生唾を出させます。

gsさんは先日
>官能的快感
と麺を評してくださいました。
いい得て妙とはこの事ですね。
確かな味覚と言葉の的確さにはいつもながら驚かされます。

一説にはこのすする行為は幼児期の記憶に由来する快感だと言います。

唇をこする、通過する刺激が母乳を吸っていた頃の記憶にだぶるのではないか というものです。
おしゃぶりや指を吸う行為とも関連します。
擦過感と言うそうです。

ですから麺にはすすって心地よい不ぞろい感を持たすため
手もみにします。
擦過感をより刺激するように。

いわゆる機械製造による「ちぢれ」には無い太さの違いが生まれるのです。
機械によるちぢれにはこれはできません。
ウエーブはかかりますが太さは変わらないのです。

一本の道路に例えてみると良く解ります。
ウエーブ麺はカ-ブの連続する道路。
ちぢれ麺は路幅の激しく変化している道路と言えます。

麺の太さが適度に変化していることによって茹で具合が微妙に違ってきます。
その事が食感の変化をもたらしいつまでも食べ続けていたい欲求を刺激するのです。
食べ飽きないのですね。

適度な太さに続いて
すすって美味しい、心地よいラーメンにするためには
適度な長さと、太さの違うちぢれの入った麺が必要だったのです。

とはいえ、例え9千9百9十9里までできたとしても100点の無い世界です。
評価を下すのはあくまでもお客様。

私はただひたすら自問自答を繰り返すのみです。
つるつるとすすれば一息で口中に入ってしまう一本の麺 
たかがラーメンです。

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ですがその一本の中には折りたたまれた生地の他にも色んなものを一緒に込めて
打っています。

さあ!もうすぐ新年が来ます。
新しい年にはさらに美味しくなりますよう精魂こめて麺を作ります。
前回お出でになった時とは更に美味しさがアップしているはずです。
麺には果てしない仕事があるからです。

年末の正月迎えの用意をしながら決心を新たにして今年の終りとさせていただきます。

今年も沢山ご来訪いただき誠にありがとうございました。
来年もよろしくお願い申し上げます。

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P.S.
今年の年賀状は投函が遅れましたので遅く届きます
先にお詫びしておきます。














麺塊を正しく鍛え充分なコシを備えさせたら
丸一日休ませます。

この時の温度が重要です。
昔はうどん職人がこれを肌で測り夏に涼しいところへ運んだり
冬は布団に入れたりコタツに運んだりと、それこそ勘の世界で行いました。
今は温度設定で自在にコントロール出来る便利なものがあります。

こうして休ませるとあんなに硬かった麺塊にまたふんわりと柔らかさが戻っているのです。
これらを「グルテンの緊張と緩和」と呼びます。
いわゆるパンなどの醗酵による膨らみとは別です。
「五分毎に半分まで減少する」性質を応用して柔らかくするのです。

などと書くと小難しそうですが
ナニ簡単なことです。
人間だって鍛えすぎるとそれがストレスになりますよね。
そこでちょいと休ませて気分転換させ、少しだけ油断させてやる  という話です。

そして早朝まだ寝ぼけている麺塊をさささっと伸ばしてしまいます。
「な!? お、おい!ナニを#☆うわ」
などと言ってる間にもう希望の厚みにまでのしてしまいます。
ぐずぐずしていてはまた硬くなってしまうから急ぎ です。

さて、この厚さの話でした。
先に私達プロは太さを考える時にあまり幅を気にしないと書きました。
なぜなら、よほどべらぼうなサイズでない限りあまり影響が出ないからです。
それに比べると太さを決めるもう一方の因子である 「厚み」

これは茹で時間を決定します。
茹で時間は厚みで決まるのです。

多加水手打ちであろうと、超低加水の代表であるパスタであろうと
変わりません。
正方形断面の極太の柔らかいはずのうどんの方が
硬いはずの平べったいパスタ乾麺のフェットチーネより時間が長く掛かるのを見ても
明らかです。

熱伝導を考えればもっとよく解ります。


さて、一杯=一人前とするお店なら茹で時間をあまり考慮しなくても構わないかも知れません。
しかし、ほとんどのお客様が麺の追加(替え玉)をご注文される私達の店では
これは大問題です。
お一人が一玉を食べ終わる平均的なタイムで次の一玉が茹で上がるのが理想的なので
茹で上がり時間に合わせた厚みを出してやるのです。

ここが自家製麺に切り替えた理由のひとつでもあります。
自在に厚みを変えれる必要があったのです。

私達の店では当初替え玉はしていませんでした。
当初はスープが弱くて替え玉に耐えられなかったのです。
日々苦心して、スープを強く強く鍛え、ようやく替え玉ができるようになり
「大盛り」をやめる事ができました。

それでも日々強く鍛え続けました。
そうすると麺が負けてきます。
それで麺を太くしてもらいます。

その繰り返しでとうとう切り歯16番でこれ以上厚みを取れない という所まで
来てしまっていたのです。

切り歯16番と言うと「え!?あの太い麺でそんな普通の切り歯なの?」と
驚く人もいました。

もう製麺所でも同じ製法での自家製麺ででも 合わせられない所まで
スープを強くしてしまったのです。

今はどれだけでも厚く出来るようになり
しかもそれを体感させないヒネリ技を交えて
おかげでスープともとても良く噛み合ってくれます。

無添加でも物足らない味を目指そうとしてから10年経ちます。
ようやく何処にも無い誰にも出来ない強いスープに強情な麺を組み合わせることが出来ました。

でも、これで終りではありません。
毎度繰り返しますが蕎麦職人は
「九十九里をもって道半ば」と言います
つまり100里など来ない、在り得ないと言ってるのです。

困りました。
だってウチは100里や千里をとうに超えてしまって万里なのです。

自営を始めて10年してからここに移転して名づけた店名です。
もうここに来てから20年になります。

いまさら改名も出来ませんから生意気だとお叱りを受けてももうこれで行くしか
ありません。

怠けないで精進をしますからとお約束をしてどうか許して頂くしかありません。

道半ばですが万里を名乗って商っております。


チャーシューメン

追伸
道半ばとは言いましたが 控えめに言っても
とても美味しい麺です。
お越しを心よりお待ち申し上げます。
ぜひ一度この不思議な食感を味わってみてください。

なんと申しましょうか
ボリュームのある豊満な麺です。
とても濃いスープなのにある意味淡白なスープとベストマッチしています。

年内は30日までの営業となります。
明けてお正月は3日からの営業です。












小麦粉を水で練り、固まりにしてそれを水中でもみもみすると
表面が溶けて流れ落ちていきます。
それをずっと続けると最後に残るのがグルテンです。

溶けて流れ落ちたものを再び乾燥して粉として取り出すと「浮粉」(うきこ)
海老ギョウザなどでご覧になった事もおありでしょう?
薄く伸ばしてきれいなヒダをつけて蒸すと中身が透けて見える あの粉です。
グルテンを含まない軽い味わいが身上です。

この、加熱で透き通る性質と聞いてピンと来た人は料理通です。
この正体がでんぷん質です。

では残ったグルテンは? というとたんぱく質なのです。
麺にはこの両方の力が形成するコシ、粘り、弾力が必要なのです。

たんぱく質はグルテンの網目構造を作りコシや麺の硬さを形成し、
でんぷんは粘り強さや滑らかさを出します。

さて、私たちが普段耳にする麺作りにはどんな手法があるでしょうか?

手延べ--生地をたらいに詰め込み包丁でらせん状に切り出し細く伸ばし
     木枠にかけてひっぱり伸ばして乾燥させる手法(大門そうめん、氷見うどんなど)
手打ちうどん
   --中力粉を塩水で練り、足踏みで伸ばして包丁で切る(讃岐うどん など)

あとは中国料理の刀削麺や手で引っ張り伸ばして打ち付ける手法などもありますが
麺のコシや粘りなどの相違からここでは記しません。

その他一般的には製麺所さんが採用している機械製造の麺となります。

今回私が採ったのは正確には「手打ち式」と呼ばれるものです。
あまりに強力な生地の為に手では伸ばせないのです。
打つまでは人力で行い、後の工程は機械を導入しています。
讃岐うどんなどが純手打ちと称されるのに比し「手打ち式」となります。

純手打ちで中華麺を作る地域もありますが、麺の硬さなどの点で
富山ではなじみ難いかと思われます。


さて、先日書きましたように多加水です。
それで手打ち式で作るには訳があります。

その前に小麦粉をこねあげて麺の固まりがここにあるとイメージしてみてください。
その中はどうなっているのでしょうか?
よく例えられるのが鉄筋コンクリートです。
白いコンクリートがでんぷん。
中のしっかりとした骨組み構造がグルテン というわけです。

でもこれだけで終りではありません、ここからが仕事の始まりです。
これを伸ばします。
すでにかなり強情になっていますから素直には伸びてはくれません。

そこで佐野式の出番です。
今は衛生面を考慮して鉄パイプを採用していますが、強度も考えるとやはり竹に行き着きそうです。
栃木県佐野市ではこれを「青竹打ち」と呼びます。
テコの原理を応用して強力な力を得る手法です。

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これで体重をかけると手ではびくともしなかった麺体がいとも簡単にのせます。
こうして圧延をしたら畳み、角度を変えてまた繰り返します。

先ほどの鉄筋コンクリートを思い返してみてください。
丸い固まりを平らに押し伸ばして金網状態にしたものをもう一度折りたたみ、
また伸ばす。
そうすると中の構造はどうなっていくでしょうか?

つまり、これが手打ちの理由。
グルテン=コシの多層構造の構築です。
パンで言えばクロワッサン。
菓子で言えばパイ。

ここから更に数度折り畳み鍛えます

しまいには全体重を掛けてもパイプは下には降りてくれないほどの硬さにまで鍛えられます。
そうして伸ばし、カットします。

すると一本の麺の中にこの多重構築された層が全て収まっているのです。
それが口の中で噛み切られるときに独特の歯応え、食感をもたらします。

何本もの繊維を断ち切るようでいて
柔らかな つき立ての餅を噛む様な
優しいようでいて、しかしとても強情な麺です。

これを作り上げるのに多加水、手打ち式が最適だったのです。
美味しい麺に仕上がりました。

噛み始めはふうわりと歯が入ります
噛むとやんわりと押し返すような弾力があり
それはどんどん強くなり
やがてぷっつりと切れます。

その時の感触がブルンと口中ではねかえるような未経験の食感なのです。
もっちりとして
つるつるとして
ふわふわ
しこしこ
そしてぷるぷるの麺になりました。
手打ちでこれだけの太麺はちょっと他には見れません。

その極太麺と絡むのが強烈な黒いスープです。
いかがでしょうか?

はやくも病み付きになった方が沢山いらっしゃいます。

ありがとうございます。
苦労も報われると言うものです。

こうして書くと
『なんだ 良いことばかり言ってるじゃないか』と思われるかも知れません。
実は欠点もあります。
大量生産に向いてないのです。
多加水手打ち式の手もみ仕上げは だから製麺所ではあまりやりたがりません。

製麺所などの機械製造麺は現在低加水麺が大流行中です。
これは短時間で大量に製造できるからです。
しかし、今述べたような鍛えたコシを形成しにくいという欠点があります。
そこでグルテンや各種添加剤を加えます。

私はできるだけ余計なものを加えない原点回帰を指向していますから
手打ちに行き着くのもごく自然な結果だったと言えます。


次回は太さについて書きましょう。
太さには明確な意味があるのです。







人間一人一人に個性があるように小麦粉にも個性があります。
まず、主にグルテンの強さから見て
強力粉(きょうりき こ)
中力粉(ちゅうりき こ)
薄力粉(はくりき  こ)と分類されます。

そして性格もあります。
これは灰分(かいぶん)と呼ばれるミネラル分の含有量と種類によります。

普通 そば粉などでは一番粉、二番粉 などといった粒のどの部位を挽いたものかを
示しますが小麦粉ではそれらはメーカーの極秘事項となっていて公開されません。

その代わりにこの灰分とグルテンのグラフを発表していて、私達は多彩なブレンドラベルから
自分の指向する粉を選択するしかないのです。

ここに沢山のメーカーが存在する理由のひとつがあります。
ブレンドの妙というものです。

小麦粉は輸入品を「外麦」(がいばく)
    国産品を「内麦」(ないばく)と呼びます。

大雑把な言い方を許してもらうと
麺には  非常に残念ながら外麦が圧倒的に美味です。
以前にうどん王国讃岐にて地粉使用を掲示してあるお店が、実はオーストラリアの粉を使用していた
という事件があったのを記憶してらっしゃる方もおいでだと思いますが
これなどが実に端的な話です。

もちろんウソはいけません。
これはそれとは次元の違う話で
麺を商うお店ではまず美味こそが主題だからやむを得ない結果なのです。

以前にTVでオーストラリアの研究所の映像を見たことがあります。
多種の小麦粉で麺を作り様々な実験を繰り返します。
茹で伸びを計測したり
麺に重りをつけてどのくらいの弾力があるのかを計測して、
「これは日本のどこそこの麺に適している」などと答えているのです。
さすが国家戦力を持っているところは気合が入っているものだと舌を巻きました。

我が国ではどうでしょうか?
温暖化で米作りに悪影響が出てくるからと品種改良は確かに進んでいます。
各地では対応型の品種が続々と産まれています。
でも、いつまでたっても米ばかりなのです。

そういう意味では富山県は非常に対応が遅れているといえます。
野菜生産の率が日本最下位なのだそうです。

ところが!
”JA高岡”さんでは小麦栽培を盛んに奨励していてすでに地元製粉会社を通じて
販売をしているのです。

高岡の戸出地区では昔から小麦粉生産が盛んで乾麺のうどんも販売されているのは知っていましたがまさか小麦粉の販売までしていたとは知りませんでした。

早速メーカーからグラフをもらい、検討。
次にこれを配合して試作してみました。
「ゆきちから」
なかなか柔らかい仕上がりになってくれました。
基本は外麦で一部内麦。

構図が決まりました。
ありがたい事です。
地元のものがあればそれが一番なのです。

本来こういう仕事こそJAさんが果たされるべき役割だと思います。
JA高岡さんは立派なお仕事をされていますね。
まだまだ生産量が少ないとの事ですが周知されるにつれ飛躍的に販売量も増えていくと思われます。
どうか増産のほうもよろしくお願い致します。

こちらがその粉で鍛えた麺体です。
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この中で何が起きているのか?

それはまた改めて・・。