2012.08.31 水あめ
菓子は甘くなければ受け入られませんが
甘すぎればくどくなり飽きられやすくなります。
洋菓子の事はいざしらず、
和菓子職人はそこで大変苦労するそうです。

では
甘くない菓子を作るにはどうするのか?
砂糖を少なくする?
いいえ、それでは誰も買いません。

甘くどくない砂糖を用いるのも手です。

もっとも最近では安価な人工甘味料を多用する
美味しくない菓子も大増殖してはいますが・・。
ま、それは論外としておきましょう。

料理の世界でも甘味をどう使うのかはとても重要です。

安直に白砂糖を使えば使うほど野暮になります。
解としては最低点しかつけられません。

私がよく例に挙げるのが「スキヤキ」です。
スキヤキは東西で作り方、流儀が異なりますから
あくまでも概論ですが

子供の頃、もしくは子供さんが小さな頃は
よくスキヤキを食べたというご家庭でも成長とともに
あまり食べなくなった
という話をよく聞きます。

夫婦二人だけになったらほとんど食べない
とか
晩酌をするのでスキヤキはどうも
などとも聞きます。

それは砂糖を入れたスキヤキに仕立てているからです。
思い当たる方も多いでしょうが
砂糖を入れないスキヤキにすると
『え?』というくらいに美味しく食べられます。

割り下で作る方法です。
「いやスキヤキに水分を加えるのは嫌いだ」
という方には向きません。

みりんと醤油を同率で合わせカエシを作ります。
それとダシを1:1であわせたものが割り下です。

これで作ると
『おや?スキヤキも悪くないぞ』となります。
もちろんご飯も進みますし、お酒でもいけます。

この割り下方式でいくとうどんスキや魚スキまたは
蟹スキなどと無限に広がるのですが、
それはさておき
これが甘くどくない甘さの違いの答えのひとつです。

でも答えはひとつではありません。
全ての道はローマに通ず
ではありませんが
全ての工夫は美味に通じていますから
甘味を考えることは実は料理の奥深い根源を探る事に繋がります。

水あめもその解のひとつです。

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イワシの蒲焼丼
ウナギの蒲焼
ナマズの蒲焼
佃煮
アナゴのツメ
ヤキトリのタレ

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そんなときには不可欠です。
もちろん砂糖も加えますが砂糖だけじゃくどい味に
なりますから水あめは絶対に必要です。

ところが、最近は蒲焼のタレなどの業務用が出回り
それを使用する人が激増したため
水あめの需要が落ち込んでいるそうです。

困ったことです。
甘いのに甘くどく無いからこそ
長年日本の伝統食としての地位を保ってきたのに
これじゃ早晩廃れていってしまうかもしれません。

甘味はそれほど重要な
そして誰もネット上などで語らない本当の勘所なんです。

この水あめ、ご家庭でもぜひ使ってみてください。

料亭の味をご家庭で

などといったうたい文句は大っ嫌いですが、
甘味を考慮すると確実に品の良い仕上がりになること
間違いありません。
一度お使いいただければ私の言葉がウソではないと
解って貰えるものと信じています。

こんな所からも蟻の一穴のようにして崩壊を
始めている伝統食。
そしてそれに手を貸す化学調味料などのあざとい
添加物の数々。
愚かな料理人。

そんな物を使わない本物の味はいまこそ家庭から
再構築する時なのかもしれません。


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2012.08.20 飛び魚の話
六月中旬

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待ちかねた飛び魚がようやく水揚げされました。
飛び魚には沢山種類があるそうですが、この時期
富山湾から能登半島にかけてあがるのは
小ぶりの「丸とび」とやや大きめの「角とび」と呼ばれる二種類が主です。

「角とび」は刺身や酢〆、ヌタなどに
そして「丸とび」はそれらはもちろんですが、
一番の用途として煮干が最高なんです。

九州ではこれを焼き干しにしますが、
能登では開いて煮干しにします。

これはとても美味しいダシが出ますが茹でる時間の管理が
難しいので私は九州式の焼き干しにします。

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飛び魚はミニ丼でも使います。
新鮮なものは旨味が強く身肉の粘りもあってとても美味しくなります。
青紫蘇、生姜、小口葱と合わせて昆布醤油を添えたタタキ丼です。

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翌日は天丼に使います。

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その他では
三枚に下ろして味噌汁や皮付きのまま刻んで酢味噌和えなどでも
その美味しさを堪能できます。

ただ、この魚はウロコが多くてヒレが大きいので
さばくのが少しだけ面倒で手が掛かります。

そこへもってきてスーパーなどでは小骨の処理の不十分な
刺身が出回る為か
「小骨の多い魚」
として消費者が敬遠することも多いようです。

するとどうなるか?
というと
相場がバカ安なのです。

本当は旨いのに不当なまでに安く流通している
というのはまさに私の大喜びするところでして
格好の餌食ならぬ
まちかねた好機到来となるわけです。

焼き干し
タタキ丼
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天丼
ちらし寿司
メンチカツ丼

等などで大活躍をしてくれます。
この時期に仕込んだ焼き干しは秋のキノコご飯のダシに
最高の物になってくれます。

私がこの魚の美味しさに目覚めたのはタンカーに乗船して
いた20代の頃ですからずいぶん昔になります。

タンカーというのは空荷の時は喫水が高くビル3~4階
くらいまで水面から高くなりますが
満船の時にはタンクに原油が一杯積み込まれるわけですから
水面から数メートルくらいにまで低くなります。

そんなときに朝デッキを一回りするとたまにこれが
上がっているというか引っかかっているのです。

空を飛んでいて着水ではなく着艦してしまうと言うわけです。
鮮度がいいうちに酢味噌で食べます。
その美味しかったこと。

そう思って眺めるせいか顔まで愛嬌たっぷりに見えます。

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おちょぼ口の丸トビ君です

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これらの各パーツは全て飛行のために進化した結果です。
より多く空気をとらえるための主翼
飛行態勢を安定させるための水平尾翼
舵のようなバランサー機能を持った下方尾翼。

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完璧な飛行体ですね。

今、魚が豊富に上がっていますから
やれ小骨が多いとかなんだとか贅沢を言ってられますが
不漁が続けばそうも言ってられなくなるでしょう。

とはいえ、これの美味しさが正しく伝わらないのも
料理人のせいなのが悲しいところではあります。

タタキ丼を食べられたお客様が
「初めて食べたけど美味しいモノなんだねぇ」
とか
「実に旨かった」
などと有難いことを言って下さる度に
「はい、旨味の濃い美味しい魚なんですよ」
と微力ながらPRをしている自分がなんだか滑稽でなりません。

安いのを喜んでいながら
一生懸命に値打ちをつけようってんですから
我ながら矛盾していると思います。


‐-アップするのが遅くなりましたが
6月中旬ごろの記事です。
現在はトビウオは上がっておりません。
秋にはもう一回り大きな角トビが上がります。
もう一度アップできるでしょう。



ここ数年人様の作ったものをほとんど食べなくなり
たまに出かける外食以外はほとんど手作りの生活になりました。

これが本来の当たり前の生活なんだとは解ってはいても
こうして料理人をしていなければ現代では困難だったでしょう。

だからと言うわけじゃありませんが
たまにスーパーに行った時に今どんなものが売れているのか
とキョロキョロしています。

驚きましたね
つい最近TVで或るスーパーが手作りの300円弁当を
販売しているのを放映していたと思ったら
もう大手スーパーでは当たり前のように並んでいるんです。

いったいどんな人達が買っていくのかは知りませんが
空恐ろしくなります。

一般に仕入れ原価というのは3割といわれているのはご承知でしょう。
被服、日用品、食料品
おおむねそうなっています。
300円で売られているハンカチなら仕入れは100円程度
といった具合です。

あとの3割が人件費や光熱費などの経費
残りの3割が粗利
そこから借入金の利払いなどの諸掛を引いて純利益が残るわけです。

もちろん消費税分もあらかじめ除けておかなければ翌年に
納める分が足りなくなってしまいます。

そうすると手元に残る利益など微々たるものでしかありません。

消費税といえば計算方式が二通りありまして
本則課税方式という各項目ごとの計算を行なうものと
簡易課税方式というみなし課税方式を行なうものとです。

この簡易課税方式では
例えば飲食店ならば原価を○%で計算しなさいという設定
がされているのですが弁当屋さんでは特に数値をやや高めに
されています。
それだけ弁当屋さんは利益率が低い厳しい業界だと国税庁も
認めているわけです。

それを承知であえて3割の計算で考えてみましょうか。
そのほうがよりリアルに見えてくるものがあるはずです。

先ほどの
自店で作る300円弁当まではアリなんです。
季節ごとの安価な材料で揃えればなんとか日替わりで
用意できるはずです。

普通のお客様も安い材料で大量に仕入れ製造しているから
なんとか利益も出るんだろうなと考えるはずです。
定番メニューとなると少し無理が出てくるでしょうが・・。

でも300円弁当が自店製造ではない「仕入れた製品」だと
するとこれはとんでもない話になります。

3割方式で考えるとこうです。
300円の仕入れ代金は100円
そうすると
弁当を100円で納入するところは
容器代から同封する調味料や箸
材料費や調味料、製造にかかる油や光熱費、人件費
その他諸々全てを
30円でまかなっていると見なければ成り立ちません。

ありえる話ではありませんね。
少なくともマトモな材料では出来ない事は確かです。

実際にはもう少し弾力があるでしょうがいずれにしても
製造元は大変な工夫をしなければ利益の確保など望めませんね。

もう一つ
大手チェーン店グループ「○○食堂」などではコロッケ一個が
84円です。
注文すると目の前で揚げてくれるので安心なのだそうです。

これを3割方式でいくとどうでしょうか?
仕入原価が
84÷3=28
一個28円!
ではその製造原価となると
28÷3=9.33333
なんと一個を9円程度に抑えなければ利益確保はできなく
なってしまうのです。

これはもはや国内での製造は不可能な数値です。
現に
私どもは以前まで中国料理店をしていた関係からか
今でも中国から食品を輸入している会社からのDMが
届きます。

毎回見るごとに商品は充実して冊子も豪華になっていっています。
ニラ饅頭やエビシュウマイ
カニ団子やごま団子など
日本人好みの商品がずらりと掲載されています。

それを見ると
『手間隙をかけて自家製にする時代じゃない』のかと
暗い気分になります。

自分で作るより仕入れた方がずっと安いのです。

こうして中国料理店に届くDMだけですらが多彩な品揃え
なんですから
その他のジャンル
例えば油揚げだったりグラタンだったりハンバーグだったり
なんでも揃えられるはずです。

この「××食堂」の玉子焼きは大人気なのです。
目の前で焼き上げる姿に目を奪われる素人は無理も
ありませんが、
私はその原料となる「液卵」がどういう素性なのかが怖い。

昨今、景気の低迷により
消費マインドが”より安価に”と向うのは仕方が無い
とはいえ
口に入れるものにはもう少し慎重になってもらいたいものだと
願うのです。

目に見える原価
いったいこれは幾ら位で出来ているものなのだろうか

から

幾らで仕入れて、そして幾ら位で製造されているものなのだろうか
ともう一歩先まで考えてみてください
ほんの少しだけ見えてくる景色が違ってくるはずです。

そして出来れば
少しでも例え一品でも自分でお作りになる事をお奨めいたします。

私は10年以上も前からそうして
「無添加的食生活のすすめ」と称して
余計なお世話をやいています。

ちょうど季節は夏野菜がふんだんに出回る時期です。
久しぶりにおすすめの夏の浅漬けでも取り上げていきましょうか?








2012.05.11 焼きそばパン
ヤキソバ大好き人間の私は焼きそばパンも好きです。

そこで今回は美味しく作るポイントを整理してみましょう。

過去にさんざん取り上げたようにヤキソバは様々な味付け
とスタイルが可能です。

パンに挟む、ねじ込む、くるむ、巻く。
どのような形態にするのかでそれぞれに適したヤキソバを
選択するとオリジナルなものが出来そうですが、今回は
オーソドックスなソースヤキソバで行ないましょう。

太麺でも細麺でもOK
重要なのは冷めてから食べるか、熱々で食べるのか?
と言う点です。

もちろんその他にも細かい技術点はあります。

キャベツを千切りにして塩もみし、マスタードを利かせた
マヨネーズ和えにしたものを別に加えたり
芥子バターをパンに塗ったり
そういう点では一般のサンドイッチに共通するものが
あります。

でも今回はそんなことにはおかまいなしに進めます。
なぜなら美味しい焼きそばパンにはそんな細かい点を
吹き飛ばすような勢いがあるからです。

そういう点では先にあげた「冷or熱」が最大のポイントと
なります。

まずキャベツは総じて少なめが原則。

冷めた状態で食べる時には肉は入れてはいけません。
油脂も少なめがベターです。

熱々で食べる時には肉類はもちろんOK。
理由はお判りですね。
肉は冷めると口当たりが悪くなるからです。

そういう意味では「肉の有る無し」次第とも言えます。

(冷バージョン作り方)
キャベツを少量、細く、短くカットして炒め
麺を投入。
塩、コショウ、を軽く施しカレー粉を少々
お好みのソースで炒めて仕上げる。

(熱バージョン作り方)
肉を炒めて、細短キャベツを少量加える
麺を投入して塩コショウ、ソースで炒めて仕上げる。

さてここからパンにドッキングさせるわけですが。
次の重要なポイントがあります。

焼きそばパンのメインはパンだ!と考えるならば
ヤキソバは少なめで結構でしょうが
焼きそば大好きな私としては声を大にして

「それは違う!」

と言いましょう。
乱暴な言い方をすればパンは単なる包材です。
焼きそばはそれだけじゃ手で持てませんが
パンでくるんだり、挟んだだけで手で持つことが出来ます。

ですから焼きそばは

絶対多く、たっぷり

入れるべきでそれでこその
焼きそばパンと言えるのです。

ところが実際に作ってみるとお判りになりますが
この焼きそばを多く入れるという事が意外に難しいのです。

というわけでここを重点的にやりましょう。
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まず細長いパンに切り込みを入れるスタイルです。
前述したように芥子バターやコールスローなどを
噛ませるなどという小技は今回は用いません。

ひたすらたっぷり入れることのみに没頭しました。

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そうそう、こうして
ラップをあらかじめ敷いておくとすぐに強制的に
包んでしまえます。

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これは
あまりに入れすぎてパンが外れてしまいました。
でも結論的には無問題。
ラップを半分程度開けて食べるとサンドイッチ状態です。
意外に食べやすく、
たっぷりのヤキソバで美味しくなりました。

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vda 016これは
同じく入れすぎてパンが閉じれなくなったものです。
これは×××というぐらい食べにくいものです。
大失敗でした。
食べているのか、焼きそばをこぼしているのか判らない
というぐらいの悲惨さ。


ヤキソバをたっぷり乗せたら箸で押さえ込むようにして
パンを両端から持ち上げて素早くラップで包んでしまう。
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これが成功例です。

次に
調子に乗って細長いパンにポモドーロソースを塗り
ヤキソバをたっぷり乗せさらにチーズを乗せて焼いてみました。
見た目はとても美味しそうです。

これも大失敗!
先ほどのオープンサンド状態のと同じでボロボロです。
余りのことで画像はありません。

むしろ無かったことにしてしまいたいぐらいです。

やはり多めのヤキソバをただ乗せただけじゃ
非常に食べづらいと判りました。
挟む、押さえつけるという工程が必須ですね。

そこで次に
これまでの反省と良かった点を踏まえて
ホットサンドに挑戦します。

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パンの内側にポモドーロソースを薄く塗って
これでもかと冷めた肉入りヤキソバを盛り上げます。
上からもう一枚乗せて無理やり挟み込み焼きます。

これは南部鉄で出来ていて熱伝道がいいので
焦げやすいのです。
弱火でじっくり焼くと遠赤外線効果で中まで熱が入ります。

完成しました。
1/2にカットして食べます。

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肉にまで充分火が入ってとても美味しくなっています。
焼きそばパンはホットサンドが一番美味しくなりました。


日本人にはファンの多いこの焼きそばパンですが、
欧米などのパン食人種にとっては甚だしく違和感を
覚えるものなのだそうです。

日本でも炭水化物の重ね食いなどと批判するむきもあります。
でも構いません
学校給食の名残かなんだかは知りませんが
例えジャンクであろうと美味しいのですから
今後も実験は続きます。
その都度レポートいたします。
以上、焼きそばに偏ったレポートでした。

以前に包丁使いの事を書いたときに「判らないと」メールを頂きました
答えかたがた、ここで改めて書きましょう。

普通は材料をまな板の上に置き包丁をグイと押し付ける
だけで「切った」「切れた」と言います。
刃がついていれば確かに「切れる」でしょう。
ご家庭ではそれでもいいでしょうが、
プロがそんな程度じゃ困ります。

リンゴにしてもジャガイモにしてもそうやって切った断面は
でこぼこ或いはザラザラしているはずです。

包丁はスイッと動かして切るのです。
「押し切り」でも「引き切り」でもどちらでも結構です。
そうして切ると断面が滑らかになります。

当然、仕上がりの美しさや味わいも違います。


刃物といえば戦国時代の刀があります。
日本刀は長く、ゆるやかな湾曲を持つのが特徴です。

たまに、
達人が藁束をスパッと断ち切る映像がTVで流れますね
ただ見ていると叩きつけているようにしか見えませんが
あれは相当な技の持ち主なんだそうで普通人では
あんなにキレイな断面で切る事は出来ないそうです。

あれも引き切りなんです。

おおむね、刃物は動かす事で切れ味を高めます。
大根のカツラムキなども小刻みに包丁を動かして切ります。

ところが中華包丁では叩き切りをします。
分厚い包丁では骨付きの鶏などを叩き、
薄い包丁でも手首のスナップを利かせて基本は「叩き」です。
みじん切りなどは包丁を二本使ってリズミカルに
実に手早く行ないます。

これから連想するに
時代劇では青竜刀なども出てきますがどちらかと言えば
まさかりの方が中華包丁のルーツのような気がします。
日本の時代劇にはまず、まさかりは出てこないでしょう。
まさかりは焚き木を切る道具としてのみ登場します。

弁慶の七つ道具のような、時にはそれらしきモノも
見られますがそういうものを対人兵器として振り回す
というのはあまり見ません。

中華まな板もカシの木などの輪切りの切り株のような形です。

まさかりは手を休める時に切り株に刃を突き立てますが、
中華包丁でも同様にします。
丸いまな板に一杯材料が乗っている、周りもモノで一杯
そんな時にちょっと手を離す という時は
包丁をまな板にドンと手前角を突き立てるのです。

それでも、前菜などのデリケートな材料や肉の削ぎ切りなどではやはりスライドさせて切ります。


ネギひとつとっても切り方で味の違いが出てきます。
スッとスライドさせて切ったネギは瑞々しいままですが
押しつけ切りや叩き切りでは中の水分が押し出され繊維がつぶれてしまいます。

それもすぐに調理するのならまだしも冷蔵庫に仕舞い込んで
後から使用するとさらに味や風味は劣化してしまいます。
壊れた細胞は酸化しやすいからです。

よく、議論になる”水にさらすのが是か非か”と言う話は
その前に正しく切られているか否かという前提詞が必要なのですね。

私達の店では大量のネギを使うので今は機械で切ります。
機械はとても作業効率が良く手で切っていた時には二時間
かかっていたのが10分程度で終ります。

その機械が問題なのです。
刃がどう動くのか?
昔は細い刃がグルグル回る所にネギを差し込むという方式の
モノしかありませんでした。
原始的な方式です。

これで切るとまさに叩き切りです。
繊維は見事につぶれますね。

私たちが使用しているものは自転と公転をするようにして
刃が回り込みながら切ります。
そうすると人間の手で切るよりもキレイにスライス出来ます。

丸い刃というのは無限軌道を持つ超長い刃ですから、
いくらでもスライド切りが可能なのです。

「切る」という事を突き詰めて考えつくされた機械と言えますが調理師も負けてちゃダメですよ
と言われているような気がしてなりません。

断面のきれいな刻みネギと、潰れた断面のネギを同じように水にさらすと
決定的に違いが出るところはどこでしょうか?

水切れ  です。
さらしネギは水に浮かべたままで供されるものじゃありません。
水を切らなくちゃなりませんね。
断面の潰れたさらしネギはいつまでザルに上げて置いても
水気が切れないので残ってしまい
ベチョリとした食感を持っています。

食材を生かすも、美味しさを引き出すのも包丁使いひとつで変わるのです。

次の「切る」という話の続きは私の本業の「麺」に関する
ことで書きましょう。



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この二冊の本がいろんな事を教えてくれました。
ほうれん草の緑が濃いほど美味しそうに思っていたのが
実は間違いだったと知り驚いたり、湯がいた時の茹で汁が
濃い緑色をしているのはよくない野菜の証拠だと知って
愕然としました。

あまりに見慣れてしまって実は私達は野菜の事を何にも
知らなかったんだと認識を改めさせられました。

前書きから抄出し、一部要約します。
~~~~~~~
野菜が育つ時に必要な栄養素に窒素があり、
現代農業では石油エネルギーを利用して合成した窒素肥料を
使います。  この量が多いと野菜はそれだけ沢山窒素を
吸収し、結果的に葉の色が黒ずむほどに濃くなってしまうのです。
ある意味野菜のメタボだともいえます。

この硝酸態窒素を過剰に吸収させられた野菜はエグミ味や
苦味を伴い、腸の中で亜硝酸になって吸収され血液に入る
こともあります。
すると血液が酸素を運ぶ能力を損ないます。

(中略)
緑色の濃い野菜よりむしろ新緑のような緑の薄い野菜を選びましょう。
ゆでると、濃い色の方は水に色が溶け出したようになり
野菜の色は褪せるのに比べ
新緑色の野菜はゆで汁が僅かに染まる程度でしかも
茹であがった野菜は茹でる前よりもいっそうきれいな色になります。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~

本編では胡瓜の形から美味しさを見分けたり、
かぼちゃのヘタの形で甘さを見分けたりと目から脱ウロコ
間違いなしの話が盛り沢山です。
また折をみて季節の作物に応じてご紹介しましょう。

もう一冊の無農薬りんごの木村さんの本はもっと凄いです。
無農薬で作物を育てる事がこんなに困難だったなんて!と
驚愕と感動の内容です。

本からエピソードをひとつご紹介します。

完全無農薬でりんごを作り続けていた木村さん
六年目にとうとう行き詰ってしまいました。

リンゴの木は病気や虫食いで手のつけようが無くなり
収穫どころか花や葉さえつかなくなりました。
周囲の農家さんからはのけ者にされ何年も収入も無く
親戚にも罵られる有様です。
税金も払えず、家財や畑は差し押さえの対象になり二反
あった田んぼも手放さざるを得なくなりました。

出来る事はやりつくし、何をどうすればいいのか?
答えの見出せない日々が続きすぎて
しまいには気が狂いそうになります。

「まわりの人には何の恨みも無い、俺が常識外れの事をしてしまったからこうなった」
「本当に身勝手な男だった、家族にも親戚にも申し訳ない」

死んでお詫びしようとロープ一本を持ち山に入り
良さそうな木の枝を見つけてロープをかけようとしたら
勢い余って落としてしまいました。

「あぁなんてドジな男なんだ」とその木を見上げると
自分の畑のリンゴの木とはまるで違った元気な様子に
すっかり目的も忘れ見入ってしまいます。

そこで木村さんは永年探し求めていた答えを見つけるのです。

木村さんは長い間参考書や今までの経験にばかり頼り
知識で頭が一杯になっていました。
その結果木の上ばかり見ていたのです。
雑草は敵だと思っていました。

山は雑草が生え放題で地面は足が沈むほどふかふかしてる。
「やっぱり土が違うんだ。そうだこの土をつくればいい」
山の土は匂いが良く自分の畑の土は良くない
そんな匂いのする土にすればいい

山の木の周辺には命があふれ全てが循環している。
害虫が無く、バッタやアリや蝶など無数の生物それぞれが
命をつなく為に密に活動している。
そこには何一つ無意味なもの、邪魔なものなどない。
どんぐりの木だって周りの自然の中で生かされている。
と気づきました。

そして、人間も本来そうじゃないのかと感じたのです。


現在木村さんの育てる自然栽培のリンゴは実が結実する
前からすでに予約で完売だそうです。
同調する仲間も沢山増えました。
りんごだけに留まらず米や野菜まで多岐にわたり全国、
海外にまで農業技術指導に走り回っておいでです。


私は農薬や肥料が全て悪だと言うつもりは全くありません。
苦労や被害が軽減されるなら、そして増収が計れるのなら
むしろ良いことだとすら思っています。

西村先生も
「農薬や肥料を使用しても美味しい野菜はいくらでも作れます」
と書いておられます。
しかし、農薬を散布したりするたび皮膚がべろりとむける
などという話を聞くとやはり何かが間違っているのでは
ないかと疑問を持ってきました。

昔・・
私の父は戦前の農業を学んだ人でしたが
父に
どうして山の山菜を畑で育てると風味が弱くなるのか? 
と尋ねた事があります。
どうして子供の頃にそんな話題になったのか前後はすっかり
忘れてしまっているのにその部分だけははっきりと覚えています。

父は
「畑は肥料が効いているから肥えているのに比べ
山の土地は肥料気が少なくて痩せている。
山菜は痩せた土地のほうが適しているんだ
肥えた土だと美味しくは育たないんだ」
と答えてくれました。


ここ数年よくそのことを思い出していました。
山でも条件は全て異なります。
カサカサに乾いた日当たりの良い場所で繁殖するワラビ。
湿り気があり日陰になっている場所に繁殖するぜんまい。
それぞれ好適地に繁殖してはいても、やはり栄養状態の
良し悪しがあります。

牧場跡に出るワラビは長く太くて柔らかくアクは少ないので
ほんの少量のタンサンを加えるだけで仕上がります。
土には沢山の草が生えていてそれらの枯れ草が幾重にも
堆積し、フカフカです。
ノビルも沢山群生していますが普通は掘り上げる根玉が
引っ張るだけで採れるほどです。
日当りは良好で南向き斜面とまるで住宅地のCMコピーの
ような立地です。

いっぽう土手のおでこに出るワラビは短く細く、硬くて
それなのに沢山のタンサンを入れてやらなければアク抜き
できません。
土は乾いて硬く、まるで舗装路のようになっています。

牧場跡のワラビは食味も良く、粘りも強いのに比べ
土手のワラビは風味が良くありません。

山菜の栄養って何だろう?といつも不思議に思っていました。

環境や摘み荒らされていないということも重要ですが、
それ以前に土の養分も大いに関係しているのは間違いない
からです。

フキを例に挙げましょうか。
フキも里や野山の到る所で繁茂しています。
私の生家にもありました。
家の前の畑にならない所はフキ畑と化していました。
でも、それを採って食べたという記憶がありません。

母はもっぱら山でばかりフキを採ってきました。
山に住んでいながら更に山に入るというのも可笑しな記述
だとは思いますがこれは割と普通の事なんです。

街住まいの方から見れば山里も山に見えるでしょうが、
山里に住む人にすればそんな身の周りのモノよりもっと山奥
で山菜を採りたいのです。
何故か?
風味、香気がまるで違うからです。
畑栽培にすると見事に太く柔らかく育ちます。
山で採るフキは細くいかにも硬そうです。

わざわざそんな細いフキを採ってきて夜なべ仕事で
老眼鏡をかけて皮むきをするのも
その方が美味しいからなんですね。
「作りフキ」と「野フキ」と呼び名があるほどですから
誰でも知ってるはずです。



人間が肥料と思ってるモノはいわゆる栽培種の作物に対して
であって山のものには別のモノが栄養となっているだけ
なんじゃないのか?
という思いが年を経るごとに高まってきていたのです。

それが何なのかは解りません。
おそらく全ての品種に異なる栄養素が必要なんでしょう。

フキは湧き水の出る所のが一番美味しいように感じ、
食べた味わいがミネラルそのものに感じます。

人間が手を掛けない自然には私達のまだ知らない養分が沢山
あるのでしょう。
それらがお互いに補い合いながら生存しているんだと
この二冊の本から教わりました。
決して山は痩せているわけじゃなかったんですね。
むしろ人間が余計な手を入れると本当にやせる程です。

木村さんのリンゴ畑では草が伸び放題に伸びているそうです。
そのお陰で夏の暑い日ざしの中でじつに10度以上他よりも
涼しいそうです。
暑さに弱いリンゴの木が喜んでいるようだと
生活費を稼ぐ為のキャバレー呼び込みバイト時代、
ヤクザに殴られて折れた歯の無いお顔で微笑みます。

本はそれだけで色々な知識を与えてくれます。
でも、一冊だけでなく関連する本を何冊か組み合わせ
それに自分の知識をかみ合わせると更にイメージを
広げる事もできます。

まだまだ知らない野菜や山菜の話
キリがありませんが、
とりとめなくもゆるりと続けましょう。

























あっという間に二月も終りそうです。
3/1のヤキソバの料理講習会もすぐそこに迫ってきました。

今回も日本海ガスさんの展示場「プレーゴ」にて、
4タイプの異なる手法のヤキソバを作る予定にしています。

1、あんかけ
2、塩味を染み込ませる
3、最も多用される醤油味で炒める
4、粘りのあるソースをからめる

およそこの4タイプでほとんどのメニューが可能になります。
応用は無限です。

中華のあんかけスタイルはもう御馴染みでしょうから
ここでは書きませんが、
他の予定しているものをざっとご紹介しておきましょう。

アサリを予定していましたが入手出来ず、カキを用意しました。
コクがあって美味しいダシが出ますから誰にでも旨く出来ます。

ボンゴレ風

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肉と卵の炒めヤキソバ

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当日はナンプラーとキムチを合わせてアジアンスタイルにする
予定です。

ボンゴレ・ロッソ風

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これはカキが余ったのでついでに店のラーメンで出している
極太麺でソース味にしたものです。
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産地では今の時期どこでも「カキ祭り」が盛んですが、
こういう「カキやきそば」や
カキの入ったお好み焼き(カキオコと言うそうです)
などが振舞われるそうです。

今の時期しか味わえない旬の味を色々なアレンジで楽しむのも
また一興ですね。

今回は6回に分けてヤキソバのご紹介をさせて頂きました。
でも、どんなに美味しいですよと言っても、
仕込むのが面倒だなと手を出さない方も沢山おいでです。

そこで製麺所さんに
ヤキソバ専用の乾麺を作ったらどうか? と提案した事が
あります。

返事はNOでした。
出来ない  と言うのです。

不可能なのか or 作っても売れないから なのかは不明です
でもそんなつれない返事を聞くとへそ曲がりの私は俄然
ムキになります。

で作ってみました。
簡単にできます。

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しかし、なんと言っても乾麺ですからゆで時間が10分以上
かかります。
パスタを茹でるのと同じ位ですね。

美味しいものを食べたいと思うとやはりそれ相応の手間隙が
かかるようです。






2011.02.22 タルティーヌ
私は仕事上各国のご馳走や高級料理などを勉強しますが、
本当に興味を引かれるのはむしろ普段の食事、
日常のメニューです。

ですから求める専門書も高級料理ももちろん含まれますが
どちらかと言えば「イタリアの地方のおそうざい」とか
「北京のおかず」などといった物が主になります。

そんな中から今回ご紹介するのが
池田書店発行の
「タルティーヌ」という本です。
著者は 渡辺 麻紀 さん。
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この方はほかにも
「キッシュ」「テリーヌ」「ケーク・サレ」などの本を
多数、上梓されてます。

タルティーヌ
聞きなれない単語ですね。
パリの地元住民で賑わうカフェでムッシュが注文しているのを聞いて
とても期待してしまったそうです。

しかし、その素敵な単語とは裏腹に出てきた物と言えば
ザク切りしたバゲットにジャムを塗ったものがカフェ・オレの上に
乗っているだけ。

カフェ・オレに浸して食べるその姿を見て
「え?」と思ったそうです。
そこから探求が始まり、氏のオリジナル考案メニューが満載された一冊となっております。
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そこで自分もマネをしてやってみました。
ミルクは苦手なのでカフェ・オレというわけにはいきません。

ブラックコーヒーに乗せてもあまりお洒落にはなりませんね。
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ちょっと工夫もしてみましょう。
残念でした。
今回はパンが硬めで食べづらかったですね。
またのトライと致しましょう。

こうして著者の期待を裏切りつつ虜にしてしまったものが、
パリの普通の朝食メニューなんだそうです。
オトナから子供まで普通に食べるというのです。

パリといえば三ツ星レストランとすぐに思いつきますよね。
でも、当たり前ですがいつも毎日三食、豪華なフルコースばかり
食べているわけではありません。

むしろ観光客のいない普通のレストランなどで地元の人たちが
食べているメニューが日常的なものだったりするのは私達の食卓を考えても納得できるのではないでしょうか?

ここ富山県でも朝から晩まで「鱒寿司」やブリの刺身ばかり食べているわけじゃないのと同様。

大阪人だって毎食お好み焼きばかりは食べない”はず”です。

パリの朝食メニューはなにもこればかりじゃないとは思いますが、
案外簡単な食事なんだな  と意外に思いました。

こういう視点から眺めてみるとそれぞれのお国事情といったものが
垣間見えることがあります。

「階級社会のヨーロッパ」というキーワードのメガネを通して改めて
高級料理の本を見返します。

パリの高級レストランといえど豪華なコース料理を楽しんでいるのは
上流階級の人達だけなんではないだろうか?などと、ほの見えてくるのです。

そういう時にいつも思い出すのが船員時代にイランで見た光景です。
まだその頃は王政が敷かれていました。
確か、パーレビ国王だったはずです。

大型タンカーは沖合いに止めてそこで原油を積み込みます。
カーグアイランドというところでした。
そこから上陸するにはゲートを通らなければ行けません。
そのゲートの守衛がちょうど昼ごはんを摂っていました。

普通の船員は一刻も早く上陸したいからそんな光景に目もくれず
通り過ぎますが、私は根っからの食いしん坊なんです。
「ん?何を食べてるのかな?」と見ました。

中東独特の「ホブス」というパンとタマネギです。
ナンを乾燥させたような見た目はカサカサしたようなパン
小さな紫のタマネギをカットしたもの
                  だけなんです。

それを実に旨そうに食べているのです。
興味がわきました。
「それは旨いタマネギなのかい?」と指差して尋ねます。
当然日本語で  です。

食事とか料理に関することではあまり言葉は関係ないものです。
「それが欲しい」「美味しい」「塩っぱい」なんて万国共通の
身振りで通じます。

「食べてみろ」といかにも気の良さそうな笑顔で勧めてくれました。
「ショコラン」
とこれしか知らない礼の言葉を言ってつまんで見ました。

「辛い!」
普通の生タマネギではないですか!
それを小さくカットしたものを嬉々として食べていたんです!
そんな様子を向こうは笑って眺めているだけです。

イラン王朝の頃です。
ホメイニ師がまだ革命を起す前の話です。
王族は贅沢三昧をし、それこそ毎食フルコースどころではないような
アラビアンナイトに出てくるような暮らしをしていながら
外貨獲得の唯一の設備で働く人間はこんな食事をしていたのです。

なんて貧しい食事だと決め付ける気はさらさらありません。
その国なりの食習慣がありますから
パン一枚だってオカユだってそれで満足できるのなら
不満は起こらないでしょう。

でも最近起こっている中東の政治不安などを見ると
庶民はそれすらままならなくなって来たのではないだろうか?
と思えるのです。

キリストはパンのみにあらず  と言いました
しかし、日々の糧が無ければ生きていけないのも現実です。
そんな日々の暮らし、日常の食事から見えてくるものをも
見逃したくないものです。

ひるがえってわが身を見るといくらねじれ国会でドタバタしてるとはいえまだまだ日本は平和です。

水も食料もまだ十分にあります。
食料自給率なんていったいどういう方法で量られているのかは
知りませんが米と魚に至っては100%のはずです。
日本に生まれて本当に良かったと感謝する日々です。







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イカの黒作りを作りました。
今では一年に一度くらいしかやらなくなりましたが
のん兵衛ですから作るときは必死で仕込みます。

黒いイカの塩辛というのはラーメンの富山ブラックにも
通じるところが?あるのでしょうか?

とはいえ、黒作りを自作すると黒くなりません。
肝の量が多いからか、
それともスミの色の都合なのかは判りませんが
でも、味はどこにも負けないものに仕上がります。
隠し味満載の味自慢です。

さて、近々これのチャーハンを作りますが
せっかくですからヤキソバにも応用してみましょう。

サラダを用意します。
次にヤナギバチメに塩コショウ。
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愛嬌があってもどちらかと言えばブチャイク系のメバル族にあって
ヤナギバチメは出色の器量良しですから
品良く仕上げないと失礼にあたりますね。

マスタードソースで合えましょう。
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ヤキソバには下仁田ネギを薬味であしらい低温でゆっくりと
焼き目を入れます。
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軽く塩コショウをして黒作りを入れ
炒めたら多目の酒を加えて完成。
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二種類のソースで遊ぶ黒作りのヤキソバです。

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手前には柚子のドレッシングと唐辛子を散らします。
柚子皮と柚子果汁の風味を合わせつついただきます。

こんなのをもし、
フォークだけを添えてだされたらつい億劫になりますが
お箸だとサラダも
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麺だけでも
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から揚げだけでも
お好み次第です。
お箸の国の住人だから  というCMがありましたね。
一緒に混ぜて食べるのも自在です。
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こうして熱いものと生野菜と合体させるとやわやわと熱が伝わり
ゆっくりとしんなりしていきます。
生のぱりっとした食感もくにゃりとなるのもどちらも美味しい味わい。

声を大にして言いたいのが
ご飯にも合うという点です。


ちなみに、今回はヤキソバに味を染み込ませるという調理ではありません。
ソースやケチャップのような味をからませる というタイプです。
混ぜる系といってもいいでしょう。

次回はオーソドックスなタイプで
アジアンスタイルとまいりましょう。
ヤキソバはどんな形にでもできます。
無限な応用を楽しめる”素材”として捉えてみてください。






冬の富山湾は魚も脂が乗って美味しくなりますが、
海藻やナマコまで美味しくなっています。

地元で獲れたナマコには内臓が入ったまま流通していますから
コノワタが作れます。
あとはコノコだかクチコだか良く分からないものも一緒に出てきますが
構いません全部まとめて塩辛にしてしまいます。

そうするとよく解りませんが普通のコノワタより美味しいものになるようです。
多分に気のせいだとは思いますが・・。
なに、酒飲みの独り言と読み飛ばしてやってください。

コノワタが一番の目的ですが、胴体も片付けなきゃいけません。
酢の物も結構ですが大量にあると箸が止まってしまいます。

そこで炒めて見ました。

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ナマコはイカやタコとは根本的に肉の構造が違うので
下ごしらえをしっかりとやらなければいけません。
でもその一手間をかけるとふうわりとした柔らかい口当たりに変身してくれます。

次はこちらです。
ナマコのフェットチーネとホラを吹きたいところですが
表題でバレバレですね。

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ヤキソバです。
通常のお店で使う極太麺で仕込みました。
太いので蒸しは軽くすませています。

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ブリッとした歯応えの麺と、

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フワリとしたナマコの食感が楽しいヤキソバです。

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生麺からヤキソバ麺に仕込む時間は
「蒸し」で10分とすると
「茹で」で1分その他もろもろで30分もあれば誰でも
簡単に終えられます。

それを一人前、一回分だけの時間とするなら随分効率の悪い
手間の掛かる仕事だ  となりますが、
10玉分を一度に出来るとなると話は別ですよね。

後の一週間はいつでもすぐに出来る麺が
冷蔵庫の中でスタンバイしている。
なんて考えただけで楽しくなりませんか?
お台所の理想的な仕込みとも言えますよね。

ヒマな時に仕込む→忙しい時にパパッと作れる
と言うわけです。

今回は今が旬のヤリイカと「ながらも」を使ってヤキソバにしてみましょう。
所要時間は5分です。

フライパンに油を薄く引いて火力を弱火にします。
前回仕込んだヤキソバを乗せます。
ゆっくりと焼き、焦げ目をつけることと
麺についてる余分な油を落とすためです。
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その間に材料をカットしましょう。
使うのはイカゲソです。
一本づつに切り分け、「ながらも」をザク切りにします。
ネギとしょうが、ニンニクをカットして薬味にします。
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合間合間にフライパンをグルグルと回してやります。

フライパンの麺をそのままひっくり返します。
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こんがりとした焼き目がついたら今度はそのまま裏面を焼きましょう。
よく勘違いをする人がいますが、
油は材料に染み込ませる為に使うのではありません。
油っぽい料理なんて誰も嬉しくないでしょう?

油は焦げ付かせない為に使いつつ、余分な油を落とす。
これが賢い使い方です。

ここでも合間をみてフライパンをグルグルと回して麺が焦げ付かないようにしてやります。

裏面を焼いている間に新聞紙とペーパータオルを用意します。
ザルとボウルでも結構です。
そこにヤキソバを移します。

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さらに油を落とすのです。
ここで油が沢山出てくるようならそれは使いすぎです。
次回はもう少し控えてもOKでしょう。

空になったフライパンに薬味をいれ、香りを出し具を加えます。
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水を加えます。
塩、コショウを入れて炒めます。
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先ほどの麺を入れて混ぜつつ、炒めます。
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ただ上から塩コショウを振るだけでも良さそうですが、
実は全然違うのです。

水分に味を馴染ませて、熱を加えながら(圧をかけ)染み込ませるということなのです。
そうすることで麺の中まで味が浸透するのです。
パスタにも通じるコツです。

日本的な発想がただ塩を振るだけという考えになりがちだから
「パスタ用のふりかけ」なるものが売れたりしています。
全く、ずれているというのがお解かりいただけるでしょうか。

こうして麺の中まで美味しさが浸透するころには麺の硬さも程好くなってきています。

ここまでで5分程度。
完成です。

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ヤキソバがパスタより優れている点をふたつ挙げましょう。

1、焼き目がついている分だけ香ばしい

2、ラーメンと同じように硬めでも柔らかめでも自在に対応が出来る

と言う点です。
個人的にはまだまだ挙げられます。
箸で豪快に食べることが出来る  とか
お店で食べるパスタと違って音を立ててもOKなどです。

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柔らかいソースヤキソバしか知らない麺好きに
このヤキソバを食べさせると皆その初感触に驚きます。

ヤキソバ 
どうか見直してやってください。
作り置きさえすればこんなに美味しくてこんなに簡単にできます。





本当のヤキソバと言いましても実は数種類の作り方があります。
大きく二つに分けて、生麺を蒸すタイプと蒸さないタイプです。
どちらが良いとは言えません。
上から具をかける場合と混ぜ込む場合、
また、粘りのあるソースか、アサリのようなさらりとしたのを滲み込ませるか
などで話は全て異なるからです。

また、日にちを持たせるのならば蒸した方が適していますし、
醤油味などで含ませてすぐに食べるのなら蒸さない方が適しているという人もいます。

ここで人それぞれのお好みなどといい加減な逃げ口上はやめ
ひとつの基準を設けましょう。
1、スーパーの蒸し麺よりも確実に美味しい事
2、メニューの多彩
3、パスタに匹敵する美味レベルである事

これらをクリアする事を目標にしましょう。

ヤキソバを追求すると見えてくるものがあります。
それは麺の全てに共通するコツと新たなメニュー作りのヒントです。
「ヤキソバとちゃんぽんが同じ原理で成り立っている」って信じられます?

年も明けたことです。
慌てずにゆっくりと進めましょう。
3月に予定している「みどり共同購入会」さんの料理講習会まで時間をかける予定です。

麺を茹でるということはアルファ化させることです。
たっぷりの水で茹でるのは誰でも知っていますね。
では生麺を蒸すとどうなるでしょうか。
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成分が反応して黄色から茶色へと変色し、
充分な水分が得られない為に表面が硬くなります。

この時の匂いが最も「麦粉臭い」状態です。
茹でるという事から比べれば最も不適な状態(対極の位置)とも言えます。
だから正しく茹でなければ麦粉臭くなるんだ  とも言えます。

これをさらに茹でます。
パスタでいうところのアルデンテつまり完全に
水分の飽和しきっていないところで湯から上げます。
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麺がひとかたまりになりますから優しくほぐします。

このままでは余熱で火が通り過ぎるので流水で洗います。
止める  と言うわけですね。
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洗って絞め、ヌメリを取り、茹で上がりを止めます。
これをザルに移して簡単に水気を切り、
麺がくっつかないようにサラダオイルを少量まぶしておきます。
これだけです。
(ここで完全に水切りしてはいけません)
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冷蔵庫で一週間は持ちます。
作り置きの可能な麺です。
こんな便利な麺って案外無いでしょう?
しかも、元の量に比べると増量しているのがお解かりでしょうか?

ちょっと手間をかけるだけで美味しくて、安くボリュームたっぷりな
どこにも無い物が出来る。
これが私のオススメするメニューです。

いいと思いませんか?原価で手に入る美味です。

この状態をスーパーで売っている「ヤキソバ麺」と比べれば子供でも
まるで別物だと判ります。
食べてみればもっと解ります。
この蒸したヤキソバは本編として次の機会に書きましょう。


今回は先ほど書いた、蒸さないヤキソバとチャンポンの作り方を並べて書きます。
違いをいくつ見つけられますか?

tkw 011具はどちらも同じにします。
ネギしょうがの薬味
肉、イカ
キャベツ、タマネギ、青菜、シイタケ
麺、スープ、(カツオ節)

〔ヤキソバ〕 酒、醤油、コショウ、ごま油。

〔チャンポン〕塩、コショウ、ごま油。

【ヤキソバ】
具材を用意します。
(今回はイカがありませんでしたが違いは出ません。)
tkx 002 tkx 003 tkx 004

フライパンに油を引き、薬味を炒め香りを出す。
肉を炒め、その他の具を加えて炒める。
スープを80cc程度入れて酒、醤油、コショウで調味。
ここまではずっと強火で炒めます。

tkx 005その間に別鍋に湯を沸かしておき、
生麺を2/3程度の時間茹でます。
ラーメンの茹で加減が10とすると6~7といったところです。

それをざっと湯きりして具材を炒めた中に投入します。
混ぜ合わせつつ、さらに炒めます。
tkx 006 tkx 007 tkx 008

パスタではこの工程がとても重要です。
ここで油と水分を乳化させるからです。

ヤキソバは中華鍋でしかも菜箸で行なうととても簡単に
乳化と味の浸透が行なえます。


水分が少なくなったら茹で湯またはスープを足し、味を調節します。
味が決まり、麺の硬さが程好くなったら仕上げのごま油を少々加えて
ひと混ぜしたら完成です。
tkx 013


【チャンポン】
具材を用意します。
tkw 012 tkw 013

フライパンに油を引き、薬味を炒め香りを出す。
肉を炒め、その他の具を加えて炒める。
スープを400cc程度入れて酒、塩、コショウで調味。
tkw 014

その間に別鍋に湯を沸かしておき、
生麺を1/2程度の時間茹でます。
ラーメンの茹で加減が10とすると5くらいといったところです。
tkx 005

それをざっと湯きりして具材を炒めた中に投入します。
麺が入ることで味が薄まりますので、味を調節します。
tkw 016 tkw 017

味が決まり、麺の硬さが程好くなったら仕上げのごま油を少々加えて
ひと混ぜしたら完成です。
ここで味を濃くしたいならカツオ節を少々足します。
tkw 020


これもパスタになぞらえるならスープパスタと同様の工程です。


いかがでしょう?
ヤキソバとチャンポン。
並べて書くとほとんど同じなのにお気づきでしょうか。
同じなんです。
(パスタもほぼ同じです)

こういう醤油味で炒めつつ、味を染み込ませるタイプのヤキソバは
上海ヤキソバと呼ばれ中国料理店の定番となっています。
もちろん蒸したヤキソバでも作られます。
実はこのタイプが応用と言う意味では最も幅広く活用の出来るヤキソバなのです。
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このように焦げ目はつきませんが麺自体のコシとピュアな歯応えを素直に感じ取れます。

マスターして大いに利用していただきたいコツに満ちています。
焼きラーメンとか焼きちゃんぽんなどといった暗示すら見えます。

追々ご紹介しますが、
今回はここで取り上げたチャンポンについてもう少しだけ追記する事にします。

チャンポンと混同されやすいメニューにタンメンというのがあります。
肉野菜の具のスープの掛かった塩味のラーメンですね。
(湯麺と書くとスープそば全体を表わしますから若干意味違いになります)

これは麺だけを茹でて丼に移し、上から具入りスープを掛けたものです。
見た目は同じように見えますから
お店でもチャンポンと称してタンメンを出す所が多いようです。
なぜなら、チャンポンの方が一般に価格設定が高くできるからです。

もう一つの理由が
一度に複数の注文をこなせるから  という事もあります。
タンメンなら一度に8個だって簡単にこなせますが
チャンポンは具とスープと麺が絡み合った中から一人前づつお玉で取り分けるのが手間だからです。
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手間がかかる=時間がかかる=のびやすい 
となります。

これを嫌った店主が伸びにくい麺を探してついに
スパゲティでチャンポンを作っていたお店に行った事があります。

美味しくありませんでした。

何故か?
それは
タンメンとチャンポンの美味しさのポイントに留意すると見えます。

タンメンはお湯で茹でたサラリとした口当たり、塩味のすっきりとした味わい

チャンポンは具の旨味がしみ出たスープを麺が吸い込んで
いわゆる「美味しい茹で伸び」をしたような適度な硬さの麺。
(とはいえもちろん伸びているのではありませんよ)
そして最も異なる点が次の
スープに小麦粉が溶け出しているかすかにトロミのある状態。

ここにあります。
このチャンポンのルーツになっているのが
中国料理の麺料理「煮込みラーメン」です。
ポピュラーなのが「鶏煮込みラーメン」(ラン・チー・ウイメン)

美味しさの秘密はやはり溶け出した小麦粉の旨味です。
ですから1/2くらいに茹で上げた麺を具入りスープに入れて煮込むまでは
チャンポンと同じですがここからクタクタになるまで
煮込みに煮込みます。

麺は箸で簡単に千切れるくらいに柔らかくなりますが、
スープには小麦粉が見事に溶け出して、
とろりと極上のオカユのような深い味わいとなります。

通な人は宴会の〆にこれをご注文される事も多いメニューでした。

煮込みラーメンもチャンポンも麺の小麦粉つまり麺の表面が溶け出したものが旨いという事をお解かりいただけましたでしょうか。
それのあるのが煮込み系
無いのがタンメンというわけです。
うどんでも甲府のほうとうなどがこれに相当します。
美味しいものを突き詰めると似通って来るようですね。

そうなると麺の生地、つまり麺体が重要になってきます。
タンメンなら硬めに茹で上げれば、ある意味粗悪な小麦粉でも分かりませんが
チャンポン、煮込みラーメンでは粗悪な小麦粉では美味しくなりません。
つまり、ここでも美味を求めるなら
まず、最初に小麦粉を選ぶという原点に立ち返らねばいけないのです。

やたらかん水臭い麺でやるとどうなるか
ちょっと考えただけで誰でも判るはずです。

先ほどのスパゲティを使用したチャンポンが何故美味しくなかったかというと
スープに小麦粉が溶け出さなかったという所が原因だったのです。
茹で時間や麺の選択が難しいという訳ですね。

でもヤキソバなら難しくありません。
簡単に美味しく作れます。
先ほどの茹でただけの麺でヤキソバを作った後の鍋をアップでご覧ください。
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小麦粉のトロミが鍋肌に残っているのがお解かりでしょうか?
実はここからもこういうタイプのヤキソバとチャンポンなどの煮込み系が
同じ理屈で調理されているのが分かります。


次回はもう一度蒸したヤキソバから始めましょう。
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本編です。
また違う地平が広がります。
そしてそれはさらに限りない応用を呼びます。

P.S.
みどり共同購入会さん主催の料理講習会の日程が決まりました。
3/1(火)です。
ご希望の方はどうぞお申し込みください。











2010.12.14 あるべき姿
さて、話をつなぐために切り口を変えてみましょう。
料理人のことを古くから包丁人とも呼びます。
これは何故でしょうか?

料理には「切る」だけでなく「煮る、炊く」「焼く」「揚げる」
などといった様々な仕事があるにも関わらず、です。

私なりの解釈を言うとこうです。
「包丁で切る」  
というのは取り返しのつかない事
やり直しの不可能な事だからです。

未熟な人の前にリンゴやスイカを置くとためらい無くふたつに切ります。
それから幾つにするんだったかを思い出して「う」と考え込みます。
経験者は幾つに切り分けるかを思案してから包丁を入れるのです。
切ってしまったものはくっつけられません。

そうして思案してからスパッと切る  ということを日々繰り返していると
仕事が人間性の形成に影響するのでしょう。
よどみの無い、妥協を許さない いわゆる職人に出来上がっていくわけです。
だから象徴として「包丁」という刃物を挙げている訳です。

これはなにも料理人だけでなく大工さんや塗装工さん、など
職人がすべて同じなんですが「刃物の切れ味」という点でひときわ目立つのでしょう。

ラーメンの話に戻ります。

タイマーで茹でると麦粉臭くなる事が起こりやすいと書きました。
ところが昨今タイマーで茹でなければ勘や手の感触では茹で上げられない
という職人(?)が急増しているのです。

話は「ラーメン嫌い&麺嫌い」からは外れていきます。
もう少し根元に向かってみましょう。

日本人の料理のルーツは和食です。
包丁さばきと聞いて真っ先にお刺身が浮かびますね。
このお刺身を切る時。(引くと言います)

魚のカタチはサク一本だけでも細い部分や広い所、
薄いところや肉厚の所と違っています。
これをそのまま切ると大きさが違いすぎるので
包丁の角度を変えながら切ります。

幅が狭い部分では大きく刃先を左に向け、
幅が広い部分では真っ直ぐに、
高さが低い部分では刃を寝かせ、
高さがある部分では垂直に立てます。

これを常に組み合わせて一手先を読みながらお刺身を切るのです。
熟練の仕事は見るだけで美しいものです。
そこでは「美味しい」は職人の「手」から生み出されているのです。

包丁さばきは魚だけじゃありません。
肉屋さんでも同じです。
一本のロース肉にも幅や太さにムラがありますから職人はそれを計算しつつなるべく同じような面積を切り出します。

ところがアメリカ人は大胆です。
一定の太さのカッターを作りました。
ここに通すと委細構わずぐるりを切り下ろして煙突のような
同じ太さのロース肉が瞬時に出来上がるのです。
こうすると後は厚ささえ決めれば誰が切っても同じ重量のものが簡単にできるのです。
食の工業化です。

日本人もそんなアメリカ人が行き着いたファストフードばかり食べて
頭がアメリカナイズされて来たんでしょうか?
ズブの素人が来たその日からでも出来るようなシステムを備えた
飲食店が増えています。
タイマー茹でをするラーメン店もそのひとつの流行です。

タイマーを使って麺茹でをする店は必ずといっていいほど製麺所さんと
モメます。

麺は生き物ですから極端な話、朝昼晩と茹で上がり時間が刻々と変化します。
どんなに気をつけて保管していてもです。
それを茹でる人が見ながら茹で上げるから食べる人は同じように感じているだけです。

それをタイマーで常に一定時間で茹でるとどうなるでしょうか。
「ウチはいつも同じ時間で茹で上げるのに硬かったり柔らかかったりする」
「これは作り方が悪いからだ」
となるのです。

いったい「美味しい」を生み出すのはどの「手」なのでしょうか?
製麺所さんに丸投げでいいのでしょうか?

製麺所さんは頭を抱えます。
そしてどうすると思いますか?
二分なり三分なりその時間内では絶対茹で伸びない麺を納めるようになるのです。

これは「茹で足りない麺を出す」  と言う事なのがお解かりでしょうか?
そうです。
これもまた麦粉臭いという話になるのです。

うどんではそこの点を工夫した麺があります。
片栗粉を混入した麺です。
早くあがり、麦粉臭さを感じさせない。
なおかつ、硬い分「コシ」があるように錯覚させる。
便利な麺です。

北海道あたりの大手製麺所さんなどでは中華面でもそういった商品を発売しています。
利点は同上です。
おまけにぴたりと茹で上がり時間も同じでほとんど狂いません。

うどんは主に冷凍うどんがその手法を取っています。

でもここで思い出して欲しいのが
「麺とは小麦粉を水で練ったもの」という大前提です。

そんな便利な魔法のような無理願望を叶えたものには必ず
落とし穴があるのです。
飽きるのですね。

手打ちうどんは飽きませんが冷凍うどんは飽きが来ます。
「麺じゃないから」と言えば言い過ぎでしょうが、
そんな例はゴマンとあります。

アミノ酸混入で増量させた日本酒が絶滅に近くなり、
同じく漬物が売れなくなり、カマボコが売れない。
そんな例を挙げたらキリがありません。
味噌、醤油、油、・・・・・・

昔から味を大切にしてきた先人達の苦労を笑い飛ばすように
安易な手抜きにまい進して金儲けを優先させると
必ず天罰がくだります。
顧客が離れるだけでなく、ひとつの産業が霧散してしまうかも知れないのです。

日本はもの作りが生命線だとよく言われますが
それは何も町工場や大企業などの工業の世界ばかりじゃありません。

街角の小さな食堂、蕎麦屋、うどん屋などの食べ物屋だって皆
創意工夫して生き延びてきたのです。

それが崩れ始めたきっかけが化学調味料だったのではないでしょうか。
『これさえ使えば』  と皆が使い始めたとたん各自の創意工夫や
大切な口伝を忘れたのではないか  と思います。

実際に聞いたひどい話では
「自分で野菜炒めを作ると美味しくならないがcook doの合わせ調味料で作る野菜炒めは美味しいから良く出る」

これはある飲食店の店主の言です。
本当の話です。

業務用品に頼る大型施設が衰退したり、包丁の無い巨大チェーン店がつぶれるのも当たり前。
簡単に飽きられるものに手を出すのが間違いです。
「モノ作り」「モノ作り」と人頼みのように連呼する暇があったら
自分達の現場を見直すべきです。

まやかしのような世相でいい訳がありません。

漁業、農業、建設、あらゆる現場仕事を低く見て従事したがらない
そんな今の世相にもつながるものがあります。
もし、誰も顧みなくなり技を受け継がなくなって
今、従事している世代がいなくなってしまったら

後は誰がそれを担うのでしょうか?
金で買う?
いつまでそんなことが出来るのでしょうか?

あらゆる現場で知恵を出し合い、技を磨き、伝え残す。
全ては成長と生き残るために。
そんな大切な現場の精神を忘れてはならないと思うのです。

先の話ではアメリカの大雑把な食の工業化の例を挙げました。
でも、それは南米移民などの程度の悪い従事者にでもできるようにと
仕方なく行われたものでした。

私達日本人が率先して真似るような姿勢ではありません。
正しいあるべき姿をそれぞれの仕事で問い直してみるべきではないでしょうか?
本質を見誤ると命取りになります。

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2010.11.23 朝 蕎麦
毎日早朝から起きて製麺をすると、一段落した頃には小腹が空きます。
朝食にはまだ早い時間です。

そんな時に役立つのが乾蕎麦です。
乾麺があればすぐに作れます。

因みに蕎麦の袋に参考として表示してある時間はあくまでもザル用です。
4分と書いてあれば温かい蕎麦なら大体その半分の時間2分間で茹で上がります。

うどんでも中華麺でもパスタでも蕎麦でも共通ですが、
冷たくして食べる麺というのは冷水で洗うと締まるのでほぼ倍の時間を要するからです。

例題です、
そうめんがここにあります。
ほぼ一分で茹で上がる細さです。
さて、これを温かいダシでにゅうめんにするとしたらどのくらいの茹で時間を要するでしょうか?

答え、
ダシが沸いてから投入すればほぼ30秒で食べ頃になります。

こんな具合です。
日本人の知恵はかくも素晴らしいのです。
実際ににゅうめんを作ろうとするととても忙しい位なんです。

にゅうめんは忙しい分だけ段取り良く作業しなければ間に合いません。


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ところが蕎麦は程よい時間がかかるので寝ぼけ頭でも失敗はありません。
でもあらかじめダシだけは取っておきます。
毎回取るのはさすがに面倒なのでまとめて作り置きしてペットボトルで保存しておくのです。
これは便利です。
いつでも、すぐに麺が食べれます。

カエシと合わせて関東風にするのもよし、
薄色にするもよしと自在にできます。

ついでですからそのレシピも表示しておきましょう。
ダシ(ニボシ、かつお、その他なんでもOK)
400cc               
塩  小さじ一杯
醤油 大さじ一杯
みりん大さじ一杯

たったこれだけです。
カエシがあればザル蕎麦も簡単に作れます。
こちらの比率は各家庭のカエシの塩濃度が異なるので
実際に合わせて量るしかありませんが・・・。

この味付けダシが沸く頃に蕎麦が茹で上がります。

普通、お店ではこの段階でいったん湯から上げて水洗いします。
それから再び湯に戻して適度な硬さにしてから器に盛るのです。
これを「湯だめ」と言います。
表面のヌメリや麦粉臭さを取り、歯応えを演出するのに有効です。

これとは違う「釜あげ」というのはただ茹で湯から引き上げただけのものです。
なにも大量に作るわけでもないのでしたらこれで充分です。

ザルに取って温めた丼に移します。
そして上から熱々のダシを注ぎ薬味にネギでもぱらりと乗せれば
ちゃんとした「かけそば」の出来上がりとなります。

皆さんは「かけそば」お好きですか?
ちゃんとしたかけそばを召し上がっておいででしょうか?

掛けそば というと立ち食い蕎麦を連想します。
30年ほど昔、大豪雪の年にバス通勤が不可能になり、電車を利用しました。
大雪なので早朝からご近所総出で除雪をして、そのまま電車に飛び乗り
富山駅まで立ちっ放しの通勤です。

駅について真っ先に立ち食いに入り、「おにぎりと天蕎麦」を頼み
ちょっとだけ悩んで「割り込みにして」と追加注文を入れるのです。
オバサンは蕎麦、汁、天ぷら、割り卵とこなして 
仕上げてくれます。
すきっ腹にしみこむように入りました。
冬には何より温かいツユがご馳走でした。

でも、
これを正しい掛けそばだなどと思っている方はまさかいらっしゃらないでしょう。
正しい天ぷら蕎麦は挙げたてのカリッとしたものが乗らなくてはいけないように
(油の味が違います)
天ぷら蕎麦と呼ぶのも憚られます。

これを月見蕎麦と呼ぶのもどうでしょうか。
この生卵を割り込んで入れるのはあくまでも
立ち食いの流儀の「割り込み」であって「月見」とは違うような気がします。

ダシを作り置きの湯せんにかけておくと便利ですが
味が煮詰まって濃くなります。
そこで程好い、やや低温で保存してあるのが普通です。
湯だめで熱くした蕎麦にかけるから熱く感じるだけで実際にはそれほど熱くないツユというのが実際ほとんどの掛け蕎麦なのではないでしょうか?

朝、湯だめにしないで釜揚げで丼に移し、そこに沸騰したツユを
かけて食べると唸りたくなるほどの掛け蕎麦の新しい味わいが広がります。

この日は月見にしました。
蕎麦を丼に移したら少しだけくぼみを作り卵を入れて、熱々のツユを卵にゆっくりかけていきます。
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白身が固まり「月に群雲」状態になります。
私の中ではこれが正しい月見蕎麦です。
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中の黄身はだらりと冷たいのが流れ出るのではなく、
半熟の目玉焼きのような、温まったトロリとした感じになっています。
この状態なら蕎麦好きの嫌う「生臭み」は出ません。
確かにツユの味は卵の分だけ変わりますがイヤミのない
コクのある味わいとなってくれるのです。
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ここで卵の栄養についての丸元淑生先生の説をご紹介しましょう。
先生は卵料理はポーチドエッグが最善の卵料理と断じておいでです。
Wiki
>卵に含まれているビタミンの破壊を最小限にする為には加熱を最小限にしなくてはならない。
一方、卵白にはアビジンという、ビオチンの吸収を阻害させる物質が含まれている。
アビジンだけを壊して他の栄養素を守ることができれば理想的で、かつ80℃程でアビジンは破壊され、同時に卵白は固まるという性質がある。
つまり白身の温度は80℃程度、卵黄の温度は固まる寸前の60℃程度、という状態を作り出せればよい訳になる。
それを簡単に、かつ完璧に成し遂げるには、ポーチドエッグがベストという。
そうして作られたポーチドエッグは、栄養素がそのまま保たれている為、余分な調味料を必要とせず、スクランブルエッグのようにせっせと塩を振る必要はないとも論じている
(引用ここまで)

いかがでしょう
月見を正しく作れば最善の卵料理となることにお気づきでしょうか?
理論的、味覚的にも正しい月見とはポーチドエッグ状のものと
私は声を大にして言いたいのです。


また、この日は風邪気味でしたのでネギの掛け蕎麦にしました。
刻んだネギをたっぷり乗せて熱々のツユを回しかけます。
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ネギの話を少しだけしましょう。
ネギの嫌いな方はその理由として
辛味、苦味、匂いなどを挙げられます。
そのほとんどは硫化アリルが原因ですがニンニクのときもご説明したとおり
正しく熱を通せば害にはならない物なのです。

ですから嫌いになった原因には不出来なものを食べさせられて
そうなったというケースが非常に多いのです。
またこの物質は風邪などを予防したり精神安定などの効能があるのですが、
たまに、切るとやたら目に染みるというネギがあります。

ほとんどの人は 「そりゃ包丁が切れないから」 と言います

そんなネギの葉をよく見ていただきたいのです。
淡い緑色ならば包丁のせいでしょう。
しかし、濃い緑ならば窒素過剰の疑いがあります。
窒素過剰のネギはやたら目にきます。
つまり多肥による障害です。
参考無農薬野菜


そんなネギはそのまま食べるより、水にさらした方が安全です。

いかがでしょうか、
ネギひとつとってもいかに正しい掛け蕎麦というものが理にかなっているか
お解かりいただけたでしょうか?

目にしみないネギならば沸騰したダシをたっぷりかけてやれば
どんなに沢山入れてても苦くも、辛くもなくておまけに体に良いことばかりなのです。

それを目に来るネギですら水にもさらさず、おまけにぬるい湯せんのままのツユを
かけてネギ辛さやネギ苦さ満載の蕎麦を食わされては子供は皆ネギ嫌いの蕎麦嫌いになってしまいます。

簡単に作れて美味しくしかも体に良い
これは家庭料理の基本です。
お店で食べるものと思われがちなものでも
ちょっとした工夫で意外と簡単にできてしまうものって案外あるものなんです。

この日は直売所で買ってきた原木栽培の大きなシイタケとネギを刻んで
ツユに入れて沸かし、シイタケ蕎麦にしました。
スーパーのシイタケにはないキノコの風味がきいた美味しい蕎麦になりました。
こんなのは家庭でしか食べれない味です。
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おすすめします。
正しいウチ掛け蕎麦。
私は朝に一人でこれを楽しみます。
都合5分で完成します。

tk 027もうひとつナイショをお教えしましょう。
こちらです。
山から移植したミツバです。
蕎麦と正月のお雑煮専用に栽培しています。
とても丈夫なのでほったらかしにしていても増えます。

庭の隅やベランダででも栽培可能です。
栽培種と違う野趣あふれる香気が蕎麦にぴったりです。
何年経っても野生の香りがそのまま保たれるのが不思議なくらいですが
重宝しています。
蕎麦好きなら絶対コレです。
理由はもちろんお解かりのはずです。

日中には種蕎麦、
夜には鍋をつついたあとはそのダシに冷たい蕎麦をくぐらせて食べるのも
旨いものです。
でも朝の簡単な掛け蕎麦にもなかなか素晴らしい味わいと
楽しみ方があります。

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こちらは焼いた油揚げを乗せた上から熱々の
ダシを注いだ焼き稲荷蕎麦。

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こちらはネギと茗荷を乗せただけのシンプルな
茗荷蕎麦。

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こちらは自家製高菜の炒めを乗せた高菜蕎麦。






その一で胡瓜の丸漬けをやりましたが
今回はその応用です。
これも簡単です。

材料は胡瓜、人参、大根、白菜などです。
これを刻みます。
向きや繊維はこの際無視して構いません。
強いて言うなら
「お好みで」      
大丈夫! 前回も書きましたが放っておくだけで勝手に出来上がってくれるんです。
よほど大きな切り方をしないかぎり少々大雑把な切り方をしても大丈夫なんです。

ただし、大根や人参の厚みは3ミリ程度にそろえてください。

これをボウルに入れ、前回のように濃い目の塩水を加えてお皿を乗せます。
上からお皿をぎゅうっと押さえて周りから野菜が見えるくらいのやや小さめのお皿がちょうど良いでしょう。
お皿の上に重石代わりになるもの
何でも結構です。
余っている食器や缶詰など重いものを袋に入れて乗せておきます。

たったこれだけです。
後は同じく昼に漬ければ夕食にはもう食べれます。
浅漬けというのは実はとても簡単な調理法なんです。

慣れれば塩水を作らなくても振り塩で出来るようになりますが、
もうひとつ塩水を使って美味しい浅漬けにトライしましょう。

「ぬか漬け」です。
臭い、面倒、手が汚れる、塩辛い
などと勝手に塀を高くしがちなジャンルでしょう?

でも、実は米食人種の日本人こそこれを食べなければいけないのです。
米ぬかはお米の周りについていたものですよね?
普段はこれを精米して白米を食べているわけです。

つまりぬか漬けを食べることで本来あったはずの栄養素を取り返そうということなんです。
それを証明するかのような事実があります。

カブ(野菜の中ではグルタミン酸を多く含む)
白カブを普通に塩漬けにするとなまじグルタミン酸があるばかりに
かえって不足感を感じてしまい昆布を欲しくなります。
それで昆布と一緒に漬けてやると実に美味しくなってくれるのですが、

これをぬか漬けにするとこの不足感を全く感じないのです。
充足感とでも言いましょうか。
この日本人にとっての満たされた旨味感こそが私たちが失ってしまったモノなのではないか
そういった感慨すら覚えます。
漬物会社はこの旨味感をこそ魔法の粉に頼らずに研究すべきでした。
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さてぬか漬けをこだわって作りたい方は其々研究していただくことにして
超簡単な方法をご紹介しておきましょう。

密封袋を用意します。
米ぬかを1/3ほど入れ、塩水を少しづつ混ぜていきます。
耳たぶくらいの硬さになったら完成。
あれば唐辛子の一本でも入れておけば充分です。

そして胡瓜を丸ごと突っ込み、空気を少しだけ残してチャックをして
冷蔵庫へしまいます。
野菜庫に収納することで過剰な醗酵をさせません。
つまり、ぬかみそ臭くならないのです。
毎日かき回さなくてもOKです。

他の野菜があったら上にのせておけば簡易重石になります。
次の日か二日後しっかりと完成しています。
ぬか漬けの浅漬けです。

水気があれば口からこぼしてやります。
胡瓜を出したら塩をひとつまみ足して口を閉め、よくもみもみしておきましょう。

これで臭い、手が汚れる、面倒と厄介なことは全てスルーです。
大根、人参、セロリ、ブロッコリー、みょうがなど簡単に作れる
簡易ヌカ床の出来上がりです。
玄米食を続けるのは大変でもぬか漬けを食べるのは簡単にできます。
ぜひトライしてみてください。

今回は塩水の方法に絞り込んで書いてみました。
何故かって?
簡単なのはもちろんです。
でもちょっと考えてみてください。
○バラ食品が出して大ヒットさせた「浅漬けの素」というものがありますよね。
(○には ア、イ、エ、ヲ のうちどれが入るでしょうか?)
あれには何が入っているのでしょうか?
家庭で作れば塩と水だけで事足りるのにって思いませんか?

で、考えてみました。
塩、水、化学調味料、そして自らを変質させないための防腐剤などの安定剤でしょうか?
売る為の不可抗力まで食べさせられる!?  
なんというブラックジョーク!
全くナンセンスです。

しかも、ホンモノを知っている人が代替として求めるという図式がある限り
ホンモノにはなり得ないという宿命を持ち
かつホンモノを知る人がいなくなればこちらもその存在価値を失ってしまうという
いわばヤドリギのようなシロモノなのです。

かつてハウス食品がチャーハンの素で暴利を稼ぎ組織基盤を拡大させたように
おそらくこの会社もさらに経営規模を拡大させるでしょう。
儲かるヒット商品を追求することを是とする「会社」ならではです。

でも私達が何もそんな事に付き合う義務などありません。
スーパーに並ぶ食品だけで生活しなさい
という罰ゲームの中で生きているわけじゃないんですよ。

自分達で美味しい野菜を探して、調理して安全に食べる
たったこれだけなんです。

トライしてみてください。
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