タンカーの外国航路でアメリカのオレンジを喜んで食べていた頃
一冊の本に出合いました。

日本に輸入されているサンキストオレンジや
米国産グレープフルーツなどがいかにひどい食品かを解説したものです。

柑橘類というのは厚い皮に覆われてはいても傷みやすいのだそうです。
そこで箱の中に一枚のペーパーが入れられてきます。
これには強力な防腐剤がたっぷりと染み込まされていて
日本に着くころにはそれが全部揮発し、柑橘に吸い込まれてしまっているのだとか。

ジフェニールだったかと記憶していますが
それは米国内では使用が禁止されているのに日本向けではOK
なのだと読み憤慨し、それから以後は一切口にしなくなりました。

結婚して家内にも厳命しましたから
可哀想にかれこれ40年家内も食べさせてもらえなかったという次第です。


随分前オレンジ輸入自由化をめぐって日本中が大騒動になったことがあります。
いわく、ミカン栽培農家が全滅してしまうんじゃないか?
という心配からでした。

しかし、日本人はここでも粘り強く品種改良に励み
いまでは清見オレンジやせとか、甘平(かんぺい)などなど
サンキストオレンジをしのぐ風味と食感をもつ柑橘を作り出したのです。

私も今までの暴君ぶりを反省してせっせと買い求めては
家内と美味しく頂いております。

柑橘と言えば
これまで国産レモンがほとんど入手できませんでしたが
これも大量に出回るようになりました。

家でも栽培したことがありますが、
今までサンキストレモンの味しか知らなかったのが
国産レモンはどうやら品種が違うと見え味と言うか風味が
異なるのですね。

やはりこちらの方が優しく、フレッシュで美味しいです。
ありがたく使わせていただいております。

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今回のカニワンタンメンではラー油とレモンの酸味が
ぶつかることで面白いバランスが生まれます。
これからも楽しめる素材です。

生産農家さん達のおかげで助かっております。
感謝。






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2017.03.22 北陸の食文化
能登半島から氷見、富山と続く長い海岸線
この豊かな海に面した地域に住まう私たちは昔から様々な
海の幸に恵まれ、先人たちの作り上げた美味に接して来ました。

スガモ
輪島から今年の新物が出来上がったと連絡が入りました。
まだ冷たい能登の海からの嬉しいプレゼントです。

ちなみに
雪解け水が入る今の季節が一番海水温度が低い時期です。
真冬は空中より海水温度が高いため
冷え切った夜間は海から湯気が立ちこめているほどです。

アゴだし
トビウオは全国に美味しいだしが取れる魚として認知されていて
様々な加工を施されています。
五島列島から仕入れたものは腹から開いて炭火でじっくりと
焼き上げて焼き干しとなっていました。

普通は丸で焼き干しか煮干しにされています。
私が作るものも丸の焼き干しです。

ところが能登半島の物は三枚におろしの煮干しになっていて
これがどういうわけかめちゃくちゃ旨いんです。
普通は焼き干しの方が濃厚な味になるはずなのですが
こればかりは受け継がれた技の力と言うしかありません。

技と言えば
私達は料理の経典にも載っていないだしの取り方をします。
浜の知恵です。

もうひとつ
北陸には昆布締めの伝統があります。

今回はカニワンタンに添えたくて菜の花を〆ました。
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ほろ苦さと昆布の旨みとで幸せな気持ちになります。

まだまだ北陸には内緒な美味が一杯あります。



今年もこの季節が来ました。
カニ解禁の頃には淡白だった味も次第に充実して来、でも何だか
4月に入るともうカニっていう気分でもない。

そんな3月ギリ下旬。
同じものを繰り返すのはつまらないので今年は焼きガニ風味での
トライです。
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今年はカニが少ないのでベニ、本ズワイ構わずかき集めて
せっせと焼き、ほぐしてご用意しました。
だけど、焼くと途端に身が採れなくなります。
歩留まりが悪くなるという奴です。

それに味が濃縮されるだろうと期待したほどには目覚ましい
効果は出ません。
そこで焼きガニとホタテとエビ、この3種をワンタンに仕立てます。

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これで風味と食感、旨みと望むものをそれぞれ組み合わせました。

カニラーメンは塩味で香味油はカニオイル。
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スモークチキンを別皿でお出しします。
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『おいおいスモークなんか乗せたらカニ風味が飛ぶんじゃ?』
とご心配には及びません。

カニオイルで作ったラー油もお付けします。
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赤い割には辛さはいつもの「小辛」です。
ご安心ください。

当店では小人でもなんとか食べられると云う辛味レベルを
「小辛」
中学生レベルなら
「中辛」
大人じゃないと無理かも というレベルを
「大辛」
と表示し、 通常は「小辛」を基本としてお出ししています。

でも辛い物好きな人はこんな中途半端な辛味じゃ逆に
ストレスなんですよね。
よーっく承知しております。

そこで激辛好きが喜ぶ軸付き焼き唐辛子を用意してあります。
これの使用法を記しましょう。

まず軸を持ちます。
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そして箸で先端からほぐして麺に加えてください。
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例によって先端が最も辛味が弱く、軸方向に行くほど
辛くなります。
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ご自分で加減して行ってください。
ただし!
唐辛子を素手でつぶすことはおやめください。
うっかり顔や目に触ると取り返しのつかないことになります。

こんな危険なものをやたらとお出し出来ませんから
ご希望の方は「唐辛子を・・。」とご遠慮なくお申し付けください。
勝手にはできませんのでご了承ください。


別皿にはその他ミツバ、国産レモン、葉ごぼうをご用意しました。

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葉ごぼうは歯ごたえをお楽しみいただけます。

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硬軟取り合わせて15日(水)よりスタートします。
期間限定 カニワンタンメン (焼きガニVr.)  900円
土日祝を除く平日のみ、  昼夜OK
麵の追加 一玉  200円
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大長谷ハンターズジビエさんのおかげで野生獣肉が
簡単に入手できるようになり念願のジビエ料理のラーメンを
作れるようになりました。

これは本当に有り難い事です。
石黒木太郎さんに感謝、深謝。

しかし、コース料理で数万円とかアラカルト(単品)で一皿
数千円などの料理ならば塊肉で提供することも可能なのですが
いかんせん価格が牛肉並となるとどうしても薄切りやひき肉と
いった使いまわしになってしまいます。

そういう事をつらつらと考えていると
どうも私達料理人は既成事実に慣れ過ぎてしまっているというか
現状をニュートラルなものとして囚われてしまっていて
大事なことを見落としてしまっていると気づきました。

フレンチや中国料理が発達したのは恐らくジビエがあったから
なのだろうと気づいたのです。

現在では飼育肉がいつでも手に入り料理人ですら
鶏を捌くことも出来なくなっています。

飼育肉はどれも同じように柔らかく程よく脂が乗り
食べやすく部位に分けられて流通していますから
料理人はいつもの手順で調理が出来ます。

でも飼育肉など無かった頃はどうだったでしょうか?
雌雄の別であったり成長の度合いであったりで
硬かったり柔らかかったりしたはずです。

獲った自分たちが食べるのならそれで結構でしょうが
位の上の方々の為に作るとなれば
それぞれに
硬い肉ならば柔らかくする方法
筋の多い部位ならばそれを除く手段
長く煮込んで旨みが抜けそうになったらそれに添えるソース

そんな工夫と知恵が求められたと思うのです。

フレンチのソースにはそんな知恵がぎっしり詰まっている
と感じるのもそこからなんです。

ジビエと言えば中国料理では机以外は食べるというお国柄。
青粂肉糸といえば今じゃ知らぬ人のいないほどメジャーに
なりました。

肉を細く切って下味をつけ、卵と粉をまぶして下ごしらえをする。

これって野生の硬い肉を食べやすくする創意工夫の賜物と
いう気がしませんか?

ジビエを始めるにあたって私はその基本に立ち返ろうと
思いました。
日本古来のジビエ、山賊鍋です。
おかげさまでご好評を頂戴いたしましたが
やはり思った通りやってみて分かる得るところの多い
メニューとなってくれました。

いずれ出番の来る
鹿肉にはおそらく中国料理の細切り肉の技が活きるでしょう。
またすっきりしたポトフのようなスープにもジビエは活用できる
はずです。

獣肉を触ることで素材に向き合う勘
(昔から包丁を持つ人間がずーっと巡らしてきた知恵)
そんなものを養いつつ励みたいと思うのです。

最後に渋谷区恵比寿でフレンチレストランを営む達人
宮代 潔氏の言をご紹介しておきます。

「旨い肉は焼くだけで旨い、 かも知れません。
しかし、それはたんにジビエを使っただけの上辺の料理でしかない
ジビエだから出来る事を追求すれば、自然と答えはクリアに
見えてくるでしょう」

と。

私も負けないで追求してまいります。

なお、
15日(水)からはカニワンタンメンの出番となります。



山の幸を片っ端から鍋に放り込む山賊鍋を
イメージしたラーメンですが何だか忘れ物をしたような気がしていました。

丸芋の隣に置いた箱にムカゴをしまっておいたのをすっかり忘れて
いたんです。

初日は乗せていませんでしたが二日目からはしっかり
乗せてさらに山賊鍋らしく仕上がってくれました。

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正しく処理されたイノシシ肉には癖や臭みなど全くありません。

先日大長谷で出会ったフレンチの料理人「猪俣さん」の言
「臭い豚肉よりよっぽど旨い肉だ・・」と
まさに正論、正鵠。

輸入物の豚肉はどうかすると煮ても煮ても生煮えのような
異臭がすることがあります。
これは飼料がよろしくないせいです。

イノシシもよろしくない餌を食べたものは匂いが悪くなります。
悪い匂いのする肉はもう既に美味しくない肉なのです。

その点、里から離れた深山で獲るイノシシは自然なものしか
食べていません。
「大長谷ハンターズジビエ」がその地の利を最大に
活用していると言えるでしょう。

また、
鹿の繁殖が山の衰退を招くという話jは前回に記しましたが
その駆除には自治体の援助が欠かせません。
岐阜県では鹿の害を重くとらえているらしく
一頭当たり数万円という補助金を出しているそうです。

わが富山県では数千円という有様です。

日本は肉食を忌み嫌った時代があったため
獣肉の扱いの文化が失せて欠落していて
肉と言えば鍋料理が基本になってしまっているそうです。

タヌキ鍋 と誰でも聞いたことがおありでしょう。
ところがニホンジカの肉は鍋にしてもあまり旨くないと
西日本などでは駆除した鹿を埋めていたというのです。

補助金が出ない、積極的に食べたくないとなれば
鹿が繁殖する一方です。
それでなくても猟には経費がかさみ重い獲物を運ぶ
人間も高齢化しているのに益々ハンターのなり手が居なくなります。

山をイノシシや鹿の物にしてはいけません。

じゃんじゃん駆除して美味しく食べて環境保全にもつなげましょう。

私達料理人もその役割の一端を担うべきと思っております。